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レビュー

この本は「自分のため」に書かれた――と女性なら誰もが感じる一冊!『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』

発売4ヶ月で7刷16万部と、ベストセラー邁進中の西原理恵子著『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』。既婚・未婚、子どもの有無にかかわらず、なぜここまで幅広い層の女子からの支持を得ているのか? 日々の雑事に追われて、目の前のいちばん大事なことを見逃してしまう前にこの本に巡り逢えた人は幸せ。そう言い切る子育て中のママライターが、本書の刺さるツボを解析!

 最初にタイトルを見たとき、真っ先に思ったのは「ぜったい長女に読ませたい」でした。うちの長女はまもなく18歳の高校3年生で、まさに「巣立ち」が現実味を帯びてくるお年頃。ですが、西原家の娘さんのように、自分の道を見つけて、大海原に漕ぎ出す帆船になる気配はまるでありません。いいとこお池のスワンボート。本人いわく「自分は小学3年生くらいまで意識がなかった。たぶんキノコか何かで、ヒトに進化したのはつい最近だから他人より出遅れているのだ」とのこと。そうだったのか……。
 とにかく娘に渡す前に、まずは自分で読んでみました。読んだらすぐに「はい、役に立つ本あげる」と、長女に渡すつもりだったのに――。

人生は我慢比べじゃないからね。

真面目な女の人ほど「あたしさえ辛抱すれば」と思いがちだから、気をつけて。

子どもの前で本気で夫の悪口を言うようなら、それは別れましょう。

16歳のお嬢さんへ向けた言葉なのに、46歳の心もグサグサと刺されるがまま。ほとんど瀕死の重傷です。

 あらすじをものすごく大雑把にいうと、次の2つの指南です。ひとつは「転んだときの立ち上がり方」、もうひとつは「夢のかなえ方」。
 その2つが、反抗期を中心とした西原家の親子の関わりと、西原先生自身の辛かったり痛かったり壮絶だったり、もしくはうまいこといったエピソードを交えつつ語られていきます。
 そして西原先生は

あなたの人生は、あなたが幸せになるためにある。

というシンプルな核心を軸に、だめな男からの逃げ方や、我慢料ではない賃金の得方、夢の見つけ方など、出し惜しみなく教えてくれます。
 言いっぷりの歯切れは最高、「……だと思います」「……ですよね?」みたいなボカシや逃げは一切なし。
 でもなぜか、西原先生が菩薩の微笑をたたえながら、言い換えれば不敵にニヤニヤしながら話す姿が頭に浮かびます。それはきっと、西原先生の人としての懐の深さと、親としての愛情深さから発せられるソリッドな言葉だから。
 身もふたもないけど、愛はたっぷりあるから心に響くのです。

 しかし、それはたまたまわたしのツボが当たったからで、他の人には「ふーん」くらいでしょうし、まったくピンとこない人だっているかもしれません。
 うちの長女は元キノコで、わたしはと言うと恥ずかしながら過干渉気味の母親、現在10歳の次女は、数年後に荒れ狂う予感満点の子です。子どもの反抗の強弱はいろいろですし、親子の距離感もいろいろですから、西原家の母娘ガチバトルの様子や、先生の肝の据わった見守り方が、どの親子にもぴったり参考になるとは限りません。

 とはいえ、子どもの反抗期を持て余すママにとっては、共感したり、弱音を分かち合ったり、一緒にプンプンしたりして胸がすく言葉がいっぱい並んでいると断言できます。
 わたしが激しく共感して、おそらく多くの子育て経験者が、首ももげんばかりに頷くだろうくだりが、このへんです。

ちっちゃかったふたりが「かーしゃん、抱っこしてー」「抱っこしてー」って、くっついてきたあの時、もっと、ぎゅーっと、何度でも、抱っこしてあげたらよかった。

16年なんて、本当にあっという間。

 本当に。仮に今、無理やり長女を抱きしめても、あの頃のような甘くて臭くてとろけるような匂いはしませんからね。書いているだけで恋しくて泣きそうです。

家なんて、もっと汚くてもよかった。洗濯物も、ためちゃえばよかった。家事なんて、全部あとまわしにしたらよかった。もったいないことしちゃった。だって、あんな時間はもう二度とない。

 そう、日常はあわただしく、子育ては大仕事、他人はあれこれうるさいし、目の前のいちばん大事なことはスルリと逃げていきがちなのです。
まだお子さんが小さい人も、これから子育てをするかも、しないかもしれない人も。とにかく、間に合ううちにこの言葉に巡り逢えた人は幸運だと思います。 
 かといって、間に合わなかったママたち残念! とは感じさせないのが、この本の不思議なところ。「抱っこしてー」と、くっついてきたあの時をじんわり思い出したら、残念どころか逆に力が湧きました。家事もがんばっていた……いや、少なくとも、がんばろうとはしていた自分も思い出せたし、何より、ぽよぽよだった赤ちゃんが、生意気な口をきけるまでに成長したんだもの。

 子育ては、不安や悩みとワンセット。わたしは、産んだ直後から今までずっと、「これでいいのか」いちいち不安でした。自分以外のママたちは、ちゃんとしていて、上手に育てている気がして仕方がない。なんとかしようと、ためになりそうな育児本や記事を読むほど、やり残しだらけのようでいまだに焦りを感じるのですよ。でも、この本を読んで、やっと言ってもらえたような気がします。「これでいいのだ!」

あなたが母親で、それができる余裕があるなら、娘が嫁ぐ時に、いざという時の虎の子を持たせてあげるといい。

 これだったら、わたしでもまだ間に合います。それに、できることがもうひとつ。それは、この本を娘に差し出すこと。

 夢を見つけたり、かなえたり、その夢でお金を稼ぐためにはどうしたらいいか。
 その指南は、ひときわ熱く具体的。

人生にも抜け道、けもの道があるんですよ。地図には載ってない道が。

と、時に進むべき道を曲げることが必要と説き、

なりたい人と自分を比べなさい。そうすれば、何が足りないかわかるでしょ、ってね。

と、世界にひとつだけの花に向かって言い放ち、

何かを本気でやりたいなら横入り上等。

と、腹のくくり方を教えてくれます。尋常ならざる説得力。

 思うに、これから人生が始まる10代20代の女の子にとっては間違いなくよく効く指南で、うちの娘たちにもぜひ参考にしてもらいたい。そして、ある程度すごろくのコマが進み、でもまだ先も長い30、40、50代の“女の子”にとっては、ドキッとしたり、焦ったり、人によってはいてもたってもいられなくなるでしょう。夢をかなえる生き方を本気でしてきたか、振り返らざるを得ないので。でも、この本に出合わなければ、振り返るきっかけすらなかった。大きなチャンスをもらったような気分です。
 さて、慎みや遠慮が美徳だった時代の女の子たちは、どんな受け取り方をするのでしょう。今度うちのばあちゃんに聞いてみよ。

名曲の歌詞は、だれもが自分のことを歌っていると感じるものだそうですが、
この本はまさに、女の子ならだれもが自分へ向けてのメッセージがある、と
感じてしまう一冊。新品の女の子、中古(ちゅうぶる)の女の子、ビンテージな
女の子、みんな。兼業主婦、専業主婦、既婚非婚、子がいるいないにかかわらず。

 この本は、西原先生にとっては娘さんへの長いラブレター。そして、心に刺さる一文や読後感は人によって全然ちがうと思うけど、だれもが自分のために読める本。
 だからわたしはわたしのために読む。娘よ、きみはきみのために読んでほしい。

 個人的には、そろそろ巣立ちを迎える女の子を持つ、30~40代の“女の子”にとっていちばんお得な気がします。一冊で二度おいしい。自分が読んでも子どもが読んでも本当に役に立つ本など、なかなかあるものじゃないですから。


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