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試し読み

<『心霊探偵八雲11 魂の代償』文庫発売記念>幽霊を見ることができる少女の証言とは。『心霊探偵八雲12 魂の深淵』試し読み#10

『心霊探偵八雲11 魂の代償』文庫発売記念!!
『心霊探偵八雲12 魂の深淵』全11回大ボリューム試し読み

最終巻『心霊探偵八雲12 魂の深淵』文庫発売日はいつ? 待ちきれないあなたへ!
『心霊探偵八雲11 魂の代償』で起きた事件はまだ終わっていない――。

累計700万部突破の怪物シリーズ「心霊探偵八雲」。『心霊探偵八雲11 魂の代償』(角川文庫)の発売を記念し、続きとなる『心霊探偵八雲12 魂の深淵』の増量試し読み版を11日間連続にて配信! 
一足先に続きを味わい、12巻を楽しみにお待ちください。

「心霊探偵八雲」シリーズ最終巻『心霊探偵八雲12 魂の深淵』2022年5月角川文庫より発売予定

角川文庫にて、本編の完結である『心霊探偵八雲12 魂の深淵』の刊行が、2022年5月に迫ります。
『心霊探偵八雲12 魂の深淵』と『心霊探偵八雲 COMPLETE FILES』、2022年5月に文庫版として発売です!

『心霊探偵八雲12 魂の深淵』試し読み #10

     八

 後藤が、チェーン展開しているファミリーレストランに到着すると、すでに英心の姿があった。
 窓際の席で、呑気にストロベリーパフェを食っている。
 法衣の爺がニコニコしながら、ファミリーレストランでパフェを食っている姿は、なんとも気色が悪い。
「遅い」
 英心は、後藤の姿を認めるなり、吐き捨てるように言った。
 恰幅がよく、人相も威圧感がある。法衣を纏っているので、辛うじて僧侶だと分かるが、そうでなければ、その筋の人間と勘違いされるだろう。
「急に呼び出しておいて、遅いもクソもあるか」
 後藤は舌打ち混じりに答えた。
 英心の電話を切ったあと、病院に戻り、敦子に手短に事情を伝え、大急ぎで駆けつけたのだ。遅いと文句を言われる筋合いはない。
「口の減らん男だな。いったい誰のお陰で……」
「もういい。分かった。おれが悪かったよ」
 後藤は、英心の小言を遮り、向かいの席に腰を下ろした。
 言われることは、だいたい分かっている。後藤たち一家は、英心の口利きで、寺の庫裏に住まわせてもらっている。そのことを、ねちねちと並べ立てるに違いない。
 図体の割に、器の小さい男だと思うが、そんなことを言おうものなら、それこそ追い出されかねない。
「そんなことより、七瀬美雪と関係があるってのは、どういうことだ?」
 後藤が本題を切り出すと、英心は、ふむと頷いてから口を開く。
「わしの檀家の娘さんの一家が、中古の一軒家を購入し、先週、引っ越しをしたんだ。築年数は古いが、リフォームされていて、駅近というのもあり、なかなか掘り出し物の物件でな……」
「そんな細かい話はどうでもいい。七瀬美雪に関係することだって言うから、わざわざ足を運んだんだ。要点だけ話せ」
 後藤は、湧き上がる苛立ちとともに口にした。
「そんなだから、お前さんは、いつまで経っても成長せんのだ」
 英心は、これ見よがしにため息を吐く。
「あん?」
「話は、ちゃんと最後まで聞くもんだ。細かい情報の中に、意外とヒントがあったりする。そうしたものを見過ごすから……」
「ああ。分かった。分かった。おれが悪かったよ」
 後藤は、うんざりしつつも再び詫びを入れた。
 口が達者な英心に余計なことを言った自分が馬鹿だった。これ以上、話が長くなったのでは堪ったものではない。
「分かればいい」
「それで、その引っ越した家で、心霊現象が起きているってことか?」
「そういうことだ。その一家には、愛菜ちゃんという七歳の娘がいるんだが、この愛菜ちゃんが、幽霊を見るようになったらしい」
 七歳といえば、奈緒と同じ歳だ。
「他の家族は見てないのか?」
「うむ。愛菜ちゃんだけだ」
「だったら、見間違いじゃねぇのか? 子どものときって、そういうことがよくあるだろ」
 子どもが幽霊やお化けを見たと言い出すのは、別に珍しいことじゃない。いちいち真に受けていたらキリがない。
「わしも、最初はそう思った。だが、詳しく話を聞いていくと、どうも、単純な見間違いとは違うようだ」
「どう違うんだ?」
「引っ越してから、愛菜ちゃんは誰もいない部屋の隅を、じっと見つめるようになったらしい。愛菜ちゃんにどうしたのか訊ねると、そこに知らない人がいる──と指差したりするようになったそうだ」
「それこそ、見間違いじゃねぇのか?」
「懲りない男だな。最後まで、話を聞けと言っておるだろ」
 英心に一喝され、後藤は口を噤み先を促した。指摘の通り、こうして茶々を入れていたら、いつまで経っても話が進まない。
 呆れたようにため息を吐いてから、英心は話を再開する。
「そのうち、愛菜ちゃんは独り言を言うようになったそうだ。だが、よくよく聞いてみると、誰かと会話しているようにも聞こえる。さすがに、気味が悪いと感じ、愛菜ちゃんを、その部屋に入れないようにしていたのだが、母親が目を離すと、すぐにその部屋に行ってしまう」
 英心が、目を細めて一瞬だけ後藤を見た。
 意識してかどうかは分からないが、英心はこういう芝居がかった仕草をすることが多々ある。
「それで?」
「母親は、部屋の中には誰もいないと言い聞かせたんだが、愛菜ちゃんは納得しない。それどころか、幽霊との会話の内容を話してくるようになったらしい」
「それは……」
 見間違いであったとしても、厄介な事象だ。
「詳しいことは分からんが、愛菜ちゃんが語る話の中に、頻繁にある人物の名前が出てくるらしい──」
 英心は、そこまでで一旦言葉を切った。
 おそらく、意図的にやっているのだろう。もったいをつけるやり方が癪に障るが、先が気になるのは事実だ。
「誰だ?」
 後藤が促すと、英心がうむっと一つ頷いた。
「七瀬美雪」
 ここで、七瀬美雪が出てくるのか──。
「同姓同名なだけだろ」
「わしも、最初はそう思った。だが、愛菜ちゃんは、ただの偶然とは思えないことを言っている」
「何だ?」
「美雪ちゃんは、パパとママを殺したんだって──と言ったそうじゃ。偶然の一致とは思えんだろ」
 英心が、鋭い眼光を後藤に向ける。
 言葉が返せなかった。七瀬美雪は、自らの家族を殺害している。名前だけでなく、その事実を口にしたという事実は、驚愕に値する。
 だが──。
「ニュースとかで見た情報を、記憶していて、それを口にしたんじゃねぇのか?」
 後藤は、考え得る可能性を口にした。
「もちろん、そのことも考えた。だが、どうも引っかかるんじゃ」
「何が?」
「仮にニュースなどで得た情報を口にしていたとして、どうして急にそんなことを言う必要があるんだ?」
「し、知らん」
 突き放すように言ってみたが、後藤の中で疑念が広がっていく。
 英心が指摘した通り、何の理由もなく、七歳の少女が、七瀬美雪の話を持ち出してくることが異様だ。
 単なる偶然として片付けるには、あまりに不可解である気がする。
「話は、それだけではないんじゃ」
 英心が上目遣いに後藤を見る。
「何だ?」
「彼女の母親である涼子さんが、気になって問題の部屋を調べたらしいんだが、そのとき、見覚えのない写真を見つけたそうだ」
「どんな写真だ?」
「口で説明するより、見てもらった方が早い。これだ──」
 英心がテーブルの上を滑らせるようにして、写真を後藤に差し出した。
 手に取って写真に目を向ける。
 ピントがボケている上に、写真自体が汚れていたが、〈入学式〉という立て看板の横で、微笑みを浮かべている制服姿の少女が写っていた。
 入学記念に撮影されたものであろうことは、何となく分かるが、どうして英心がこの写真を気にしているのかが分からない。
「この写真が何なんだ?」
「似ていると思わんか? お前さんたちが捜している女に──」
 英心が言った。
 その言葉に衝撃を受けつつ、改めて写真を凝視する。ピンボケと汚れとで、似ているとか、似ていないの前に、顔自体が鮮明に写っていない。
 愛菜という少女の口から、七瀬美雪の名前が出たことで、その情報に引っ張られているような気がする。
 ただ、愛菜の証言だけ取ってみても、無視できない状況であるのは確かだ。
「この件は、八雲にも話したのか?」
 後藤は英心を見返した。
 正直、現段階では何とも言えない。幽霊が絡んでいるのであれば、それこそ八雲の協力が不可欠だ。
「もちろんだとも」
「八雲は、何と言っていた?」
「何も。いくらかけても電話に出ないからな。仕方なく、この写真のデータを添付して、メールを送ってみたが、音沙汰無しだ」
 英心がおどけるように肩を竦めた。
「何だ。結局、話してねぇんじゃねぇか」
 後藤は落胆とともに口にした。
 英心なら或いは──と思いはしたが、期待外れだったようだ。メールなど黙殺している可能性が高い。
「まあ、厳密にはそうなるな。ただ、このまま放置する手はないと思うぞ」
 英心の提案はもっともだ。
 はっきりしないことは多いが、だからこそ、調べてみる価値はあるかもしれない。事態が動けば、八雲を引き摺り出すこともできるかもしれない。
「分かった。取り敢えず行ってみよう」

つづく
(本試し読みは『心霊探偵八雲12 魂の深淵』(四六判単行本)を底本にしました)

10/21発売!『心霊探偵八雲11 魂の代償』(角川文庫)



心霊探偵八雲11 魂の代償
著者 神永 学
定価: 880円(本体800円+税)
発売日:2021年10月21日

宿敵・七瀬美雪に晴香が拉致!?  大人気シリーズ、物語は最高潮へ!
八雲の宿敵・七瀬美雪の手により、晴香が拉致されてしまう。晴香の居場所を探す鍵は、四つの心霊現象のどこかに隠されているというのだが……タイムリミットが迫る中、八雲は重大な決断を迫られる。
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ついに完結!!『心霊探偵八雲12 魂の深淵』(角川書店)



心霊探偵八雲12 魂の深淵
著者 神永 学 イラスト 加藤 アカツキ
定価: 1,540円(本体1,400円+税)
発売日:2020年06月25日

大人気「心霊探偵八雲」シリーズ、ついに完結!!
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「心霊探偵八雲」あらすじ、シリーズ全巻はこちら!
【神永学シリーズ特設サイト】



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