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試し読み

<『心霊探偵八雲11 魂の代償』文庫発売記念>真琴に見せられた1枚の心霊写真!? 『心霊探偵八雲12 魂の深淵』試し読み#9

『心霊探偵八雲11 魂の代償』文庫発売記念!!
『心霊探偵八雲12 魂の深淵』全11回大ボリューム試し読み

最終巻『心霊探偵八雲12 魂の深淵』文庫発売日はいつ? 待ちきれないあなたへ!
『心霊探偵八雲11 魂の代償』で起きた事件はまだ終わっていない――。

累計700万部突破の怪物シリーズ「心霊探偵八雲」。『心霊探偵八雲11 魂の代償』(角川文庫)の発売を記念し、続きとなる『心霊探偵八雲12 魂の深淵』の増量試し読み版を11日間連続にて配信! 
一足先に続きを味わい、12巻を楽しみにお待ちください。

「心霊探偵八雲」シリーズ最終巻『心霊探偵八雲12 魂の深淵』2022年5月角川文庫より発売予定

角川文庫にて、本編の完結である『心霊探偵八雲12 魂の深淵』の刊行が、2022年5月に迫ります。
『心霊探偵八雲12 魂の深淵』と『心霊探偵八雲 COMPLETE FILES』、2022年5月に文庫版として発売です!

『心霊探偵八雲12 魂の深淵』試し読み #9

     七

「すみません。お忙しいところ、お時間を作って頂いて──」
 石井が指定された喫茶店に足を運ぶと、先に待っていた真琴が丁寧に頭を下げてきた。
 その表情は、いつになく硬い。
 やはり、見て欲しいものとは、事件に関わる重要な何かなのだろう。石井は、逸る気持ちを抑えつつ、店員に珈琲を注文してから、向かいの席に腰掛けた。
「あの……それで、見て欲しいものというのは?」
 石井が問うと、真琴は「はい」と応じつつ、タブレット端末をテーブルの上に置き、一枚の写真を表示させた。
 それは、コンクリートに囲まれた廃墟のような場所で撮影されたもので、白いワンピースを着た少女が、カメラ目線で笑顔を向けていた。
 まるで、アイドルの写真集のようだ。
「この人は?」
 石井は、想像していたものと、大きくかけ離れていたことに戸惑いつつ訊ねた。
「彼女は倉持香菜さん。アイドルグループのメンバーだったんですけど、最近卒業して、ソロでの活動を始めたそうです」
「そうですか……」
 聞いたことのない名前だ。
「問題は、次の写真なんです」
 真琴がタブレット端末をスワイプすると、ポーズの違う別の写真が出てきた。
「この写真が、どうかしたのですか?」
 連続して撮影された写真なのだろう。香菜の表情とポーズは異なるが、構図は全く一緒だった。
「足許を見て下さい」
 真琴がタップ操作をして、写真の下の部分を拡大する。
「ひっ!」
 仰け反りながら声を上げる。
 ちょうど、店員が珈琲を運んできたタイミングで、危うく大惨事になるところだった。
 怪訝な表情を浮かべつつも、店員が珈琲をテーブルに置いて立ち去って行く。
「これは……」
 石井は、改めて口にした。
 香菜の足首のところに、さっきの写真にはなかったものが写っている。
 それは、明らかに人の手だった。足許に出来た影から、ぬうっと人の手が伸び、香菜の足首を掴んでいるのだ。
「見ての通り心霊写真だと思われます。次の写真は、もっとはっきり写っています」
 説明をしながら、真琴がスワイプする。
 ──ぎゃっ!
 両手で口を押さえ、飛び出しそうになる悲鳴を何とか耐えた。
 今度は、拡大されるまでもなく分かった。
 写っているのは手だけではない。
 床に這いつくばるようにして、恨めしそうにこちらに顔を向けている人の姿があった。
 煙のようにぼんやりとしていることから、生きた人間でないことは確かだ。性別や年齢も定かではない。
 香菜が弾けるような笑顔を浮かべている分、怖さが増しているような気がする。
「他にも、たくさん写っているんです」
 真琴がタブレットのモニターをスワイプする度に、新しい写真がモニターに現れる。真ん中には、ポーズ違いの香菜が写っていて、その足許には、あの幽霊の姿がある。
 これだけ複数枚に亘って、心霊写真が撮影されているのは、かなり珍しいことかもしれない。
 怖ろしい心霊写真ではあるが、同時に、分からないこともある。なぜ、真琴がこの写真を見せたのか──だ。
 もちろん、これまで心霊現象の相談を持ち込まれたことは何度もある。だが、今このタイミングでというのが引っかかる。
 それに、見たところ、心霊写真ではあるが、ただそれだけだ。実害が出ていないのであれば、放っておいても構わないはずだ。
「この香菜さんという女性は、写真撮影後に憑依されたりしているんでしょうか?」
 石井が問うと、真琴は首を左右に振った。
「そういうことは、起きていないそうです。ただ、心霊写真が撮れたというだけです」
「だとしたら……」
「実は、本当に見て欲しいのは、この写真ではないんです」
「え?」
 驚くのと同時に、とてつもなく嫌な予感が、みるみる広がっていく。
「他にも写真があるということですか?」
「はい」
「いったい、どんな写真なんですか?」
「説明するより、見てもらった方がいいですね」
 真琴は、そう言いながらタブレットをスワイプする。
 新たな写真が表示される。これまでの写真とは違い、写真の中に香菜の姿はない。構図は同じなので、テストで撮影されたものだろう。
 下の方に視線を移したが、さっきの幽霊の姿も確認できない。
 ──この写真が、どうしたというのだろう?
 答えを求めて真琴に目を向ける。
 真琴は、心得たとばかりに、写真の中央部分をタップ操作して拡大した。
 これまでの写真では、香菜の姿に隠れていたが、その場所には四角い窓があって、その向こうに一人の女性が立っていた。
 ──スタッフの誰かだろうか?
 何にしても、どうして真琴がこの写真を見せたのか、その意図が分からない。
「この人物をよく見て下さい」
 石井の困惑を察したらしい真琴が、さらに写真を拡大しつつ、窓の外にいる人物を指差す。
 相当に画素数の多い写真データらしく、拡大しても、鮮明に人物の姿を捉えることができている。
 モニターを覗き込んだ石井は、あることに気付き、息を呑んだ。血の気が引き、気が遠くなる。
「こ、これは……」
 声が上擦ってしまった。
「はい。おそらく、ここに写っているのは、七瀬美雪ではないかと──」
 真琴が決定的なひと言を放った。
「ど、どうして彼女が、こんなところに……」
 石井は絞り出すように言う。
「それは分かりません。ただ、この写真が撮影されたのは、一週間ほど前だそうです。正確には、五日前。晴香ちゃんのあの事件の二日後ということになります」
「彼女は、この写真が撮影された場所に、潜伏している可能性が高い──」
 石井が口に出すと、真琴は意外にも首を振って否定した。
「それはないと思います」
「で、でも写真に……」
「五日前、この場所にいたのは確かです。でも、用心深い彼女のことです。写真が撮影されたことも分かっているでしょうから、すでに別の場所に移っていると思います」
「そうかもしれませんね」
 真琴の言う通りだ。
 七瀬美雪が、呑気に同じ場所に居続けるはずがない。
「ただ、彼女がこの場所にいたというのは、紛れもない事実です」
「確かに……」
「この場所で起きた心霊現象を解明することが、七瀬美雪の居場所を掴む為の足がかりになるのではないでしょうか?」
 真琴の推理は、的を射ていると思う。
 この写真は、完全に手詰まりになっていた捜査に差した一縷の光だ。
「しかし、私たちだけで、心霊現象を解明できるでしょうか?」
 そこが問題だった。
 残念ながら、自分たちだけで、心霊現象を解明できるとは到底思えない。
「だからこそ、彼に協力を仰ぐんです」
 真琴が言う彼とは、八雲のことだろう。
「協力してくれるでしょうか? 未だに連絡が取れない状態ですし……」
「彼も、七瀬美雪の行方を追っているはずです。彼女の居場所が分かるのですから、必ず協力してくれます」
 真琴が力強く言った。
 石井は「そうですね」と頷いて答えたものの、心の中にもやもやとしたものが残った。
 本当に、八雲は七瀬美雪を捜しているのだろうか? あのとき、病院で見た八雲の背中は、これまでの彼とは明らかに異なるものだった。
 もしかしたら、八雲はもう──。

つづく
(本試し読みは『心霊探偵八雲12 魂の深淵』(四六判単行本)を底本にしました)

10/21発売!『心霊探偵八雲11 魂の代償』(角川文庫)



心霊探偵八雲11 魂の代償
著者 神永 学
定価: 880円(本体800円+税)
発売日:2021年10月21日

宿敵・七瀬美雪に晴香が拉致!?  大人気シリーズ、物語は最高潮へ!
八雲の宿敵・七瀬美雪の手により、晴香が拉致されてしまう。晴香の居場所を探す鍵は、四つの心霊現象のどこかに隠されているというのだが……タイムリミットが迫る中、八雲は重大な決断を迫られる。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322106000375/
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ついに完結!!『心霊探偵八雲12 魂の深淵』(角川書店)



心霊探偵八雲12 魂の深淵
著者 神永 学 イラスト 加藤 アカツキ
定価: 1,540円(本体1,400円+税)
発売日:2020年06月25日

大人気「心霊探偵八雲」シリーズ、ついに完結!!
シリーズ累計700万部突破、16年間に渡って読者に愛されてきた「心霊探偵八雲」。そのフィナーレを飾る、待望の完結作がついに発売!!堂々たるラストを見逃すな!!
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「心霊探偵八雲」あらすじ、シリーズ全巻はこちら!
【神永学シリーズ特設サイト】



「心霊探偵八雲」シリーズ詳細https://promo.kadokawa.co.jp/kaminagamanabu/yakumo/


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