『エヴァンゲリオン』など大ヒットアニメで活躍!大人気声優・緒方恵美初の自伝エッセイ
『新世紀エヴァンゲリオン』碇シンジ、『幽☆遊☆白書』蔵馬、『美少女戦士セーラームーン』天王はるか/セーラーウラヌス、『カードキャプターさくら』月城雪兎/ユエ、『遊☆戯☆王』武藤遊戯、『ダンガンロンパ』苗木誠/狛枝凪斗、『地縛少年花子くん』花子くん/つかさ、etc.
数々の人気作/役を演じてきた大人気声優・緒方恵美さん。
初の自伝エッセイ『再生(仮)』(さいせい かっこかり)が2021年4月28日、発売となります。
本書で初めて明かされるエピソードもたっぷり。
発売に先駆けて、試し読みを公開いたします。
シンガーとしても活躍する緒方さん。4日目の試し読みは、楽曲「再生 -rebuild-」の誕生について。“エールロック”を紡ぎだす物語。
『再生(仮)』書誌情報はこちら。予約はお早めに!
https://www.kadokawa.co.jp/product/321903000423/
緒方恵美『再生(仮)』試し読み#4
(「第4章 絶望からの『再生』」より)
その後も、なぜか、いろんなオファーが舞い込み始めました。今までそんなことはなかったのに、音楽活動をやめると言ったとたん、別の形でオファーが来るようになったのです。ライブハウスさんから「ライブをやってくれませんか」とか、友人のミュージシャンから「俺のライブにゲストで出てくれませんか」とか。気軽なノリのオファーが、いくつも。「対バンしてくれない?」という声に、バンドは解散したからと伝えても、「その日のために集めればいいじゃん」とか、「俺が緒方さんのキーボードもやるよ」と言ってくれる。
バンド小僧みたいな活動をしていたことで、ミュージシャンとのやりとりが密になり、気づいたら、音楽関係の知り合いが、私の周りにはいつの間にか、とても増えていたのでした。
◆奇跡の楽曲、「再生 -rebuild-」。
そんな中のひとつ、代官山の「晴れたら空に豆まいて」さんからのお誘いで、カバーライブをやることにしました。今、洋楽カバーライブとして定着している「Mʼs BAR」の原型です。お誘いいただいたのは嬉しいけれど、オリジナルの楽曲をやる気持ちにはまだなれなくて、それでカバーライブ。
メンバーをどうしよう……と思っていた時、そういえば、と思い出しました。とあるパーティーで知り合った岩瀬聡志君。その時はなぜか司会者だったけど(笑)、本当はキーボーディストらしい。
「今、私にはパーマネントなメンバーがいるけど、彼らに何かあったらよろしくね!(笑)」
「ぜひぜひー!」
その時はそんな軽口を叩いていたけれど、今がその「何かあったとき」!(笑) 連絡したらホントに来てくれて! ありがとういわぴょん! あいしてる!(笑) ベーシストはチョコこと、君和田典君。ずっと一緒にやってきて、この春の間もずっと心配してくれていた、心優しい快男児。
さらにその年の冬、テレビ朝日さんのイベントスペースumuで開催したカバーライブに、岩瀬君がギタリストの目木とーるさんを、君和田君がドラマーの青山英樹君を連れてきてくれて、意気投合。
「俺らいつでも支えます」「続けたほうがいい。緒方さんは、音楽を」
グッと込み上げてきて……決めたのです。
もう一度やってみようと。
私はその頃には一旦、ランティスも離れていました。だからこれからやれる保証は何もない。でもせっかくもう一度と思ったのだから、「このメンバーで何か1曲作ってみよう」ということになり、バンドマスターの岩瀬君が曲を、そして私が、自分自身の再生の1曲という想いを込めて詞を書き、できました。
「再生 -rebuild-」。
翌年、2010年3月のライブでその曲を初披露。その後に記念レコーディング。その、3月終わり頃。ひとつのゲーム作品のオファーがありました。
ゲーム『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』主人公・苗木誠役。
いただいたプロットがめちゃくちゃ面白くて、朝までかかって一気読み。そこから収録に臨んだので、本当に楽しく、テンションの高い仕事ができ、何日間かの収録が終わる頃には、スタッフの皆様ともかなり仲良くなっていました。その流れの中で、プロデューサーの寺澤善徳さんから聞かれたのです。
「緒方さん、音楽やられてるんですよね。デモテープとかお持ちじゃないですか?」
ちょうど先月作ったものが、と、「再生 -rebuild-」ともうひとつ、2曲お渡ししたんです。するとメインスタッフの皆さんが『ダンガンロンパ』にぴったりだと言ってくださって! なんと「再生 -rebuild-」が、正式にゲームのエンディング曲に決定したんです……!
このような形でタイアップが決まるのは、異例中の異例。
その時の私には、伝染していたのかもしれません。苗木誠の「超高校級の幸運」が。
◆「エールロック」─―背中を押す、音楽を。
『ダンガンロンパ』はその年、2010年の秋に発売。「再生 -rebuild-」も配信オンリーでしたが、無事にランティスからリリースされることになりました。
その翌年の2011年3月。東日本大震災が起きました。大変な状況の中、ひたすら復興を願う日々。そんな中、被災地に住むファンの人たちから続々と、メッセージが届くようになりました。
「『再生 -rebuild-』が励みになっています」
「自分たちももう一度再生したい」
「この曲を聴いて毎日頑張っています」
「言霊の力が強い」──よく、そう言われてきました。
演技、歌、トーク。どれでも言葉が強くて、影響されてしまうのだと。
そこで初めて思い出したのです。00年以降、音楽にまつわる不思議なことが、身の回りにたびたび起こっていたこと。切ないバラードの曲が来て、失恋の歌詞を書こうと思うと、現実になる。ハッピーな気持ちを綴ろうとすると、とてもハッピーなお知らせが届く──
何度も起こる不思議経験。芝居でもよく届く、緒方さんの演技は、役の気持ちにシンクロしてしまうという声。そして今、自分を再生したいという願いで作ったこの曲に、励まされたという人たちがいる。
もしも──
もしもそれが、本当だったとしたら。
これからは、ポジティブな言葉だけを綴ればいい。誰かを応援する曲を書けばいい。前に進んでいく歌を、誰かの背中をそっと押せる歌だけを。
ランティスに出向き、そんな歌だけを集めたエールアルバムを作ってもいいですかと聞いたら、井上さんはやりましょうと言ってくださって。そして、多忙すぎる井上さんに代わって、新しい若いプロデューサーについてみたいという進言にも、快く応じてくださって。
それが2012年1月にリリースされたアルバム『Rebuild』でした。
「エールロック」はじまりの1枚、でした。
◆「生かされて」きた。
「生かされて」きたんだなあと思います。
特に00年代。度重なるダイレクトスパーキン!(笑)の中、必死で進んでいったら、光が見えた。光が見えたのは闇のおかげ。そう思ったら、本当に、出会えたすべての人に、試練に、感謝です。
2010年を境にして、いろいろな状況がフッと動きました。音楽で再スタートできたこと、仲間ができたことは、声優の仕事にもさまざまな良い作用があったと思いますし、そちらもここを境にして、変わってきた。『ダンガンロンパ』に出会え、『Angel Beats!』に参加でき。そういえば音響監督の飯田里樹さんに紹介され、岸誠二監督に出会えたのも、その年でした。
30代の頃。私はくすぶっていました。
その頃私の近くにいた、キラキラ、素敵だなあと思う40代の方は、決まってこう言ったのです。
「もう少しの我慢だ。40歳になったら、仕事は急に楽しくなる。がんばれ。それまで!」
なるほど、とうなずきながら、心の中ではずっと否定してきました。だって女の俳優なんて、若いうちが花。歳を取ったら、呼ばれなくなっていく。バリキャリのOLさんだったり、旨いと評判の寿司屋の大将だったり、みんなさまざまでしたが、みなさんのような仕事の方は、そうなんだろうと思う。でも私の仕事に限っては、そんなふうになることはない――と。
だけど楽しかった。幸せだった。
40歳を過ぎたあたりから、自由になりました。ローンはまだあったけど(笑)、仲間と呼べる人たちが増えて、すごく楽しくなりました。自分が辛いときであっても、どこからか助けてくれる人が……その場にはいなくても、必ずいる。自分が頑張って、負けないで、誠実に立ち向かってさえいれば。そう思えるようになりました。
ギリギリまで頑張ろう。ダメになったら「助けて」と叫ぼう。
そう思っただけで、心が軽くなった。
生きていくのは大変。でも生きていたら、生きてて良かったと思うことが必ずある。
どんな絶望の先にも、希望はある。
それをそっと伝えたい。触れてくれる人たちに。
そんな、目標ができました。
(この前後のパートは、4月28日発売の『再生(仮)』書籍でお楽しみください)
作品情報 『再生(仮)』緒方恵美
再生(仮)
著者 緒方 恵美
定価: 1,870円(本体1,700円+税)
声優・緒方恵美、初の自伝本!生誕から現在までのトライ&エラーや作品秘話
声優・緒方恵美、初の自伝本発売!
『新世紀エヴァンゲリオン』碇シンジ、
『幽☆遊☆白書』蔵馬、
『美少女戦士セーラームーン』天王はるか/セーラーウラヌス、
『カードキャプターさくら』月城雪兎/ユエ、
『遊☆戯☆王』武藤遊戯、
『ダンガンロンパ』苗木誠/狛枝凪斗、
『地縛少年花子くん』花子くん/つかさ、etc.
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