9/26に発売された原浩さん最新長編小説『蜘蛛の牢より落つるもの』。ダムに沈んだ伝説の村で、かつて起こった猟奇事件。その真相に近づくほどに、恐怖と謎があふれ出す・・・・・・! 書店員さんお墨付きの「どんでん返しホラーミステリ」を大ボリューム試し読み公開。
原浩『蜘蛛の牢より落つるもの』試し読み#03
第一章 埋める
掘り出した女が 埋めろと言った
「掘り出した女?」
企画書の文字列を俺が指さすと、
「そそ。地面から掘り出したらしいよ。女を」と、平然とした顔で冨さんが答えた。
「埋めろと言った、ってのは……」
「五人はどういうわけか自分たちを順番に生き埋めにしたんだ。自分で掘った穴にね」
「それを女がやらせたってこと? その女、妖怪か何かすか?」
「ゆびちゃんにお願いしたいのは、まさにそれよ」
「は?」
「どうして彼らは自らを生き埋めにしたのか。掘り出したっていうその女が何なのか。それを聞き出して読み物にして欲しいってわけさ。それが企画の趣旨。掘り出した女ってのがどんなオバケなのか輪郭だけでもわかるといいよね」
「オバケ……」
「そそ。オバケ。幽霊。怨霊。妖怪かも。あるいは通りすがりの催眠術師とか?」
「はあ」生返事をしながら思った。なんだ、結局いつもと同じじゃないか。「……掘り出した女、か」
呟くと、ぶるりと背が震えた。
天竜書房には何度も訪れているが、今日もエアコンが効きすぎていて寒い。この小さな会議室までもが冷え切っていた。冨さんの快適温度に合わせているらしいが、他の社員はたまったものじゃないだろう。いつも冨さんとエアコンの温度調整を競い合う編集の塔子さんは本日休暇らしい。彼女がいなければ温度調整の権利は冨さんが一手に握る。
窓の外には曇天の梅雨空がどろりと広がっていた。今日こそ降るだろうか。
再び紙面に目を落とし、その一行を繰り返し読んでみた。掘り出した女が埋めろと言った? これだけだと何だかよくわからないが、文字の並びからなんとも言えない気味の悪さが漂ってくる。
どこか楽しげな冨さんが補足した。
「その記述も伝聞だけどね。当時、地元警察への取材で漏れ伝わって来たんだよ。事件の唯一の生存者が、そういう風に証言したんだって」
「生存者っていうのは、その……」
顔を上げた俺に冨さんが神妙な面持ちで頷く。「そう。生き埋めにされた中学生男子」
「……中学生ですか」
「まあ正確には唯一じゃないな。彼の母親も助かったんだよ。ただ、助け出された時には脳に障害を負ってそのまま意識不明になっちゃったもんだから」
「その母親は存命なんですか」
「それがねえ……」と、冨さんは首を傾げた。「事件から何年もして意識が戻ったらしいんだよ。会話ができるまでに回復したって聞いたことがある。けどやっぱり精神的に不安定だったみたいでさ、意識をとりもどしてから間もなく失踪して行方不明になってるんだ。今も見つかっていない。たぶん死んでると思うよ」
俺は再び『執筆依頼概要メモ』に目を落とす。冨さんはいつも仕事を依頼する際にこうしたドキュメントを渡してくれるのだ。表題には『六河原村キャンプ場集団生き埋め死事件』と太字フォントで記されていた。俺は数行読み進めて目を疑った。びっくりして冨さんに顔を向ける。
「四人も死んでいるんですか? この事件」
「そうだよ」
「大事件じゃないですか」
驚いている俺を見て「えっ」と、反対に冨さんが目を丸くした。「……ちょっと噓噓ぉ。この事件全然知らないの? マジで?」
「知らないすね」
「いくつだっけ、ゆびちゃん」
「俺ですか? 先月二十九になりました」
「噓噓ぉ、そんな若かったっけ? 何でも聞いてみなきゃわかんないもんだなあ……ゆびちゃん、出身は東京だっけか」
「ですよ」
「ふうん。メモっとくよ。指谷英、二十九歳。独身男性。東京生まれ東京育ち。悪そうな奴は大体友達……っと」
そう言いながら冨さんは自分の手の平に書きつけるジェスチャーを見せた。
「……そういうネタがだいぶオッサンっすよね。冨さん」
俺があからさまに呆れ顔をしてみせると、冨康介代表取締役社長兼編集長は、いつもの怪鳥みたいな妙な笑い声で、ひっひひと笑った。
冨さんは俺よりもひと回り以上も年上だから年齢は四十代半ばのはずだ。この天竜書房という出版社の代表を務めている。
冨さんと知り合ったのは三年程前だ。以来、彼はライターとしての腕を評価してくれたのか、あるいは常に暇そうで可哀想だと思ったのか、ことあるごとに俺に仕事を振ってくれていた。しかも俺みたいな若手ライターに対しても、立場を笠に偉ぶることもなく対等に接してくれる。しがないフリーライターなど塵芥以下のぞんざいな扱いをする業界人も少なくない中で、こういう人間は稀有だといえる。それに不思議と馬が合うこともあって、冨さんに対しては弟分みたいな距離感での付き合いをさせてもらっていた。
「……でもまあ無理もないか」冨さんは椅子をぎしりと軋らせて背を預けると、狭い会議室の天井を見上げる。「あの事件、二十年以上も前だからなあ。ゆびちゃんはまだ小学生だし、知らなくても不思議じゃないな」
「でも薄っすらとは覚えてますよ。ワイドショーか何かで取り上げられていたのを見ました」
「あれだけの死体の山が出たんだ。当初、かなり報道が過熱していたからね。でもピタリと報道されなくなったから、印象薄くても当然かもね」
「どうして報道されなくなったんです?」
「そりゃ、あれだよ。報道しづらい凄惨な事件だからってのが一番大きい。それに子供が絡んでいる上に状況としては集団自殺でしょ。デリケートな案件かもしれないってわかったからね。まさに潮が引くように報道量は減ったよね」
「集団自殺ですか」
「としか思えないよね。自分たちで掘った穴に自分たちを埋めたんだから」
冨さんの執筆依頼概要メモには Wikipedia 記事からの引用が添付されていた。
六河原村キャンプ場集団生き埋め死事件(むがわらむらきゃんぷじょうしゅうだんいきうめしじけん)
二〇〇×年九月一日に長野県宇都郡六河原村(現・佐比市)六河原キャンプ場で発生した殺人
・死体遺棄・集団自殺事件。
事件当時四十五歳の男(男性A)と内縁の妻とその子供(長男)、キャンプ場管理人の男性Bと別のキャンプ客の男性Cの計五名でキャンプ場内敷地に穴を掘り、事件現場に運び込んでいた男性Aの子供(次男)の死体を埋めた。さらに、男性A以外の四名も生きたまま次々と埋められる。
未明にキャンプ場管理棟より出火。全焼した建物内からは男性の死体が発見され、その後の調べで男性Aだと確認された。男性Aは管理棟建物に自ら火をかけた上、建物内にて首吊り自殺したものと判明する。なお、生き埋めにされた四名のうち男性Aの妻と長男は現場から救助されている。
同年十二月。次男の殺害についてのみ容疑者死亡のまま男性Aを書類送検。そのほかの件については立件されることがなかった。
事件は不可解な点が多く、同意殺人あるいは集団自殺といった説があるが、関係者の多くが死亡しており、事件から八年後に完成した六河原ダムのダム湖に事件現場が沈んだために事実解明は進んでいない。ノンフィクション作家の木佐良一は一種の集団パニックに準じた行動心理によるものという説を唱える。
冨さんが補足する。
「そのネット記事では名前は伏せられているけどね。当時は実名報道されている。死亡した被疑者男性というのは牟田雅久って名前の男なんだけど、発端は牟田が家庭内で子供を殺したことから始まったんだ」
「児童虐待ですか」
「そそ。牟田は事件の数年前から草彅家に転がり込んでるんだけど、しばらくして奥さんや子供たちに暴力を振るうようになったらしい。で、事件の直前にとうとう次男の流生くんっていう十歳の子を殺しちゃったんだね。そこで牟田は妻と長男を連れてキャンプ場に死体を埋めに訪れた」
「どうしてキャンプ場なんかに」
「当時ダムの建設計画が進行中だったんだ。ダムが完成したらキャンプ場も沈んじゃうから、証拠隠滅できると考えたんだろうね。その年でキャンプ場の閉鎖も決まっていたらしいし。実際は計画延期が繰り返されて着工はそれから何年も先になったけど、当時はすぐにでもダム建設が始まる空気だったみたい」
「キャンプ場の管理人って人も死んだんですよね」
「そそ。生き埋めにされてね」
「牟田とその家族はわかりますけど、管理人とキャンプ客の男性までがどうして死体を埋めるのを手伝ったんです?」
「そこがこの事件の奇妙なところなんだよね。そこにも書いたんだけどさあ」冨さんは顎で取材メモを示す。「……草彅家も管理人も村の人間だし、手伝ったキャンプ客ってのも隣町の住人だっていうから互いに知り合いだった可能性はあると思う。けど普通、いきなり死体隠蔽に協力したりしないじゃない? それに生き残った中学生の長男の証言だと、他にもうひとり女性がいたっていうんだよ。その女が死体を埋めるのを手伝うように命令していたんだって」
「女性……そいつが掘り出した女?」
「そそ。長男が言うには、突然女性がテント内に現れたんだって。彼女の指示で管理人もキャンプ客も死体を埋める穴掘りを手伝い、さらには生き埋めにされた。もちろんその後警察も調べたらしいけど、そうした女が現場にいたという証拠はみつからなかったんだ。それに、全員が女の意のままに動くばかりか、女に言われて互いを生き埋めにしたってんだから、ちょっと普通じゃないよね」
「本当にそんな女がいたんですか?」
冨さんは首を左右に振る。
「女は実在しないと警察は結論付けた。女を見たという長男の証言は妄想によるものとされたんだ。けれど、みんなして穴を掘っていたのは目撃者もいたし、争った形跡もない。自分たちを生き埋めにしたのは事実らしいけど、その理由はわからない」
「ここに書いてある集団幻覚みたいな、何か特殊な集団心理でしょうか」
「あるいは、そうかもしれない。けど、うち的にはそっちの説はとらずにいきたいね」
「どういうことですか」
「死体を埋めていた彼らは地中から掘り出した女の怨霊に取り憑かれてしまったんだ。その結果、この怪死事件が起きた。それが真実だ」
「それが真実だ……ってそれ、想像でしょ」
「うちの読者はそういうのを期待しているんだよ」
冨さんはひっひひと笑う。
俺は溜息を我慢した。
天竜書房はいくつかの雑誌を発行しているが、その中でも安定した発行部数を維持しているのがオカルト系情報誌の『月刊ダミアン』だ。出版不況、とりわけ雑誌が売れなくなったと言われて久しい。しかしそんな市場にあってもダミアンの発行部数は長年堅調で、二十年間発行が続けられていた。飛ぶように売れるというわけでもないが、特別落ち込むこともない。それ故に月刊ダミアンは天竜書房の顔ともいえる存在になっていた。小規模出版社である天竜書房が、厳しい市場環境の中で堅調に事業規模を拡大させられているのも月刊ダミアンの存在が大きいといえる。
俺も先月ダミアンの仕事で記事を書いている。米軍がイエティの遺伝子から生物兵器を製造しているというスクープ記事だ。もちろん全て伝聞と憶測による出鱈目な記事だが、読者も噓だと認識した上で楽しんでくれている……はずだ。ともかく、月刊ダミアンのおかげで天竜書房はオカルト系専門の出版社だと勘違いされる向きもある。
冨さんは話を続けた。
「とにかく謎の女を見たという証言があったのは事実なんだ。それが何なのか、よくわからないけど興味は引くでしょ? それに事件現場はすでにダム湖の水底で、もはや真相は誰にもわからない。六河原キャンプ場での一件は、とりわけオカルト好きには伝説的な人気コンテンツなんだよ」
この事件現場となった村は、その後建設された六河原ダムによって生まれた人造湖、六河原湖の水底に沈んでいる。したがって事件の痕跡は二度と人の目に触れることはない。その辺のミステリアスな状況がオカルトファンの想像をかき立てるのかもしれない。
「この仕事、ダミアンの記事じゃなくて、単行本になるんですよね?」
冨さんは何故か誇らしげに頷く。
「単行本だよ。その名も『実録日本怪異事件簿』……カッコ仮題」
やはりそうか。俺はがっかりした。今回は単行本だというので、シリアスなネタかと勝手に勘違いしていた。だが、つまりは実際起きた殺人事件にオカルトネタを結びつけるという趣向の企画だろう。
「ダム建造によって消えた六河原村の実録ルポとかじゃ駄目なんですか」
「誰が買うのよ、今どきそんなの」冨さんは、冷ややかに言う。「我々みたいな弱小出版社は大手がやらないニッチで下世話なネタにも活路を見出すしかない。オカルトネタはうちの数少ない武器なんだ。高尚な理想は飯が食えるようになってからだよ。わかるだろ、ゆびちゃん」
俺はやむなく首肯した。
「……まあ、わかりますけどね」
確かに硬派なだけのノンフィクションが飛ぶように売れる時代だとは思えない。天竜書房には大手のような営業力も販売網もないのだ。それならば手を変え品を変え、読者の興味を引きつけるネタを模索するしかない。俺個人としては、この手のオカルト話のどこが面白いのかさっぱりわからない。小学生くらいの頃は、俺も学校の怪談やら超能力やらUMAやら、その手の話は好きだった。だが普通は成長と共に卒業するものだ。いい大人になってからもこういった与太話に夢中になる奴の気が知れない。だが、ダミアンの読者層は中高年も多いらしいのだ。俺は自分で記事を書きつつも、金を出してこれを読む大人がいる事実に理解しがたい気持ちを抱いていた。とはいえ、飯のタネになるのなら文句はない。くだらないと思いながらも割り切って天竜書房の仕事をこなしていた。
俺が企画意図を飲み込んだのを見て取ったのか、冨さんは笑顔を見せて話を続けた。
「この企画、多くのライターさんの共著になるんだけどさ、個人的に一番重要視していて、力を入れているのはこの集団生き埋め死事件なんだ。その一章を丸ごとゆびちゃんに任せたのは、僕がそれだけ期待しているってことなのよ」
「ご期待に沿えるよう頑張りますよ」俺が答えると冨さんは満足そうに頷く。
俺はさっきから気になっている点を尋ねた。
「……ただこれ、取材対象が未定ってなってますけど」
冨さんから渡されたメモにはインタビュー相手が調整中とだけ記されていたのだ。そもそも、こうしたオカルト企画でわざわざインタビュー取材を行うなんて珍しいことだ。大抵は噂話程度の内容を勝手にライターが膨らませて煽情的な内容の読み物にしてしまう。事実関係は二の次だ。だが今回は違う。力を入れているという冨さんの言葉にも真実はあるようだ。それにしても一体誰に取材する気なのか。
「ああ、それね」冨さんは得意げな笑みを浮かべる。「それ書いてる時はまだお相手と交渉しているところだったから調整中にしといたんだ。けど、昨夜ようやく取材に応じてくれることになってさ。だから急遽ゆびちゃんを呼んだのよ」
「誰に話を聞くんですか」
「草彅柊真って名前の男性」
「それ誰ですか」
「事件の当事者だよ。中学生」
「えっ」中学生? 俺は事件概要がまとめられたメモに目を落とす。「それって、さっき言っていた……」
「そそ。弟の死体を埋めた中学生男子。女を見たと証言した子供。当時十五歳。本人からコメントとるのが一番でしょ」
「十五歳か……」
俺は口内に酸っぱい液体が湧くのを感じた。子供じゃないか、気の毒に。短い間に多くの死を見せつけられ、そればかりか自分も埋められて死にかけたという。多感な年頃に遭遇した凄まじい経験はその後の人生に好ましからぬ影響を与えたであろうことは想像に難くない。
冨さんは窓の外の灰色の空に目を向ける。
「あれから二十年……いや二十一年だから、草彅柊真は今年で三十六歳だね」
「よくOKとれましたね」
冨さんはにやりと笑うと自分の腕をぽんぽんと叩く。
「そこはこれだよ。交渉のウデってやつ」
「その人、今はどこに住んでいるんです?」
「佐比市だよ。旧六河原村を吸収合併した市。そこの市役所に勤務している」
「地元を離れていないんですか」
「草彅は高校卒業と共にそのまま地元で就職したらしい。調べた限りじゃ、彼は一度も信州を離れていないみたいだね」
「それは……意外っすね」
「どうして」
「佐比市ってことは、六河原ダムも近いんでしょう? 俺ならそんな酷いトラウマ体験をした場所からは、少しでも離れたいと思いますが」
ふうむと冨さんは腕を組んだ。
「確かにそうかもしれないね……ま、そのへんも話を聞いてみたらいい」と、冨さんは俺の手元の取材メモを指さす。「とにかく、どうして彼らが自分たちを生き埋めにしなきゃならなかったのか聞き出して欲しいんだ。彼が見たという『掘り出した女』が、関係しているなら、それがどんなオバケなのか悪霊なのか聞き出して欲しい」
「悪霊、ですか」
「そう。それが事件の元凶なんだ。ホラーっぽくていいよね」
「本気ですか」
「そう信じなきゃ」
「本当は信じてないってことでしょ、それ」
「ゆびちゃん、僕は月刊ダミアンの編集長であり、天竜出版の社長でもあるんだよ? ビジネスに必要とあらば何でも信じるスタンスさ。でなきゃ、こんな出版社の社長なんて務められない。それにゆびちゃんだって気にならない? この怪死事件。草彅柊真が当時何を見て、何が起きたのか」
確かに奇怪な事件ではあるし、おおいに興味を引く部分はある。しかし、こちらの狙い通り、オバケだの悪霊だのと言った話が聞けるのかは疑問だ。中学生とはいえ異常な状況下に置かれた子供が、自分が体験した凄まじい出来事をうまく表現できなくても無理はない。ましてや証言したのが事件直後ならば、まだ混乱状況で精神的なショックの只中にあっただろう。
「当人に取材してみたら、たいした話を聞けずにがっかりすることになるかもしれませんよ。オバケの話なんて出てこないかも」
俺の言葉に冨さんは笑みを見せた。
「それを上手く記事にするのが、ゆびちゃんの仕事だよ」
「はあ……」
事実関係を曲げずにオカルト的な記事にしろということらしい。単行本の仕事と聞いて飛んできたが、結局いつものダミアンの仕事と変わらない。いつもと同様、あまり気が進まないがやるしかない。今では稼ぎの大半が天竜書房での仕事になりつつあるのだ。
冨さんが急に思い出したようにぽんと両手を打った。
「あ、そうそう。さっき実録ルポって話がでたけど、今回まさにそうした構成にしようと思うんだ」
「と、いうと?」
「現場でキャンプしてもらえる?」
「は?」
(つづく)
作品紹介
蜘蛛の牢より落つるもの
著者 原 浩
発売日:2023年09月26日
取り憑くものは、怨霊か悪意か。 『火喰鳥を、喰う』の衝撃ふたたび!
フリーライターの指谷は、オカルト系情報誌『月刊ダミアン』の依頼で21年前に起こった事件の調査記事を書くことに。
六河原村キャンプ場集団生き埋め死事件――キャンプ場に掘られた穴から複数の人間の死体が見つかったもので、集団自殺とされているが不可解な点が多い。
事件の数年後にダムが建設され、現場の村が今では水底に沈んでいるという状況や、村に伝わる「比丘尼」の逸話、そして事件の生き残りである少年の「知らない女性が穴を掘るよう指示した」という証言から、オカルト好きの間では「比丘尼の怨霊」によるものと囁かれ、伝説的な事件となっている。
事件関係者に話を聞くことになった指谷は、現地調査も兼ねて六河原ダム湖の近くでキャンプをすることに。テントの中で取材準備を進める指谷だが、夜が更けるにつれて湖のまわりには異様な気配が――
詳細ページ:https://www.kadokawa.co.jp/product/322306000299/
amazonページはこちら