【連載小説】クーラーのリモコンが全宇宙消滅の引き金に――!? ヨーロッパ企画の傑作と『四畳半神話大系』が融合! 森見登美彦・著 上田 誠・原案「四畳半タイムマシンブルース」#1-15
森見登美彦・著 上田 誠・原案「四畳半タイムマシンブルース」

※本記事は連載小説です。
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映画「幕末軟弱者列伝 サムライ・ウォーズ」を思いだして頂きたい。
二十一世紀の四畳半から幕末へタイムスリップした大学生・銀河進によって引き起こされた歴史改変は、全宇宙消滅という壮大なカタストロフを招来した。
一見投げやりな展開に見えるが、これは我々の議論の論理的帰結なのである。
銀河進によって明治維新が阻止されたとしよう。その後の歴史の流れはすべて変わり、現代日本の社会の姿も変わり、そもそも銀河進本人が生まれてこない。そうすると、彼が実験中の事故でタイムスリップすることもなく、「銀河進によって明治維新が阻止された」という前提そのものと矛盾をきたすのである。背理法的に考えるなら、このような矛盾が発生するからこそ「タイムマシンは実現できない」という常識的結論になるわけだ。しかしこの映画はあくまで「タイムマシンは実現できる」という前提に立つ。そうでなければ、そもそもストーリーが始まらないではないか。