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連載

「小説 野性時代」転載コラム「私の黒歴史」 vol.4

三日市 零「提出物でそれはやめとけ」【連載コラム「私の黒歴史」】

「小説 野性時代」転載コラム「私の黒歴史」

最も旬で刺激的な物語が詰まった月刊文芸誌「小説 野性時代」より、コラム「私の黒歴史」を特別公開!
これって黒歴史? それとも白歴史? “色とりどり”のエピソードをお楽しみください。

(本記事は「小説 野性時代 2023年12月号」に掲載された内容を転載したものです)

三日市 零「提出物でそれはやめとけ」
【連載コラム「私の黒歴史」】

 ハードルの高いお題である。
 念のため黒歴史の定義を確認すると「今となっては恥ずかしい、なかったことにしたい過去の言動」とある。
 困ったことになった。私は割と平凡な学生だったし、黒歴史なんてあっただろうか……と、記憶を辿ること数分。
 あった、にはあった。それもまぁまぁアレなのが。
 中学生の頃『バトル・ロワイアル』(高見広春・作)という小説がっていた。中学生のクラスメイト同士が殺し合いをするという、いわゆるデスゲームものである。(以下『バトロワ』と表記)
 私も例に漏れずどハマりした結果、ネット上の二次創作にまで手を出すようになっていた。インターネット老人会の鉄板ネタで恐縮だが、当時はキリ番やBBSを備えた個人サイトがまだ生きていたのである。
 ちなみに「自分でも二次創作を書いてみよう」とは、残念ながら思わなかった。現実のクラスとは別に、ひとクラス分の架空の生徒たちのプロフィールを設定して物語を書くなんて、どう考えたって面倒くさい。
 物語を書くのは諦めた代わりに、私はもっとお手軽な方法を発見した。読書感想文や職場体験レポートなど、授業で提出する課題の文体だけを『バトロワ』調にする作戦である。
 読むだけで文体に影響を受けてしまう名作は数多いが、『バトロワ』もそのたぐいの作品だった。以下、特徴的な部分を引用するが
「クリスマスケーキの板チョコレートよろしく……」
「このくそやくたいもないゲームが……」
「……盗作だった、いやはや」
 と、文章の癖が強い(そこが良いのだけれど)。
 当然ながら、これらは「小説だからこそ活きる表現」で、中学生が書く報告系のレポートとは相性が悪い。少し考えれば、真似するのは望ましくないとわかりそうなものだが、絶賛「厨二病」真っ最中だった私にはそれがわからなかった。他の生徒と毛色の違う書き方を「個性的でカッコ良い」と信じ、あらゆる課題で無駄にれん溢れるフレーズを量産する姿は、自分のことながらなかなかにホラーである。
 きっと当時の担任も、採点しながら頭を抱えていたことだろう。つくづく迷惑をかけたなぁと思う。タイムマシンで今すぐ過去に戻り「提出物でそれはやめとけ」と、自分自身に説教したくなってきた。
 あれから時が経ち、私は作家デビューすることになった。あの時よりは成長したのか、文章におけるTPOはわきまえられるようになったものの、未だ随所に残る厨二っぽさは悩みの種でもある。

プロフィール

三日市 零(みっかいち・れい)
1987年生まれ。福岡県出身。慶應義塾大学卒業。第21回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉として『復讐は合法的に』(応募時の『ゴールデンアップル』を改題)でデビュー。

書籍紹介



復讐は合法的に(宝島社文庫刊)
著者:三日市 零
発売日:2023年7月6日

第21回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉。
六年付き合った彼氏に手酷く裏切られたOL・麻友が出会ったのは「合法復讐屋」エリス。
弁護士資格と法律知識を活かして麻友の復讐を代行したエリスは、その後も様々な依頼をこなす。
妄想じみた依頼から辿りつく、殺人事件の意外な真相とは。法律の通じない権力をもつ相手に、エリスはどう立ち向かうのか。
そして最後のターゲットはエリスと同じ「復讐屋」……。異色の連作リーガルミステリー!
(あらすじ:宝島社オフィシャルHPより引用)

掲載号紹介



小説 野性時代 第241号 2023年12月号
編 小説野性時代編集部
発売日:2023年11月25日
商品形態:電子専売

東川篤哉の新連載「谷根千ミステリ散歩」開幕! 読切には山本一力の人情時代短編「おてるの灯明台」掲載。超豪華執筆陣で贈る月刊文芸誌。

【新連載】
東川篤哉――谷根千ミステリ散歩 密室の中に猫がいる 前篇
東京・谷中には、おいしい食べ物、下町情緒、
そしてミステリが揃っている!

【読切】
山本一力――おてるの灯明台
おてるは富くじの当たり札を持ったまま亡くなった。
引き取り手を失った当選金の行方は──?

【連載】
赤川次郎――三世代探偵団 愛と哀しみへの逃走
秋吉理香子――殺める女神の島
伊吹有喜――銀の神話
今村翔吾――天弾
恩田 陸――産土ヘイズ
垣根涼介――武田の金、毛利の銀
河崎秋子――銀色のステイヤー
櫛木理宇――死蝋の匣
近藤史恵――風待荘へようこそ
新川帆立――目には目を
増田俊也――七帝柔道記II 立てる我が部ぞ力あり
森 絵都――デモクラシーのいろは

【コラム】
告白します――片島麦子「猫と暮らすとは思わなかった」
私の黒歴史――三日市 零「提出物でそれはやめとけ」
私の黒歴史――夢野寧子「薔薇ニ棘アリ」

【記事】
Book Review「物語は。」吉田大助
――逢坂冬馬『歌われなかった海賊へ』

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年に一度の特別版「小説 野性時代 特別編集 2023年冬号」登場!



電子書籍として毎月25日に配信している月刊文芸誌「小説 野性時代」。
その特別編集の紙版「小説 野性時代 特別編集 2023年冬号」が2023年11月22日(水)に発売しました。
直木賞作家・葉室麟の未発表中編「不疑」初掲載に加え、森村誠一の追悼特集、第14回山田風太郎賞の結果発表および選評、佐藤正午・窪美澄ら歴代受賞作家5名による競作を掲載。「小説 野性時代」の新創刊20周年記念特集では、2003年の新創刊以来の歩みを振り返ります。また、伊坂幸太郎、辻村深月の最新刊刊行に合わせた特別企画や、ラランド・ニシダの最新中編小説など、超豪華執筆陣による大ボリュームでお届けします。
年に一度の特別版をぜひお楽しみください!

詳しい情報はこちら https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000013729.000007006.html


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