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「小説 野性時代」転載コラム「私の黒歴史」 vol.2

須藤古都離「昨日はクソじゃねえ」【連載コラム「私の黒歴史」】

「小説 野性時代」転載コラム「私の黒歴史」

最も旬で刺激的な物語が詰まった月刊文芸誌「小説 野性時代」より、コラム「私の黒歴史」を特別公開!
これって黒歴史? それとも白歴史? “色とりどり”のエピソードをお楽しみください。

(本記事は「小説 野性時代 2023年8月号」に掲載された内容を転載したものです)

須藤古都離「昨日はクソじゃねえ」
【連載コラム「私の黒歴史」】

 思春期に詩を書いていた、と言えば黒歴史に聞こえるかもしれない。実際に黒歴史だと思ったことがないわけでもない。それも秘密のノートに書き溜めていたわけではなく、誰でも見られる設定でSNSに投稿していたのだ。詩を投稿するたびに、私が疲れているのだろうかと心配してくれた友人もいる。
 詩を書くと「ポエム」と言われて馬鹿にされることがある。なぜだろう? よくわからない。
 私が二十歳の時に書いた詩をそのまま載せてみよう。

《孤独より静かな場所で屍の如く立ち尽くした君よその横顔に深く刻まれた絶望によく似た悲しみを私は歌わずにはいられない開け放たれた窓のようにそこへ吹き込む風のようにその風を受けて膨らむカーテンのように静かに歌おう軽やかにステップを踏む昼下がりの倦怠に囚われた君よ流れる釘の音が聞こえるかまるで積乱雲の下に広がる青海原の波のように寄せては返すあの金属的な喜びの歌が孤独より静かな場所を探し求める君の為に囁くその妙なる調べが崩れ墜ちた現実の破片が売国奴の微熱に熔かされ狂った幻想へと変容する様が見えるか分かるか感じるか覚えているか君が生きていた時に感じた全てそれらが守銭奴の暴言によって欲望だらけのお伽話へと姿を変えた事を君の全てが否定されたのだ君の全てが否定されたのだ君の全てが否定されたのだ私は歌おう全ての美徳がいかに失墜したのかを天使が雲の隙間から墜ちそして我々の足元でいかに潰えたのかを私は歌おう三途の川を渡る我が子らよ孤独より静かな場所で静寂より孤独な歌を聞き届けよ君の全てを受け入れよう君の全てを語り継ごう君の全てを褒め讃えよう君の全てを孤独より静かな場所から解き放とう》

 圧倒的に読みづらく、痛々しさすら感じさせる。何かを表現したかったわけではない。ジョニー・デップ出演の映画『ビートニク』を観て触発されただけだ。
 過去に詩を書いていたことを黒歴史だと思う人もいるかもしれない。だが、それは私にとっては創作の原点だった。白か黒かを決めるのは、他の誰でもなく自分自身なのだ。
 詩を書いてもいい。漫画を描いてもいい。下手糞でいい。他人の目なんて気にせず、自分のやりたいことをやればいい。それを後で振り返った時に、黒歴史なんて言って過去の自分をあざ笑うのは、自分自身に対して不誠実だと思うのだ。
 とは言え、スキンヘッドにしてパンテラのコピーバンドをやっていたのは、さすがに黒歴史ですけどねー、ははははは。

プロフィール

須藤 古都離(すどう・ことり)
1987年、神奈川県生まれ。青山学院大学卒業。2022年、『ゴリラ裁判の日』で第64回メフィスト賞を受賞。23年7月に『無限の月』を刊行。

書籍紹介



ゴリラ裁判の日
著者 須藤 古都離
発売日:2023年03月15日
出版社:講談社

カメルーンで生まれたニシローランドゴリラ、名前はローズ。メス、というよりも女性といった方がいいだろう。ローズは人間に匹敵する知能を持ち、言葉を理解する。手話を使って人間と「会話」もできる。カメルーンで、オスゴリラと恋もし、破れる。厳しい自然の掟に巻き込まれ、大切な人も失う。運命に導かれ、ローズはアメリカの動物園で暮らすようになった。政治的なかけひきがいろいろあったようだが、ローズは意に介さない。動物園で出会ったゴリラと愛を育み、夫婦の関係にもなる。順風満帆のはずだった――。
その夫が、檻に侵入した4歳の人間の子どもを助けるためにという理由で、銃で殺されてしまう。なぜ? どうして麻酔銃を使わなかったの? 人間の命を救うために、ゴリラは殺してもいいの? だめだ、どうしても許せない! ローズは、夫のために、自分のために、正義のために、人間に対して、裁判で闘いを挑む! アメリカで激しい議論をまきおこした「ハランベ事件」をモチーフとして生み出された感動巨編。第64回メフィスト賞満場一致の受賞作。
(あらすじ:講談社オフィシャルHPより引用)

掲載号紹介



小説 野性時代 第237号 2023年8月号
編 小説野性時代編集部
発売日:2023年07月25日
商品形態:電子専売

赤川次郎によるサスペンス長編完結! 恩田陸、青山文平、垣根涼介ら豪華連載陣で贈る月刊文芸誌
【短期集中掲載】
木下昌輝――剣、花に殉ず

【連載】
青山文平――父がしたこと
赤川次郎――余白の迷路
秋山寛貴(ハナコ)――人前に立つのは苦手だけど
阿津川辰海――バーニング・ダンサー
今村翔吾――天弾
恩田 陸――産土ヘイズ
垣根涼介――武田の金、毛利の銀
河崎秋子――銀色のステイヤー
新川帆立――目には目を
長浦 京――シスター・レイ
中山七里――こちら空港警察
増田俊也――七帝柔道記II 立てる我が部ぞ力あり

【コラム】
私の黒歴史――河邉 徹「白だと言ってくれ」
私の黒歴史――須藤古都離「昨日はクソじゃねえ」


【記事】
Book Review「物語は。」吉田大助
――山白朝子『小説家と夜の境界』

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