KADOKAWA Group
menu
menu

連載

「小説 野性時代」連載コラム「告白します」 vol.7

武石勝義「たけしのビミョーすぎる運動歴」【連載コラム「告白します」】

「小説 野性時代」連載コラム「告白します」

最も旬で刺激的な物語が詰まった月刊文芸誌「小説 野性時代」より、コラム「告白します」を特別公開!
執筆者の個性が光る「告白」をお楽しみください。

(本記事は「小説 野性時代 2023年10月号」に掲載された内容を転載したものです)

武石勝義「たけしのビミョーすぎる運動歴」
【連載コラム「告白します」】

 運動が苦手です。
 特に野球、サッカーといった球技や陸上の短距離走など、反射神経やチームワーク、純粋な身体能力で競うのが苦手です。その反動かスポーツ観戦は大好きです。以前は地元のJリーグクラブの年間パスを買って、よくスタジアムに足を運びました。引っ越した今も、そのクラブの試合は配信で欠かさず観戦しています。
 とはいえ苦手イコール運動が嫌いというわけではなく、のんびりマイペースで身体を動かすこと自体は好きです。十年ほど前から始めた自転車には結構ハマって、十五キロのダイエットに成功しました(現在は着実にリバウンド中です)。他には水泳やスキー……こうして並べてみますと、どれも一人で黙々と身体を動かし続ける類いですね。なお順位成績についてはノーコメントです。
 ただ、ここ数年コロナ禍で外出自粛しているうちにすっかり体力が衰えて、先日ついに電動アシスト自転車を購入してしまいました。かっこいいやつでお気に入りです。でも真っ当な運動からどんどん遠ざかっています。
 かように微妙な運動歴の私ですが、ひとつだけ毛色の異なるスポーツに手を出したことがあります。登山です。
 大学時代、夏山メインと比較的緩めではありますが、登山サークルに所属していました。仲間と共にする登山はれつきとしたチームスポーツ。現地で忘れ物に気づいたり、大雨や仲間の怪我で途中引き返したり、私が腹を下して山小屋のトイレに駆け込み大ストップをかましたりといった困難を乗り越えるには、互いの協力が欠かせません。苦手なチームプレーです。
 ではなぜ登山サークルなんぞ入ったのか。それはズバリ、同期が全員女の子だったからです。中高と男子校だった私が、同期全員女子という環境に目がくらんだとして、いったい誰が責められましょう。その実態は同期唯一の男子という理由で肉体労働担当になりはて、浮いた話などひとつもない日々だったとしても。
 ですが登山サークルでアウトドアな空気に触れたのは、今振り返ると貴重な経験でした。あの日々がなければ、後々自転車で百キロ走ろうとか山を登ろうとか思わなかったことでしょう。元来インドアな私が時折り外に飛び出したくなるのは、この頃の経験の賜物だと思っています。
 このコラムを書いているうちに、また自転車で走り回りたくなってきました。ここは買ったばかりのかっこいい電動アシスト自転車に乗って、お気楽サイクリングに出掛けようと思います。

プロフィール

武石勝義(たけし・かつよし)
1972年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。学生時代の創作欲が2018年に突然再燃し、Web上の様々な小説投稿サイトに作品を公開するようになる。『しんじゅうぼうでん』(「夢現の神獣 未だ醒めず」を改題)で日本ファンタジーノベル大賞2023大賞を受賞。

書籍紹介



神獣夢望伝(新潮社刊)
著者 武石勝義
発売日:2023年6月21日

くり返し見る夢の景色を探して旅立つ少年、恋人を取り戻そうと村を出奔する青年、一度は愛した男に裏切られた女、政争と権謀術数の渦に巻き込まれる人々――不条理な運命に翻弄され抗う先に救いはあるのか。キャラクターの濃さとストーリーの構成力を選考委員から絶賛された、日本ファンタジーノベル大賞2023受賞作。
(あらすじ:新潮社オフィシャルHPより引用)

掲載号紹介



小説 野性時代 第239号 2023年10月号
編 小説野性時代編集部
発売日:2023年09月25日
商品形態:電子専売

伝説の女優をめぐる物語を綴る伊吹有喜の新連載「銀の神話」、伊吹亜門の華麗なる暗号ミステリ短編「海軍不正講義」、綾崎隼がフィギュアスケートの天才少女を描く短期集中掲載「この銀盤を君と跳ぶ」後篇掲載!

【新連載】
伊吹有喜――銀の神話
華やかな芸能界でひときわ輝き、突如消えた伝説の女優。
圧倒的美貌に隠された、彼女の光と影とは?

【読切】
伊吹亜門――海軍不正講義
帝国海軍の若き探偵×不可解な汚職事件。
本格ミステリ界の旗手が仕掛ける、華麗なる暗号の謎!

【短期集中掲載】
綾崎 隼――この銀盤を君と跳ぶ
勝利の女神が微笑むのは、完璧な美か、限界への挑戦か。
天才少女二人の熱きフィギュアスケート物語、最終決戦!

【連載】
秋山寛貴(ハナコ)――人前に立つのは苦手だけど
阿津川辰海――バーニング・ダンサー
今村翔吾――天弾
垣根涼介――武田の金、毛利の銀
河崎秋子――銀色のステイヤー
新川帆立――目には目を
増田俊也――七帝柔道記II 立てる我が部ぞ力あり
森 絵都――デモクラシーのいろは

【コラム】
告白します――武石勝義「たけしのビミョーすぎる運動歴」
告白します――久永実木彦「呪われてフラメンコ」

【記事】
Book Review「物語は。」吉田大助
――朝霧 咲『どうしようもなく辛かったよ』

https://www.kadokawa.co.jp/product/322301000681/
amazonページはこちら


MAGAZINES

小説 野性時代

最新号
2025年4月号

3月25日 発売

ダ・ヴィンチ

最新号
2025年5月号

4月4日 発売

怪と幽

最新号
Vol.018

12月10日 発売

ランキング

アクセスランキング

新着コンテンツ

TOP