【連載コラム「告白します」】米原 信「異性装」
「小説 野性時代」連載コラム「告白します」

最も旬で刺激的な物語が詰まった月刊文芸誌「小説 野性時代」より、コラム「告白します」を特別公開!
執筆者の個性が光る「告白」をお楽しみください。
(本記事は「小説 野性時代 2025年5月号」に掲載された内容を転載したものです)
米原 信「異性装」
【連載コラム「告白します」】
異性装って、どうしてこうも魅力的なのだろうか。
『ベルサイユのばら』のオスカルは男装の麗人。シェイクスピア『十二夜』のヴァイオラは男装して不思議な三角関係を生み出す。我が国では
女装だって負けてはいない。日本人は女装が大好きだと思う。「打ち込む浪にしっぽりと、女に化けて
しかし、まあ、「やってみよう」と思い立ってふいっと人生初の異性装、街を闊歩しても気づかれず――なんていうのは、フィクションの世界だけのこと。現実はなかなかどうして、異性装をやるにはそれ相応のスキルが要る。だからこそ宝塚の男役も歌舞伎の女形も商売になるのだし――はっきり言って、初めての異性装で美しく仕上がれば奇跡だ。
何が言いたいかというと、この米原信(二十代男性・歌舞伎オタク)はミスコンに出たことがあるのだ、それも人生初の女装をして。
まあ女顔ではあるし、なんとかなるか……?と思ってエントリー。とはいえメイクの仕方などさっぱりわからず、何をどうすればまともな女装になるのかと日夜考えたが
結果、どっと満座の観客が沸いた。げらげら笑いの輩もいた。他の連中はよっぽど可愛く美しく、かたや前座にすぎずランクインもせず。なのに、この米原の写真が卒業アルバムにおさまったのは、なんの因果か?――そう、これは真っ当なミスコンではない。高校時代、男子校に通っていた。そこの文化祭の名物企画こそ、女装男子コンテスト・通称「ミスコン」だったのである。
今、小説を書きながら思う。文字の上なら男装女装何でもござれ初手でも誰でも大成功、なんと自由な世界だろうか。
プロフィール
米原 信(まいばら・しん)
2003年、群馬県生まれ。22年「
書籍紹介
書名:かぶきもん
著者:米原 信
発売月:2025年01月
第102回オール讀物新人賞を受賞した作品を含む短編集。幼い頃から歌舞伎や演劇に親しみ、どっぷり浸かってきた著者が全身全霊で書き上げたデビュー作にして会心の勝負作。
掲載号紹介
書名:小説 野性時代 第257号 2025年5月号
編:小説野性時代編集部
発売日:2025年04月25日
商品形態:電子専売
安部若菜の新連載がスタート! ブレイディみかこの人気読切「私労働小説―ザ・シット・ジョブ―」も掲載。第16回 小説 野性時代 新人賞の受賞作発表も。GW中に読みたい小説が満載の最新号!
【新連載】
安部若菜――描いた未来に君はいない
「私のこと、殺してくれる?」この約束を僕は叶えられるだろうか。
『アイドル失格』の新鋭が挑む、恋愛小説!
【読切】
ブレイディみかこ――ある督促ガールの手記 私労働小説―ザ・シット・ジョブ―
信販会社で働くことになったあたしは、入社2週目にして督促の電話をかけることになった。覚悟を決め、番号をプッシュすると……。
【発表】
受賞作決定! 第16回 小説 野性時代 新人賞
【連載】
赤川次郎――三世代探偵団 愛と哀しみへの逃走
安壇美緒――イオラのことを誰も知らない
阿津川辰海――デッドマンズ・チェア
伊岡瞬――獲物
伊吹有喜――銀の神話
梶よう子――雷電
坂井希久子――大江戸ぐるまん
永井紗耶子――青青といく
馳星周――海霧(ジリ)
藤岡陽子――青のナースシューズ
増田俊也――七帝柔道記 3 友たれ永く友たれ
群ようこ――暮らしはつづく
森沢明夫――ハレーション
【コラム】
土屋うさぎ「塾講師と自己開示」
米原信「異性装」
【書評】
Book Review 物語は。 吉田大助
長岡弘樹『交番相談員 百目鬼巴』
【新人賞】
第17回 小説 野性時代 新人賞 応募要項
第46回 横溝正史ミステリ&ホラー大賞 応募要項
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