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連載

今野敏「ヤメろと言われても! Ⅱ」 vol.16

【連載コラム最終回】ここ数回、取り組んでいた戦車「ティーガーⅠ」。塗装を仕上げ、ついに完成! 今野敏「ヤメろと言われても! Ⅱ」#51

今野敏「ヤメろと言われても! Ⅱ」

※本記事は連載コラムです。

このところ取り組んでいた戦車「ティーガーⅠ」の塗装を仕上げ、完成! 連載最終回。
>>前回はこちら

 ティーガーⅠの続き。本体塗装が終わり、ウェザリングやハイライトを入れる作業。これが一番楽しい。まずは履帯りたいから。ガンメタルという色をドライブラシする。
 ドライブラシは以前も説明したかもしれないが、筆に着けた塗料をいったん拭き取り、かすかすになった状態でこすりつけるように塗る手法だ。
 エッジの部分だけに塗料が乗る。すると、写真のように、こびりついた泥の間に金属の履帯がのぞくような効果が出せる。
 ついでに本体にも、ところどころガンメタルでドライブラシ。やはりここでも、ちょっと塗装がはげて地の金属が見えているような感じになる。
 次に、基本色に砂色を混ぜて明るくし、それで光が当たる部分にエアブラシで吹いていく。ハイライトというのはこのことだ。これで塗装にさらにめりはりがつく。
 さらに、茶色でサビや汚れを描いていくのだが、基本塗装がアクリル系なので、エナメル系塗料を使う。そうすると、基本塗装が侵される心配がない。溶剤で拭き取ることで、何度でもやり直しができる。
 本体にある程度満足できたら、付属のフィギュアを塗る。あらかじめ本体と同じ緑色を塗ってあったので、それに陰影をつけていく。これはまったく絵を描く感覚と同じだ。顔の陰影もしっかり描いておく。
 フィギュアを戦車本体に取り付け、ちょこちょこと気になるところに手を入れれば、完成だ。我ながら、けっこういい感じに仕上がったと思う。
 このキットがどれくらい小さいかを示すために単四電池といっしょに撮影してみた。この小ささを感じさせないような塗装ができれば上出来だ。
 ……というわけで、ティーガーⅠが完成したところで、この連載は最終回ということになってしまった。
 趣味の模型を作りながら、好き勝手なことを書かせてもらって、実にありがたかった。ワンフェスに出品するフルスクラッチの記事が多かったと思う。そのワンフェスも今年は、新型コロナの影響で中止となり、まだ何も製作できずにいる。
 新型コロナ収束を祈願して、アマビエでも作ろうかと考えているのだが……。
 ともあれ、この連載のおかげで模型を作りつづけることができた。忙しくなると、なかなか作業台に向かえない。連載があるので、少しずつでも作業をしようという気になった。
 何事も、締め切りがないと進まないのは、作家のさがだろうか。
 模型作りは、道具の使い方、特に刃物の使い方を覚えるし、モチーフを観察する眼を養い、根気を鍛えることができる。それは立派な文化だと私は信じている。この豊かな文化が失われることがないように、祈りを込めて連載を終えようと思う。


本体塗装ののち、ウェザリングやハイライトを入れていく


付属のフィギュアも塗装。 顔の陰影もしっかり描いていく


単四電池との比較。 このキットは実はこんなに小さいのだ!


フィギュアを取り付け、気になるところに手を入れて、完成!


写真=今野 敏

「カドブンノベル」2020年12月号収録「ヤメろと言われても! Ⅱ」最終回より


書影

「カドブンノベル」2020年12月号


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