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連載

新オープン&リニューアルの書店に聞く! 今年読んでほしい本 vol.3

【インタビュー】東大阪の“町の本屋さん”が創業の地に帰ってきた! 新オープン&リニューアルの書店に聞く! 今年読んでほしい本 Vol.3 栗林書房(大阪府)

新オープン&リニューアルの書店に聞く! 今年読んでほしい本

本と読者を繫ぎ、新たな出会いをもたらす大切な「場」である書店。実は全国各地で、毎月のように新しい書店やリニューアルオープンの店舗が誕生しているのをご存知ですか?
本連載ではそんな新しい書店で働く書店員さんに、「今年読んでほしい本」をご紹介いただきます!
連載3回目は、東大阪の地で創業約90年の歴史を持ち、2024年5月に移転・リニューアルオープンした栗林書房さん。
店舗のご紹介とともに、おすすめの本をご紹介いただきました。

今回のゲスト
栗林書房 栗林秀一さん



――リニューアルしたお店の魅力を教えてください!

栗林書房は、大阪府東大阪市内の河内小阪駅前(大阪難波駅から近鉄奈良線で約15分)に約17坪を構える、雑誌、文庫、コミック、単行本、実用、児童、ビジネス、資格、学習参考書と、専門書以外は一通り扱うごく普通の書店です。
とはいえ、その中では書籍の比率が高め、コミックが低めではあります。
おかげさまでリニューアルオープンから約1年となりますが、地元の方、多くは前店舗のお客様が変わらず足を運んで下さっています。

毎月末に発行している、自身で書いているフリーペーパー「くりばやしだより」は発行139回を数え、お客様が手に取ってくれているのがダイレクトにわかり、いまや集客に一役買っていると実感しています。



――その「くりばやしだより」を楽しみにされているお客様も多いと思いますが、制作にあたって心掛けている点はありますか?


おすすめする本が自分の好きなジャンルに固まらないようにすることと、基本的に「これから出るもの」をさがすことと、そして自分の仕事の日常をできる限りリアルに書くことで、お客様にもちょっと面白いと思ってもらえてるのかな?と思います。
(例えば、3月は教科書販売でヘロヘロで店頭に立っています、とか、配達先が増えてちょっと浮かれています、とか、これはヤバそうだと思ったお客様が実はめっちゃいい人で、失礼なことを思ってしまった、など)
長く続けるためにも、まあまあユルめで、発行もだいたい、ということでやっています(笑)。

またリニューアル後に関西の情報誌『SAVVY』の2月号で特集していただき、その反響は凄かったですね。お客様が、『SAVVY』を買うときの理由として「ここが載っているから」と言ってくださったのも何より嬉しいことでした。
リニューアルオープンから約1年たっても、「移転したんや」と言われるので、まだ浸透させる余地はありそうです。これからも地域に必要とされる書店であり続けたいと思います。


――創業から約90年、今回のリニューアルオープンで開業の地に戻ってきたとお伺いしました。お店で人気の本についても教えてください。

この規模の店舗にしては文庫、単行本は間違いなく多く手に取られていると思います。
やはり文庫本が中心ですが、特に『青い壺』(文春文庫)はずっと売れ続けています。また、当店独自では『満月と近鉄』(角川文庫)が、リニューアル前から引き続き、移転しても売れています。
今売れている本としては、大阪万博にちなんだ『万博ぴあ』です。ダントツですね。売れている理由は「万博の情報だけだから」のようです(ほとんどのお客様が同じ意見です)。
あれだけ「税金の無駄遣い」とか文句を言っていた割には、みんな結局行くんかいな、とつっこみたいというのが正直なところです(笑)。もちろん、いい方向に転んだので店としては非常に助かりました。
かなり在庫を追加してもらったのに、また無くなりそうなくらい凄いです!


――大阪府民のみなさんも、万博に関心を持っている方が多いんですね! そして奈良を舞台とした作品集である『満月と近鉄』が人気なのは、栗林書房さんが関西の書店だからこそかもしれませんね。
そんな「栗林書房」で働く栗林さんの「今年読んでほしい小説」を教えてください!

『翼の翼』朝比奈あすか(光文社文庫)



最初は愛しい我が子に少しでもいい人生を、という思いだったはずなのに、「中学受験」に勝利することが目標になり、その過程は実に壮絶。主人公・翼の父親の回想は、まさに私の過去とほぼ同じだった。きっとそれは綿密な取材、実体験から描かれているのだろう。
竹刀でしばかれるなどは普通の光景で、夜11時帰宅の日々(今ならもちろん大問題でしょう)。
翼君とはレベルが違うが、私も6年生にもなると「落ちたなんてとても言えない」、「家族の期待に応えないと」とまで考えたものだ。
主人公が特殊な世界に絡めとられ翻弄される中、このまま救いようがなく終わったら、おすすめする本は別のものにしようかと思ったが、壮絶な受験戦争の末の「家族の成長」は、多くの親御さんに知っておいていただきたいと思う。
翼君の翼は、中学受験のためでなく、長い人生に向かって羽ばたくためにあるのだから。


――栗林さんも中学受験のご経験があるんですね。膨大な時間をかけて親子二人三脚で志望校を目指す中学受験の壮絶な道のりと、家族の在り方を描いた本作。心に残る、読み応えのある作品をご紹介いただきありがとうございました。
最後に、カドブン読者へのメッセージをいただいてもよろしいでしょうか。

当店は17坪ではありますが、レンタルスペース(7坪)を別に持ち、当店発信のトークイベントを開催したり、地元の酒屋さん主導でワインの試飲イベントをしたりという活動も進めています。他、YouTubeチャンネルでユルめなトークなども発信しています。
「小さいけれど、イベントもやる」そんな立ち位置でやっていきたいと思っています。
もちろん本あってこそなので、両方に力を注いで、より地域に必要とされるように努めてまいります。

店舗情報



栗林書房
住所:大阪府東大阪市小阪本町1-3-2(河内小阪駅前ロータリー南側)
営業時間・定休日は公式ホームページをご確認ください。
公式ホームページ:https://kuribayashi-shobo.jp/

あわせて読みたい!
カドブン編集部が選ぶ 今年読んでほしい本

『満月と近鉄』前野ひろみち(角川文庫)



生駒山の麓で私は四つの小説を書き、そのうえ恋に落ちたのである。
小説家を志して実家を飛び出し、生駒山麓のアパートに籠もっていた「私」は寺の参道で謎めいた女性に出会う。その女性は万巻の書物に囲まれて暮らしていたが、厳しい読み手でもあった。私は彼女に認められたい一心で小説を書き続けるが……(表題作)。斑鳩の里に現れたひとりの青年、ベトナム戦争からの帰還兵ランボーは、己を戦場へ押しやった蘇我氏への復讐を胸に秘めていた(「ランボー怒りの改新」)。奈良を舞台に繰り広げられるロマンと奇想に満ちた4篇。本書を発表したのち沈黙を続ける鬼才の唯一の著作。仁木英之による解説、森見登美彦との対談を収録。(『ランボー怒りの改新』改題)

詳細ページ:https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000284/
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連載「新オープン&リニューアルの書店に聞く! 今年読んでほしい本」の更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/kotoshiyondehoshiihon/


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