
【インタビュー】新オープン&リニューアルの書店に聞く! 今年読んでほしい本 Vol.1 啓林堂書店 奈良店
新オープン&リニューアルの書店に聞く! 今年読んでほしい本

本と読者を繫ぎ、新たな出会いをもたらす大切な「場」である書店。実は全国各地で、毎月のように新しい書店やリニューアルオープンの店舗が誕生しているのをご存知ですか?
本連載ではそんな新しい書店で働く書店員さんに、「今年読んでほしい本」をご紹介いただきます!
記念すべき連載1回目は、2023年末にリニューアルオープンした啓林堂書店 奈良店さん。
店舗のご紹介とともに、2024年に文庫化された『君の顔では泣けない』の魅力について語っていただきました。
今回のゲスト
啓林堂書店 奈良店書店員・NMさん
――リニューアルしたお店の魅力を教えてください!
啓林堂書店 奈良店は「本に出会い、読み、味わうことが出来る書店」として2023年12月に生まれ変わりました。奈良に関する本はもちろん、歴史や哲学などに関する人文書の品揃えが強みです。地域にお住まいのお客さまや観光のお客さまの両方にご来店いただいております。
――店舗では奈良にまつわる本も人気だと伺いました。特に人気なのはどのような本でしょうか?
昨年末に発売された『日本の仏像はじまりの地 奈良の仏像115』(西日本出版社)が現在弊店では一番多く販売しております。写真ではなくイラストで仏像の特徴をまとめてあるためわかりやすく、エリアごとに鑑賞できる仏像をまとめられていて周辺の簡単な地図も載っているため、『奈良公園の案内書 ~極(きわみ)~』(KADOKAWA)と併せて近隣のお寺巡りや歴史散策に購入される方も多いようです。
また『奈良公園の案内書 ~極(きわみ)~』につきましても、発売から1年になるにも関わらず大変好評で先月も10冊以上販売しております! 内容は決して簡単な書籍ではないですし、旅先で買ったり持ち歩くにはB5判型でやや大きいのですが、中をじっくりご覧になったうえで旅行者の方にも多くお買い求めいただいています。本当に納得の良書なのだと思います。
そして『増補改訂版 奈良「地理・地名・地図」の謎 意外と知らない“まほろば”の歴史を読み解く!』(実業之日本社)は新書で購入しやすい価格帯なこともあり、老若男女を問わない弊店のロングセラー商品です。
――どの本も奈良の魅力が伝わる、奈良の地だからこそ手に取りたくなる本ですね! たくさんの作品をご紹介いただきありがとうございます。
加えて、啓林堂書店 奈良店ならではのお取り組みについても教えてください!
ゆったりと読書を愉しんでいただきたいという思いから、「書院 SHOIN」(https://shoin-keirindo.jp/)という滞在型ブックカフェを併設しています。「書院 SHOIN」のコンセプトは「頭と心、動く。」で、本に向き合うための空間作りがこだわりです。「籠」「書」「読」「囲」の4種類の席からお選びいただけます。
30分につき400円(税込)のご利用料金で、ドリンクの飲み放題、ご利用終了までの本の購入で1冊につき100円ずつご利用料金が割引になる「書院割」など、本をお楽しみいただくサービスをご用意しております。近鉄奈良駅から徒歩10秒ほどでアクセスも良いので、奈良にお越しの際は是非お立ち寄りください。
――“奈良”をテーマとした選書に加えて、滞在型ブックカフェも併設されているのが素敵ですね。30分400円(税込)でドリンクも飲み放題という、「今日は喫茶店ではなく、書院に行こう」と思えるような価格も魅力的です。
そんな啓林堂書店 奈良店で働くNMさんがおすすめしたい「今年読んでほしい小説」を教えてください!
『君の顔では泣けない』君嶋彼方(角川文庫)
若い人向けの青春小説かなと思い、軽い気持ちで手に取った自分を罵りたい。
ひょんなことから体が入れ替わった男女がそれぞれの生活に四苦八苦しながら協力し、試練を乗り越える。そして元の体に戻り、2人の絆は深まり恋に落ちて大団円、めでたしめでたし。「高校生男女入れ替わり物語」と聞いて想像する定番の展開はこんなところでしょうか。
では、もし元に戻れなかったら?『君の顔では泣けない』の陸とまなみは恋愛関係になることも、入れ替わった体が高校在学中に元に戻ることもありません。性別、性格、取り巻く環境……何もかも違う他人の人生を生きることの怖さ、昨日まで自分を形作っていたものをすべて失くすことの辛さ……まなみになった陸のリアルな体験と瑞々しい感情は、普通には想像し得ないことを私たちに突き付けてきます。
私たちは(おそらく)誰とも入れ替わることなく人生を終えるわけですが、2人の人生を読んで「自分の人生を生きる」ことについてきっと考えたくなると思います。
――「入れ替わり」をテーマとした作品はたくさんありますが、男性として生きてきた15年と、入れ替わって女性として生きることになった15年という、人生のifが描かれた本作はヒューマンドラマが好きな方にもぜひ手に取っていただきたい作品ですね。
素敵な作品をご紹介いただきありがとうございました!
最後に、カドブン読者へのメッセージをいただいてもよろしいでしょうか。
「すべてのブックライフに寄り添う」。これが、啓林堂書店が掲げるミッションです。リニューアルオープンから1年。どのようにして本との出会いをお届けできるか、本に触れていただけるのか……私たちはこれからも模索し、フェアやイベントをはじめ、様々な形で提供していきます。奈良へお越しの際は、ぜひとも啓林堂書店 奈良店にお立ち寄りください。
店舗情報
啓林堂書店 奈良店
住所:奈良県奈良市西御門町1-1
営業時間・定休日は公式ホームページをご確認ください。
公式ホームページ:https://www.books-keirindo.co.jp/
書誌情報
書 名:君の顔では泣けない
著 者:君嶋彼方
発売日:2024年06月13日
これぞ入れ替わりの真骨頂!圧倒的リアリティを激賞された受賞作、文庫化!
高校1年生の坂平陸は、ある日突然クラスメイトの水村まなみと体が入れ替わってしまう。どうやら一緒にプールに落ちたことがきっかけのようだ。突然のことに驚き、戸惑いながらも入れ替わったことはお互いだけの秘密にしようと決めた2人。しかし意外やそつなく坂平陸として立ち振る舞うまなみに対し、陸はうまく水村まなみとして振る舞えず、落ち込む日々が続く。まなみの家族との距離感、今まで話したこともなかったまなみの友達との会話、部活の顧問からのセクハラ……15年間、男子として生きてきた自分が、他人の人生を背負い女性として生きること。いつか元に戻れる日を諦めきれないまま、それでも陸は高校を卒業し上京、そして結婚、出産と、水村まなみとしての人生を歩んでいくことになる――入れ替わった後の15年を圧倒的なリアリティで描く、第12回小説野性時代新人賞受賞作!!
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