
2023年、必読の家族小説── 『かたばみ』レビュー【本が好き!×カドブン】
カドブン meets 本が好き!

『かたばみ』レビュー【本が好き!×カドブン】
書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
今回のベストレビューは、アーミーさんの『かたばみ』に決まりました。ありがとうございました。
理想の家族像をかたばみの花に見立てた、親子愛あふれる涙と笑いのホームドラマ
レビュアー:アーミーさん
物語は、太平洋戦争直前の頃。岐阜から上京し、日本女子体育専門学校で槍投げ選手として活躍していた山岡悌子の話から始まる。
悌子は槍投げ選手として期待もされていたが、怪我をしたのを機に選手を引退し、西東京で教師生活を始める。彼女は幼馴染みで早稲田大学野球部のエース神代清一に恋心を抱き、結婚するつもりでいたが、清一は悌子を幼馴染み以上に思う気はなく、親の進めるままに郷里の悌子の小学校時代の同級生と結婚してしまう。
その後悌子は失恋の痛手を負ったまま、教師という職業に没頭。下宿先の木村惣菜店の家族と心温まる交流を持ちながら生徒と向き合っていく。やがて戦中戦後の混乱のなか、悌子はよんどころない事情で家族をもつことになった…。
山岡悌子はがっしりした体格のスポーツ系女子。男子顔負けの体格と肩の力、度胸の良さを持ち、曲がったことが大嫌いな正義感の持ち主でもある。太平洋戦争の前後における、社会の変化は教育の場にも暗い影響を及ぼし、悌子はしばしば子どもたちに教えたい真の教育と、国から押し付けられる理想教育とのギャップと戦わねばならなかった。
楚々としたたおやかな女性が、女性として賛美されることが多い中、スポーツマンタイプの悌子は、「守ってあげたい女性」ではない。だが、初恋の人の血を引く清太をわが子として慈しみ、大事に育てる優しさを持っていた。子育てや子どもに対する愛情のかけ方は、本当の意味での女性らしさ、母親らしさをもっていたと言っても過言ではないだろう。
血の繋がりがある集団だけが「家族」ではない。子どものためになることを思い、また子どもも大人のことを思っている「集まり」。それが本当の意味で「家族」と呼べるのではないだろうか。
太平洋戦争によって登場人物たちの運命が大きく変わる作品だが、そんな運命に負けずに生きていく人々の様子が生き生きと描かれていた。特にタフな強さを持ち、ユーモアを交えて生きている悌子と権蔵の夫婦は印象深い。
どん底な境遇を描きながらも笑いを誘う木内さんの作品は、教育問題と親子の愛情問題も考えさせられ、お互いを尊重して夫婦として生きる悌子と権蔵の懐の深さを思い知るホームドラマだった。
▼アーミーさんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no12351/index.html
書誌情報
かたばみ
著者 木内 昇
発売日:2023年08月04日
2023年、必読の家族小説
「家族に挫折したら、どうすればいいんですか?」
太平洋戦争直前、故郷の岐阜から上京し、日本女子体育専門学校で槍投げ選手として活躍していた山岡悌子は、肩を壊したのをきっかけに引退し、国民学校の代用教員となった。西東京の小金井で教師生活を始めた悌子は、幼馴染みで早稲田大学野球部のエース神代清一と結婚するつもりでいたが、恋に破れ、下宿先の家族に見守られながら生徒と向き合っていく。やがて、女性の生き方もままならない戦後の混乱と高度成長期の中、よんどころない事情で家族を持った悌子の行く末は……。
新聞連載時から大反響! 感動という言葉では足りない、2023年を代表する傑作の誕生
「気がつくと頭の中で物語が映像化されている。登場人物たちと共に生活を営んでいるように思えてくる。見事な描写力である。「血縁が家族を作るのではない。人間は善なのだ」……作者のそんなつぶやきが聞こえてきそうな、心温まる傑作」 ――作家・小池真理子
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