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連載

カドブン meets 本が好き! vol.28

どこにでもいる家族の、でもちょっと違う家族の形。『ははのれんあい』【本が好き!×カドブン】

カドブン meets 本が好き!

書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
先月のベストレビュー>>人間性が感じられる言葉の深み。『ジブリの鈴木さんに聞いた仕事の名言。』【本が好き!×カドブン】

第28回のベストレビューは、 michakoさんの『ははのれんあい』に決まりました。 michakoさん、ありがとうございました。


書影

『ははのれんあい』
※画像タップでAmazonページに移動します。


どこにでもいる家族の、でもちょっと違う家族の形。

レビュアー:michako さん

控えめで喋らない男性・智久と、同じように奥手で口数の少ない由紀子が出会い、近くの公園に出掛けるというデートを繰り返し結婚。
智久は両親と3人で縫製の仕事をしており、結婚してからは由紀子も加わり4人でミシンを踏む日々になった。
カタカタカタ…それはとても幸せな響きだった。

『結婚』とはとても大きなもので。
結婚する時は夢中であまり気付かないがそれが1回うまく行かなくなり始めると、実は多くの人を巻き込んでいるのだとようやく気付くものなのかもしれない。
由紀子の結婚は慎ましく、でも夫に温かな義父母と優しさに溢れていた。
長男・智晴(ちはる)が誕生し、それでも由紀子は早くまた4人でミシンを踏みたいと思っていたが、縫製の仕事が減り智久もタクシー運転手に職を変えなければならなくなった。
決定的な何かがあったわけではない。少しずつ生活が変わっていく。
次の妊娠で双子を授かった事がわかり、また忙しさが倍増していく。
それでも生活は容赦がなく、食べさせる、清潔にするなど安定した毎日を子どもに送らせようと努力すればするほど、体は動きながら自分が何しているのかわからない程疲弊している毎日。
由紀子は家事をこなしながら自力で仕事を見つけ小さい子ども達を保育園に預けるが、一方の智久は…

なんかなぁ『紙一重』なんだなぁと何度も思った。
智久は週に1回家に帰らない日ができるようになり、このあからさまなところアホだなぁ、ルール違反だよなぁとは思う。
希望が持てなくなったとか、妻に合わせる顔がないとか、それでいてまだ小さい子を預けて働くなんてとか、でも稼ぎが少ないのは自分のせいで負い目があるとか・・・
まぁ、そんな心の隙間を誰かに埋めて欲しかったのでしょうが。ズルいなぁ。言わないんだもの、なんにも。
しかも上手に隠すこともできないなんて何考えてるんだろうなぁと思う。
うん、でもまぁそれが智久という人なんでしょうね。
ちょっとした挫折感から家に居場所がないように感じていくというのは、誰にでも起きうる感覚だと思う。

5人家族が4人になって一番割を喰ったのは長男の智晴。
外で働く母に変わって家事を引き受け、弟たちの面倒もみる。
関東圏の田舎が智晴たちの暮らす場所で、大きな娯楽はなく町もとても閉鎖的。
両親が離婚してそれでも父親は新しい家族と同じ町に住んでいるというだけでも嫌なのに、智晴は父の再婚相手の娘と高校で同じクラスになってしまう。

作品は二部構成で、一部は由紀子、二部は智晴の「はは」の姿が描かれる。
ただ、衝撃的な大事件は何一つ起こらない。
夫の不倫、両親の老い、死別、息子たちそれぞれの家族への想いなど「この感じわかるなぁ」という、言い方は雑になりますがとてもありふれた日常の話。
それが飽きさせることなく読ませてくれた。
「ははのれんあい」というタイトルも、恋愛を描いてるとはずっと思えなかったが、読み終えてなんとなくひらがな表記にも腑に落ちるものがあった。
どんな形でも家族は家族。
でもねぇ、今まで一緒に暮らしていたのにその形を変えて無理を通すわけだから必ずそのしわ寄せを喰らう人が出るんだってことしっかり承知していないとですね。
「どんな形でも家族は家族」この言葉だって智晴が成長してくれたから実感してくれた言葉だもんね。
不貞腐れもせず、グレもせず、母役を背負って。頑張ったなぁ。
ラストは早朝、蓮の蕾の開くちりん、ちりんという静かな音がいい余韻を残してくれた。

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▼書籍の詳細はこちら
https://www.kadokawa.co.jp/product/321612000240/
▼michakoさんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no216/index.html


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