menu
menu

レビュー

ファンタジックな謎がちりばめられたラブストーリー! 期待の新星作家による、最旬タイBL小説『My Imaginary Boyfriend』

書評家・作家・専門家が新刊をご紹介! 
本選びにお役立てください。

My Imaginary Boyfriend(マイ イマジナリー ボーイフレンド)
著者 Patrick Rangsimant


『My Imaginary Boyfriend(マイ イマジナリー ボーイフレンド)』 カバー画像

My Imaginary Boyfriend
著者 Patrick Rangsimant
翻訳 イーブン美奈子
イラスト 楔ケリ


ファンタジックな謎がちりばめられたラブストーリー!期待の新星作家による、最旬タイBL小説

評者・高倉優子

 2020年に巻き起こったタイBLのブームは2022年になった今もなお続き、タイBLドラマにどハマリする状態を「タイ沼」と呼ぶなど、ブームを超えたジャンルとしてしっかり根付いてきたことを実感する。

 ドラマ原作をはじめとする人気作が続々と日本語訳されているが、今回は、期待の新星・現役医師でもあるパトリック・ランシマン氏の翻訳版第2弾『My Imaginary Boyfriend(マイ イマジナリー ボーイフレンド)』を紹介したい。

 タイ本国でドラマ化された前作『My Ride, I Love You』は、研修医とバイクタクシー運転手のピュアすぎる恋模様を描いた恋愛小説だったが、今作は、サスペンスの要素も加わったファンタジックなラブストーリーとなっている。


 不慮の事故で父親を亡くした5歳のパーイは、近所の公園で少年クロンと出会う。親しくなったふたりだったが、じつは彼はパーイにしか見えない「イマジナリーフレンド(空想上の友達)」だった。ところが、クロンはパーイの前からある日突然姿を消してしまう。22年後、研修医になったパーイがチェンマイからバンコクに戻ったのを機に、再び現れたクロン。やがてふたりは共に暮らし、愛し合うようになるが、次第にパーイの日常に奇妙で不可思議なことが起こり始めて……。


 そもそも「イマジナリーフレンド」とは、心理学・精神医学上の現象のこと。本人の空想上だけに存在する人物で、成長するにつれ消滅することが多いといわれている。著者は、その存在に着目し、さらに医師ならではの知識と経験をふんだんに盛り込んで極上のエンターテイメント作品に仕上げたのだ。

 幼い頃そばにいたイマジナリーフレンドが再びパーイの前に現れた理由とは? 空想上の人物であるにもかかわらず、パーイの日常に影響を及ぼすのはなぜか? などなど、張り巡らされた謎が気になってページをめくる手が止められない。そして、最後の最後までどうなるのかわからない展開が続き、ドキドキが止まらないのだ。

 同僚に「スティッチのようだ」とからかわれる小柄なパーイに反し、クロンは「意志が強そうな、力強い眉」「彫刻のような整った顔立ち」というイケメン(楔ケリさんの素敵なイラスト参照)。

 完璧なイケメンでありながら実体がないというハンデを負ったクロンの描かれ方がとても興味深い。あるときは嫉妬に狂い、あるときは悲観に暮れる。ある意味、人間らしい人物なのだ。

 そして彼に相対するパーイもまた迷いながらもクロンを愛し続けることを諦めない、強さと優しさとたくましさを持っている。

 子ども時代にふたりが一緒に読んだ『美女と野獣』の絵本になぞらえ、「野獣の王子は、誰かを愛してもいいの? そして、ベルのような美しい普通の人が、野獣の国の王子を愛することなんてできる?」と、クロンが問いかけた際のパーイの答えが心に刺さった。

「恋は人を盲目になんかしない。人の目を覚まさせるんだ。恋をすると、自分自身が見える。自分の立っている場所が見える。目の前の全てが見えるようになる。自分の心の内側も……。僕が思うのは、野獣の王子が何であれ、きっと、ベルは変わらずに野獣の王子を愛するということ。僕を信じて……」

 彼らはやや特殊な状況下に置かれている。けれど、相手にとって自分はふさわしいのかという迷いや、幸せすぎて不安になったり、愛している相手を疑ってしまったりする気持ち、また試練を乗り越えて愛を全うする勇気など、恋愛の渦中にある人はもちろん、恋をしたことのある人なら共感できる感情が満載なのだ。

 恋の切なさと尊さを噛みしめながら読み進むうち、文字通り、あっと驚く結末が訪れる。とにかく巧い。なるほどねと心から納得した。

 タイBL小説のコアなファンも、初めて読むという方にも大満足の読後感が満ちることをお約束したい。

作品紹介



My Imaginary Boyfriend
著者 Patrick Rangsimant
翻訳 イーブン美奈子
イラスト 楔ケリ
定価: 1,760円(本体1,600円+税)
発売日:2022年03月01日

この恋は空想か現実か――話題のタイBL小説見参!
父親を亡くしたパーイが子供のころに出会った友達「クロン」。クロンはなぜかパーイにしか見えない「空想上の友達」だった。しかし、ある日クロンは忽然といなくなる。
失意のパーイだったが、それから22年の時が流れ、パーイは研修医となる。そして、ある日運命の出会いかのように初めて会った公園で再会する二人。
オトナになった二人は、お互い愛し合いつつも、それは空想上の世界だけにとどまらず、現実の世界までを侵食していくーー。

イラストは、「My Ride, I Love You」に続いて、楔ケリ先生が担当します!
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322011000556/
amazonページはこちら

こちらの記事もおすすめ!



タイBL『Grab a Bite』香り高いタイ料理に導かれた二人が摑む愛と未来
https://kadobun.jp/feature/readings/entry-43689.html



売上げランキング1位獲得! タイBL『Manner of Death』人気の理由にせまる
https://kadobun.jp/feature/readings/9a1p2c3m988w.html



タイ発のブロマンス調BL小説!  優しさ成分で構成されたピュアなラブストーリー【『My Ride, I Love You(マイライド アイラブユー)』レビュー】
https://kadobun.jp/reviews/entry-42721.html



「与える」ことを学び、「愛する」ことを選ぶ――『A Tale of Thousand Stars』書評
https://kadobun.jp/reviews/dtgkkeo1c288.html



タイBL『The Red Thread』甘く切ない恋模様と骨太なストーリーの魅力を読み解く
https://kadobun.jp/reviews/entry-41897.html


関連書籍

新着コンテンツ

もっとみる

NEWS

もっとみる

PICK UP

  • ヘルドッグス特設
  • カドブンブックコンシェルジュ ~編集部があなたにぴったりの本をご提案します~ 【編集部おすすめ小説記事まとめ】

MAGAZINES

小説 野性時代

最新号
2022年10月号

9月25日 発売

ダ・ヴィンチ

最新号
2022年11月号

10月6日 発売

怪と幽

最新号
Vol.011

8月31日 発売

ランキング

書籍週間ランキング

1

1と0と加藤シゲアキ

文・編 加藤シゲアキ

2

先生日誌1 ほむら先生はたぶんモテない

著者 せかねこ

3

アンクールな人生

著者 弘中綾香

4

濱地健三郎の呪える事件簿

著者 有栖川有栖

5

がんばれ! コッペパンわに2

著者

6

マダムたちのルームシェア

著者 sekokoseko

2022年9月25日 - 2022年10月2日 紀伊國屋書店調べ

もっとみる

レビューランキング

TOP