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レビュー

タイ発のブロマンス調BL小説!  優しさ成分で構成されたピュアなラブストーリー【『My Ride, I Love You(マイライド アイラブユー)』レビュー】

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My Ride, I Love You
著者 Patrick Rangsimant


My Ride, I Love You 上


タイ発のブロマンス調BL小説! 
優しさ成分で構成されたピュアなラブストーリー

評者・高倉優子

「タイのBL小説が熱い」「ドラマも映画もすごく面白い」と、チラホラ聞いてはいた。SNSで話題になっているのも知っていた。でも……。なぜかすぐに手が出なかった。もともと熱狂的なBL小説の愛読者ではないし、そもそもタイには行ったことがなく、韓流や華流のように馴染みがなかったせいもある。

だから本書『My Ride, I Love You(マイライド アイラブユー)』は、割とまっさらな気持ちで読んだ。

そして、驚いた。「なんて面白いの!」「なんて優しい世界観なの!」と。ページをめくる手が止められず、上下巻を数時間で読み終えてしまったほどだ。そして読後、あたたかい気持ちで満たされた。こんなに幸福な読書は久しぶりだった。


まずは、あらすじを紹介しよう。


研修医のタワンは、先輩のポーから告白を受けて恋人同士になった。ある夜、ポーの住むコンドミニアムへ行くためバイクタクシーに乗ったことをきっかけに、年下のドライバー・モークと知り合う。何度か利用するうちすっかり意気投合した二人は、互いに相手のことが気になり始めて……。

タワンは三兄弟の真ん中で兄も医学部、弟も医学部を受験予定という、いわゆるエリート家系。けれど選民意識などはなく、誰にでも平等で優しい。研修医のため、寝食を忘れるほどのハードな毎日を過ごしている。

一方のモークは、地方の職業訓練校(中学修了後3年間の課程)を卒業後、恋人(女の子)と一緒に、バンコクへ上京してきたものの破局。同性婚をするアー叔父とルン伯父の家に身を寄せ、バイクタクシーの運転手としてなんとか生計を立てている。

職業もセクシャリティーも異なる二人の人生が、大都会バンコクのソイ(脇道)で思いがけず交差したことから始まるラブストーリーなのだ。

もともと女性が好きだったモークは、同性のタワンに惹かれていることに戸惑い、悩む。

〈僕は先生のことが好きなのか?
もしそうなら、僕はどうなってしまったんだろう。
僕はゲイなのか、それともノーマルなのか?〉

身近には相談に乗ってくれる伯父たちもいるが、そこは現代っ子。グーグルで検索し、自分と同じような経験をしたメークという人のページにたどりつき、救われる。

〈人を好きになる気持ちに名前をつけないでください。
人と人の関係にルールを作らないでください。
見えない檻の中に、自分の気持ちを押し込めたりしないでください。
(中略)もう二〇一八年ですから、性別を気にする時代じゃありません。
好きなら好きだと、自分の気持ちを認めましょう〉

さらに作中で、メークが恋人のエーム医師と共著したという本『あなたがゲイでも なるようになる』に登場する文章も素敵だったので、あわせて紹介したい。

〈あなたがその人に愛を与えたとしても、あなたとその人との関係が変わることはないかもしれない。
でも、その人を元気にしてあげることはできる。
そしてその人のためになにかをすることで、あなた自身も幸せになることができる。
それこそが、「片思い人」がやるべきただ一つのことだ〉

恋愛で悩む人の心を癒してくれるメッセージが随所にちりばめられているのも本書の魅力。マーカーを引きたくなるような言葉がいっぱいなのだ。まさに、優しさ成分で構成された小説といえる。

さまざまな人たちからの励ましの言葉に背中を押されたモークが、タワンのためにしてあげることとは? さらに、タワンが選択する未来とは――? 

ぜひ本編を読んで、二人の恋の行方を見届けてほしい。

ちなみに、本作は男同士の厚い友情もの「ブロマンス」の延長線上にあるような恋愛小説であり、濃厚なラブシーンやベッドシーンは登場しない。

それは著者であり自身も医師であるパトリック・ランシマン氏のひとつのこだわりでもある。某インタビューで彼は「直接的な性描写がなくても読み手にときめきや切なさを感じさせることができるはず」と語っていたが、確かに想像力を持って読書が楽しめる「余白」と「品格」がある小説だと思う。

また、彼自身が医師だからこそ、タワンが懸命に働く姿や、「医師だってミスもすれば失恋もする」という人間味の部分をリアリティーたっぷりに描けるのだろう。恋愛小説としてだけでなく、職業小説としての一面があるため、厚みのある物語になっているのだ。

さらに読み進めると、仏教の教えに根ざしたタイの文化や風習についての理解が深まるし、日本との文化的共通点が多いことも新鮮な発見だった。たとえば作中で、二人の仲が急速に近づくきっかけとなったお祭り「ローイクラトン」では、灯籠(クラトン)に願いを書いて川に流すのだが、これは日本の精霊流しとよく似ている。

本書を読むまでは遠かったタイという国を、今は身近に感じている。作中にも登場した「ホーイトート」や「カーオマンガイ」を本場でも食べてみたいし、コロナが明けたらぜひ行ってみたい。いや、絶対に行こう。

最後になったが、本作はタイでのドラマ化も決定しているそうだ。続編も刊行されているとのこと。映像や小説で、またこの優しい世界観に触れられると思うと、今からとても楽しみだ。

作品紹介『My Ride, I Love You(マイライド アイラブユー)』




My Ride, I Love You 上・下
著者 Patrick Rangsimant 翻訳 宇戸 優美子 カバーイラスト 楔ケリ
定価: 1,650円(本体1,500円+税)
発売日:2021年11月01日

タイBLドラマ化進行中!バイクタクシーと医者が織りなす恋の行方とは…?
ドラマ化も決定している話題のタイBL作品!研修医であるタワンは、先輩のポーと再会をし、晴れて恋人同士となる。ポーの家に行くためにバイクタクシーを拾うが、その運転手が年下のモークだった。ただのお客と運転手の関係に過ぎなかった二人だったが、お互いを理解し合ううちにいつしか大切な存在に。モークは医者であるタワンと自分が釣り合うのか悩むが……。
イラストは、楔ケリ先生が担当。上下巻それぞれを描きおろし、世界観を華麗に描きます。
詳細:
(上)https://www.kadokawa.co.jp/product/322011000557/ 
(下)https://www.kadokawa.co.jp/product/322011000558/
amazonページはこちら

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