KADOKAWA Group
menu
menu

レビュー

【レビュアー:中江有里】心がざわつく「あひる」の姿が、読み終わった後も脳裏に浮かんできます。

 以前の住まいの近所であひるを飼っている家を見かけ「あひるって飼えるんだ」と思ったことがある。本書の「わたし」の家であひるを飼い始めると、近所の小学生が遊びに来るようになる。「のりたま」と名付けられたあひるを巡る平和で穏やかな日々。しかしあひるの不調が物語に影を落としていく。
 入れ替わっていく「のりたま」、何かを祈り続ける家族、でも本当のことを誰も口にしない……一つの嘘を飲み込んでしまうと、二つ目も三つめも飲んでしまう「わたし」。
 本書の「あひる」とはいったい何なのだろう。白い羽に黄色いくちばし、もしかしたら「あひる」はたいていの人が思い描くあの「あひる」とは違うのかもしれない。ひたすらに愛を傾けられる存在は、新たなる愛の対象があらわれると存在意義を失う。愛されなくなった「あひる」の行方はわからないし、家族のその後を知るのも怖い。もしかしてあの近所の家も……? と、思い返している。


書誌情報はこちら>>今村夏子『あひる』


紹介した書籍

関連書籍

新着コンテンツ

もっとみる

NEWS

もっとみる

PICK UP

  • ブックコンシェルジュ
  • 「カドブン」note出張所

MAGAZINES

小説 野性時代

最新号
2025年3月号

2月25日 発売

ダ・ヴィンチ

最新号
2025年3月号

2月6日 発売

怪と幽

最新号
Vol.018

12月10日 発売

ランキング

書籍週間ランキング

1

気になってる人が男じゃなかった VOL.3

著者 新井すみこ

2

はじまりと おわりと はじまりと ―まだ見ぬままになった弟子へ―

著者 川西賢志郎

3

今日もネコ様の圧が強い

著者 うぐいす歌子

4

地雷グリコ

著者 青崎有吾

5

ただ君に幸あらんことを

著者 ニシダ

6

雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら

著者 東畑開人

2025年2月17日 - 2025年2月23日 紀伊國屋書店調べ

もっとみる

レビューランキング

TOP