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レビュー

中国古典で最先端ビジネス論が学べる!? 紀元前400年から届いた、目的思考のメソッド『墨子』

【カドブンレビュー】


カドブンでレビューさせていただく本を選ぶときはいつも、私がゲームを扱う仕事をしていることもあり、「なぜこの本は面白いのか」ということを自分に問うてみたく、物語を中心に選定していた。だが今回は、「驚くほど現代的な『幻の』中国思想とは?」というキャッチフレーズに惹かれ、もしかすると今の仕事を進める上でも何か参考になるところがあるのではと思い、『墨子』を選んだ。

中国思想といえば『儒教』や『論語』などの概要を知っている程度で、きちんと読んだことがなく、果たして理解できるだろうかと正直少し不安なところもあった。だが、読後の感想としてはチャレンジしてみて非常に良かったと思っている。なぜなら、仕事はもちろん、人生の指針になるような『墨子』のポリシーが分かりやすく書かれていたからだ!

さて前置きが長くなったが、『墨子』とは、どんな思想なのだろうか。

この本では、『墨子』の解釈を通して、国家安寧に向けての考え方や、儒家の思想との対比、当時の物理科学をどのように捉えていたのかなど、幅広い分野における物事のとらえ方が書かれている。

その中でも、有能な人材の登用の考え方が、私にとっては一番実践的な箇所であったと思う。今、私は比較的人数の多い組織で仕事をしている。あえて私の課題をあげるならば、誰をマネージャーに推薦すべきか、私がマネージャーとどのように接すると組織にとって良い結果を出せるのか、だろう。人事に関する問いは正解がなく難しい。

そんな問いを持つ私にこの本は、そもそも有能な人材とはどういう人か、どのような権限を与えるべきなのかと、まるで『墨子』が目の前で教えを説いてくれるかのように考えが書かれていた。2400年以上前に考えられた人材登用論を、まさに明日から活きる内容として学べているのは、非常に面白い感覚であった。

人材登用はもちろん、コーチングや目標設定の考え方など、人事関連は目まぐるしく研究が進んでいる。最新の考えをキャッチアップしながら学ぶことももちろん興味深い。だが、何を学ぶべきかピンポイントで分かっている方には、明日から活かせるという観点で、普遍的な考え方が体系的に書かれている『墨子』がおすすめの一冊だ。

文字数の関係上、ここでは書ききれないが、5章の「徹底した節約思考」も興味深い。単なる知識の拡充だけではなく、実生活に活きる考えを学ぶことができると思うので、気構えず、手にとっていただくことを願いたい。

>>草野友子『墨子 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典』
>>「ビギナーズ・クラシックス 中国の古典」一覧へ


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