もし、他人の心の声が聞きたくもないのに聞こえてしまったら――。絶賛発売中の『次期風紀委員長の深見先輩は間違いなく病気』は、心の声が聞こえる女子と妄想爆発系男子が繰り広げる、微笑ましくも切ないラブストーリーです。
そんな本作について、SNS上で今若い女性たちから圧倒的支持を得ているカフカ(@kafuka_monchi)氏が感想をTwitterで呟いてくださいました。
フォロワー数約16万人の恋愛インフルエンサー・ カフカ氏は本作をどう読んだのか?特別に転載の許可をいただきました!
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人は自分の心以外、他人の本当の心の中まで知ることはできない。
たとえば、相手の本当の心を知りたいと思うことはあっても、その真実が、時に残酷な真実なら心の声なんて聞こえないほうがいい。
本書、『次期風紀委員長の深見先輩は間違いなく病気』の主人公、石崎鏡花はごく普通の高校一年生。ただひとつ、人と違うところは他人の心の声が聞こえてしまうこと。
そして、その声は自分が望んだ声に限らず、ある時には聞きたくもない声を聞いてしまうこともある。そのことが終始、この物語の重要なキーポイントになる。
人は本音と建前を持って生きている。
それは社会を円滑に生きるひとつの処世術と言ってもいい。
本当は自分の意見に合わない、または反対の気持ちであっても、角が立たないように笑顔で相手に合わせ、その場を何とか取り繕おうとする。
もし、相手の本当の心、本音が聞きたくもないのに聞こえてしまったなら、その心の声はナイフのように自分の胸に突き刺さるのではないだろうか。
相手の心が分かってしまう。本音が見えてしまう。
それは多感な高校一年の女の子にとって、心楽しいことばかりではないだろう。
生まれつき心の声が聞こえてしまうことによって、主人公、石崎鏡花の家庭環境は普通の生活とは違ったものになる。母親にはその能力を恐れられ、父親とも距離を置かれ、普通の家族という形は崩壊してしまう。またその能力ゆえに自分の心を閉ざしてしまい、友達と呼べる存在もいない。そのため鏡花は人との距離を置きながら、中学卒業と共に一人暮らしを始め、親からの仕送りはあるものの十分ではなく、アルバイトで生活費を稼ぎ、コンビニの廃棄弁当を食べるなど、細々とした生活を送っている。
そして、鏡花は風紀委員会に入ることになる。それは学校の特待生制度を活用し、学費を浮かすため、また勉強とアルバイトをするために、放課後に残る仕事が少ないことも鏡花が風紀委員を選んだ理由でもある。
その風紀委員会で鏡花はひとつ年上の先輩である深見透悟と出会う。
常に冷静沈着で、いわゆるイケメン眼鏡男子の深見は鏡花を一目見た瞬間に「絶対に俺の天使だ。天使が俺のもとに舞い降りた!」と心の声で叫んでしまう。その偏愛的、変態的とも言える心の声はすべて鏡花にダダ漏れで、自分の心の声を聞かれていることを知らない深見先輩を鏡花は、「危ない人」と一定の距離を置こうと心に決める。鏡花への溢れるほどの心の声のあり様と、そんな態度を決して表に出さず、クールな深見先輩のギャップがこの物語の面白みでもある。
恋愛とは常に一方的なものであると思う。
片想いなら尚更その気持ちは自分勝手で、時にその気持ちを相手に押し付けてしまうことがある。けれど人を好きになる、その真っ直ぐな気持ちはどんな場合であっても尊いものだ。
もし、鏡花が心の声を聞くことができなかったなら、もっと普通の高校生として恋愛を楽しめたかもしれない。けれど、心の声が聞こえてしまうことで、たとえ偏愛的な愛であっても、嘘のない真っ直ぐな心を、鏡花は痛いほど受け止め、感じ、向き合うことになる。
そして、その大きく聞こえる心の声はやがて、閉ざしがちだった鏡花の心をも溶かしていく。
誰かを強く想うこと。
その狂おしく愛おしいまでの愛の形を、読者は時に微笑ましく、また時に切なく胸に感じながら、この物語の世界に浸ることになるだろう。
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https://www.kadokawa.co.jp/product/321905000426/(KADOKAWAオフィシャルページ)
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