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【イベントレポート】直島翔原作「テミスの不確かな法廷」ドラマ化取材会に潜入!

2025年11月に角川文庫から発売された直島翔氏『テミスの不確かな法廷』のNHKドラマ10での連続ドラマ化が決定。その取材会が12月12日に行われ、主演の松山ケンイチさんの他、鳴海唯さん、遠藤憲一さんが登場した。豪華キャスト陣が語った撮影の裏側、そしてドラマへの想いをリポートする。

文/タカザワケンジ

松山ケンイチ、鳴海唯、遠藤憲一らが語るドラマへの想い

 松山ケンイチさん主演の連続ドラマ『テミスの不確かな法廷』(NHK総合で2026年1月6日からスタート)の記者会見が開かれた。
 原作は直島翔さんの同名小説。主人公は裁判官、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の特性を持ちながら、それを周囲には明かしていないという設定だ。記者発表には松山さんのほか、共演の鳴海唯さん、遠藤憲一さん、制作統括の神林伸太郎さんが出席した。

『テミスの不確かな法廷』は2024年にKADOKAWAから刊行された連作ミステリ。シリーズ2作目の『テミスの不確かな法廷 再審の証人』が12月22日に発売される。
 主人公の安堂清春は特例判事補。安堂には周囲に言っていないことがあった。ASDとADHDの特性を持っていること。原作ではままならない脳の動きに翻弄されながらも、「普通」に見えるように自分の行動を抑制しようと日々、努力している。そんな彼の前に現れる事件とは──。

 原作者の直島翔さんは2021年に『転がる検事に苔むさず』で第3回警察小説大賞を受賞し作家デビュー。新聞社勤務の直島さんは司法記者だった経験を生かして、これまで検事や警察医を主人公にしたミステリを発表してきた。『テミスの不確かな法廷』は直島さんにとって初の裁判官を主人公にした作品で、ドラマ化も初となる。

 会見で制作統括の神林さんは原作をドラマ化しようと考えた理由についてこう語った。
「原作を読んで感動したんですが、その感動は、主人公がASD、ADHDをカミングアウトしていないという独自性にあると気付きました。これまでも発達障害をお持ちの方を描いたドラマはありましたが、多くの場合、周囲はそのことを知っている状態で、社会とどう向き合っていくかが描かれていました。では、安堂のようにカミングアウトしていない状態で、どうやって社会と向き合っていくのか。発達障害に限らず、悩みを周囲に打ち明けられないまま社会と向き合っていく人は多いと思いますし、息苦しさを感じているのではないでしょうか。そういう人たちに繋がるようなドラマになれば大きな広がりを持つと思いました」

 特性を持った主人公、しかも裁判官であり、周囲にはその特性を悟られないように努めている。そんな難役について、松山ケンイチさんはこう語る。
「グループケアの現場で当事者の方からお話しをうかがう機会を持てました。現場ではスタッフのみなさんと安堂ノートをつくって、服装や仕草、苦手なこと、好きなことを共有しています。ただ、それを守っているだけだとロボットのようになってしまうので、隙間を見つけてここはこうできるんじゃないかと現場で話し合いながらやっています」

 安堂と法廷で向き合う弁護士、小野崎乃亜役は鳴海唯さん。東京の大手法律事務所で働いていたものの挫折し、前橋にやってきた。鳴海さんは芝居巧者が揃った現場で「自分が想像もしていなかったようなお芝居に驚かされながら、私も頑張ってそれに応えなきゃという思いでお芝居させてもらってます」と緊張気味に述べた。

 安堂の上司、門倉茂役を演じる遠藤憲一さん。かつては「伝説の反逆児」だったが、いまは安堂を見守る立場。難解なセリフから「法廷ものは手を出すのはやめようとずっと思っていた」ものの、「台本が読み物としてすごく面白い」と語った。ギターを弾きながらロックを歌うシーンもあり、遠藤さんのこれまでにない一面を見ることができそうだ。

 チーフ演出は高い評価を受けた『宙わたる教室』の吉川久岳さん。脚本は『イチケイのカラス』シリーズ、『絶対零度』シリーズなどの浜田秀哉さん。撮影現場は『宙わたる教室』チームらしく、リアリティの追求と、映像へのこだわりが貫かれているとか。「普通」って何だ? という問いを底流に、人の世のままならない事件を通してリアルなヒューマンドラマが展開されることが期待できそうだ。


NHKドラマ10「テミスの不確かな法廷」第1話より


ドラマ情報

ドラマ10「テミスの不確かな法廷」
2026年1月6日(火)放送開始予定(全8話)
NHK総合 毎週火曜 夜10:00~
出演:
松山ケンイチ  鳴海唯 恒松祐里 山崎樹範
市川実日子/和久井映見 遠藤憲一 ほか
脚本:浜田秀哉
音楽:jizue
演出:吉川久岳(ランプ)、山下和徳、相良健一、富澤昭文
制作統括: 橋立聖史(ランプ)、神林伸太郎(NHKエンタープライズ)、渡辺悟(NHK)

https://www.nhk.jp/g/ts/32VWPKM6NX/

原作紹介



書誌情報

書名:テミスの不確かな法廷
著者:直島 翔
発売日:2025年11月25日

社会に交わり、ままならぬ心身と向き合い罪を裁く。青春×リーガルミステリ
任官七年目の裁判官、安堂清春は幼い頃に発達障害と診断され、周囲との関わりを断ち、自身の特性を隠しながら日々を過ごしていた。Y地裁に赴任して半年、副市長が襲われた傷害事件を担当することになった安堂は、弁護士の小野崎から被告人が無言を貫いていると聞き、何かを隠しているのではないかと気づくが……。微笑みながら殺人を告白する教師、娘は殺されたと主張する父親。生きづらさを抱えた青年が様々な事件に挑む、異色の青春リーガルミステリ!

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322505000521/

著者プロフィール

直島 翔(なおしま・しょう)
1964年、宮崎県生まれ。立教大学社会学部卒業。新聞社勤務。社会部時代、検察庁など司法を担当し、『転がる検事に苔むさず』で第3回警察小説大賞を受賞し作家デビュー。その他の著書に『恋する検事はわきまえない』『警察医のコード』がある。


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