【カドブンレビュー9月号】
本多孝好さんの本、ハッキリ言ってめちゃめちゃ好きです!
今まで17の作品を出されていますが、30冊は買っているはず。
足し算引き算、というより掛け算ではどうやっても計算があいませんが、なんてことはありません。
人にプレゼントしたり、古本屋で見つけるとついつい買ってしまうんです。
本多さんの話から一旦それますが、森博嗣さんの「スカイ・クロラ」シリーズ2作目、『ナ・バ・テア』文庫版の解説で、よしもとばななさんがこんなことを書いています(森的小説の解説ランキング TOP3に入ります!)。
私が信用できると感じる人は、必ず何らかのオブセッションを持っています。 それは同じモチーフが何回も創作の中に出てくるということでもあります。その場面をどうしてだか書いてしまう、その瞬間を書きたくてどうしても出てきてしまう、そういうようなものがない人は、別に創作をしなくても生きていける人なのです。
よしもとばななさんに右に倣うのは大変に恐縮なのですが、ぼくも全く同じ気持ちです。
そして、ぼくにとってオブセッションを感じる作家さんが本多孝好さんなのです。
本多さんの作品ではよく人が死にます。
印象の薄い脇役や名前の出てこないその他大勢の人が死ぬのではなく、
主人公にとってかけがえのない存在、大きな意味を持った人が死にます。
そしてご多分にもれず、今作 "dele" でも人は死に、むしろ死んだところから物語がはじまります。
「死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除する」
こんなすごく今っぽい、ただし、誰かが死んだ時にはじまる仕事をする佑太郎と啓司の二人。
ー犯した罪の証拠、異性の写真、隠し金。ー
妹の死を経験したことのある佑太郎は、淡々と故人の削除依頼を遂行していく啓司のやり方に疑問を持ち、遺される人のために、故人が消してほしいと願った秘密のファイルを覗こうとします。
そして覗いてしまったがゆえに、事件に巻き込まれる二人。
遺された人間のための行動。死んだ故人のための行動。
正解も、どっちが良い悪いももちろんないけれど、それぞれの行動が結局重なっていくことで優しい気持ちになれる本です。
死ぬ時、自分だったら何を削除してほしいだろう? そう考えはじめたら、
人に『自分がどう思われたいと思っているか』がわかりました。
それは裏返すとそのままの自分は『人に見られたくない』ということなので、
今以上に後ろめたいところのない生き方をしなきゃな、と思うとともに、
「近々PCとケータイのデータは整理しよう」と強く思った次第です。
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