圧巻の王道警察小説!
『刑事の枷』堂場瞬一
角川文庫の巻末に収録されている「解説」を特別公開!
本選びにお役立てください。
『刑事の枷』文庫巻末解説
解説
タフでなければ生きていけないって、本当かい。
『刑事の枷』は二〇二一年一月にKADOKAWAより単行本として刊行された長編小説だ。物語の舞台は
影山はふだん警察署にいる事は
一匹狼の刑事とコンビを組み、若手刑事が振り回される。警察小説というジャンルにおける定型を踏襲した物語であると、表面上は
話を戻そう。『刑事の枷』における影山康平も、一見すると典型的なワンマンアーミータイプの刑事キャラクターに思える。ところが小説を読み進めていくと、どうやら単なる一匹狼型刑事の物語ではない事がだんだんと分かってくる。影山康平がなぜ単独で捜査を行うのか、というより何を考えているのか、全く意図が読めないキャラクターとして描かれ続けるからだ。強引に単独捜査に付き合わされる村上は、影山がどうやら十年前に起きた未解決事件を追っているらしい事に気付く。だが、なぜ影山がその未解決事件に
本書が他のワンマンアーミーの小説と異なる点はここだ。なぜ、その人物が孤立した存在で居続けようとするのか、ブラックボックスの状態で物語が進んでいくのである。無論、先ほど書いた十年前の未解決事件の謎があるものの、読者はそれ以上に影山康平という人物について知りたくて頁を
影山康平という人物の謎に迫るのは、本作で彼の捜査に付き合う村上翼である。単行本刊行時、WEBサイト「カドブン」に掲載されたインタビューで堂場は「いままで若い刑事だけを書いたり、中堅の刑事を主人公にしたりと、どちらか1人だけを書いてきたんですが、タイプの違う2人をからませたらどうだろう」という発想から、影山と村上のコンビが生まれた事を語っている。村上翼は若いにも拘わらず「太陽にほえろ!」や「特捜最前線」といった昭和の刑事ドラマを愛好しているという、少し変わった一面もある刑事だ。まだ青臭さも残る未熟な主人公が、心の奥底が知れない先輩刑事に
もちろん、バディものの要素を持った小説でもあるのだが、影山と村上の関係は実はバディと呼べるものになっているのかは怪しい。影山が行動の目的を一切
『刑事の枷』を発表した二〇二一年は堂場が作家デビューしてから二〇周年に当たる年だった。先ほど紹介した「カドブン」でのインタビューでは本書を「これまで書いてきた警察小説の集大成的なところがある」と自身で語っていたが、その後も〈警視庁追跡捜査係〉や〈警視庁総合支援課〉といったシリーズの続刊を手掛けており、警察小説を書くことに対する情熱はますます燃え上がっている気配がある。一方で警察小説以外のジャンルへの挑戦も
作品紹介・あらすじ
刑事の枷
著 者:堂場瞬一
発売日:2024年02月22日
周囲から疎まれる組織の”裏切り者”刑事。彼が追う未解決事件の真相とは。
「忠告だ。影山には近づくな」。
川崎中央署の若手刑事・村上翼は、管内で起きた人質事件をきっかけに傍若無人なベテラン刑事・影山康平に目をつけられ、強引に連れ回されるようになる。
署内の誰もが”裏切り者”と敬遠する影山が、実は10年前に起きた未解決の殺人事件を独自に捜査し続けていると知り、村上も事件解明へと乗り出すが、その矢先、新たな殺人事件が発生。
被害者の身元もわからず捜査は難航するかと思われたが、村上は2つの事件のつながりに気づき……。圧巻の王道警察小説!
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