読書メーター読みたい本ランキング続々1位の人気シリーズ
『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 V 信頼できない語り手』松岡圭祐
角川文庫の巻末に収録されている「解説」を特別公開!
本選びにお役立てください。
『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 V 信頼できない語り手』松岡圭祐
『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 V 信頼できない語り手』松岡圭祐
解説
作者の挑戦的な姿勢が強く伝わってくる小説だ。
『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論 Ⅴ 信頼できない語り手』は〈écriture 新人作家・杉浦李奈の推論〉シリーズの第五作目に当たる、文庫書き下ろし長編である。本書の内容を紹介する前に、これまでのシリーズを簡単におさらいしておきたい。
主人公の
例えば第一作『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論』(二〇二一年一〇月刊)は李奈が文芸雑誌で「
では第五作『信頼できない語り手』はどのような話なのか。物語の中心となるのは、都内のホテルで起きた大規模な火災事件である。その日、ホテルの宴会ホールでは日本小説家協会の懇親会が開催されており、小説家や評論家、編集者など出版関係者を含めた二百十八名が亡くなる大惨事となった。宴会ホールからの生存者はわずか二名。一人は六十八歳のベテラン小説家・
解説冒頭で本書を「挑戦的な姿勢が強く伝わる」と評したが、具体的には四つの挑戦に作者は取り組んでいる。第一の挑戦は言うまでもなく、業界内幕小説としての攻めた書きっぷりだ。シリーズ既刊の巻末解説でも指摘されている通り、本シリーズではKADOKAWA、新潮社、講談社といった実在の出版社が登場し、業界の裏側がかなりの現実味を持って描かれている。その中で「火災事件で業界関係者が二百名以上亡くなる」という大事件を書くのは、架空の登場人物ばかりとはいえ生々しく、衝撃度は高い。これまでも
第二の挑戦は本格謎解きミステリとしての企みである。〈千里眼〉シリーズや〈万能鑑定士Q〉シリーズなど、多くの人気シリーズを作者は手掛けているが、その中でも本格謎解き小説の要素が最も濃く感じられるのが〈écriture 新人作家・杉浦李奈の推論〉シリーズだ。その理由は幾つか挙げられるが、一番重要な点を選ぶとすればフェアプレイに基づく手掛かりの配置だろう。謎を解くための手掛かりをフェアに提示することは本格謎解き小説の肝であるが、それを作者は業界内幕小説の要素と掛け合わせることで巧みにクリアしているのだ。本書でも読者が真実に
第三の挑戦は主人公の成長を描いた作家小説であることだ。〈écriture 新人作家・杉浦李奈の推論〉シリーズは杉浦李奈という新人作家が抱く苦悩や
そして第四の挑戦は、本書の副題である。「信頼できない語り手」とはフィクションの技法のひとつで、視点人物の語りに読者が何らかの錯覚や混乱を起こす仕掛けを示す時によく使われる用語である。ミステリではこの「信頼できない語り手」を利用した名作が数多く書かれている。しかし一部の例外はあるものの、あらかじめ「信頼できない語り手」を題材にした作品であることを公言するミステリは
最後に一つ。カバーを見てお気づきの方もいるだろうが、本書には〈万能鑑定士Q〉シリーズの凜田莉子が登場する。どこで、どのように
作品紹介・あらすじ
『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 V 信頼できない語り手』松岡圭祐
ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 V 信頼できない語り手
著者 松岡 圭祐
定価: 880円(本体800円+税)
発売日:2022年06月10日
読書メーター読みたい本ランキング続々1位の人気シリーズ
日本小説家協会の懇親会会場で起きた大規模火災。小説家をはじめ多くの出版関係者が亡くなった。生存者はわずか2名。現場には放火の痕跡が残されていたため、大御所作家を狙った犯行説が持ち上がる。ネット上では“疑惑の業界人一覧”なるサイトが話題になり、その中には李奈の名前も。放火犯はいるのか? ベストセラー作家・櫻木沙友理と「万能鑑定士Q」莉子の登場で、前代未聞の事件の真相が明らかに……!
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322203001801/
amazonページはこちら