角川文庫の巻末に収録されている「解説」を特別公開!
本選びにお役立てください。
赤川次郎『三世代探偵団 枯れた花のワルツ』
赤川次郎『三世代探偵団 枯れた花のワルツ』 文庫巻末解説
解説
これぞまさしく
軽妙で
【赤川作品は、単純計算で全世界の4%が読んでいる。日本国民で言うなら、一人3冊ずつ。】
もちろんわたしもその中の一人です。一人、と言うか、日本国民としては、五~六人分くらい担当しているかもしれない。
小学生の頃夢中で読んだ「三毛猫ホームズ」シリーズ、コバルトから出ていた「吸血鬼」シリーズ、初めてブラック赤川を読んで震え上がった『白い雨』、『死者の学園祭』『ふたり』……600冊以上ある著作、きっとこの本を読んでいる皆様にも、これぞというお気に入りの1冊があるはず。
これだけたくさんの人を
まずは前作、『三世代探偵団 次の扉に棲む死神』を読んでいない、もしくは少し時間がたって忘れちゃった、という人のためにも、簡単な振り返りを。
物語の中心となるのは、
人も死ぬし、けっこう悲惨な目にあう人もいる。だけど、切れ者でかっこいい幸代、おっとり
今作でも、それは変わらず。今度の舞台は、映画の撮影現場。往年の大女優を中心に繰り広げられる殺人に、大人のあれやこれやな色恋、お金にまつわるトラブル。およそこの世にある全ての問題の類型がぎゅっと濃縮されたよう。前作にも増して、ページを捲る毎に増えていく登場人物と入り組んだお話の筋。にもかかわらず、ぐいぐい読めてしまうのは、先ほど大事なポイントとして挙げた「純化された共感性」、つまり登場人物ひとりひとりに感情移入できちゃうことなんじゃないでしょうか。
わたしは役者なので、前作や今作に出てくるお芝居のあれこれや、同じ役者の振る舞いや気持ちは自分事として理解ができます。
でもそれだけではなく、本来だったら全然立場が違うはずの人物にだって共感できちゃう。ちょっとした出会いに心ときめかせ、振り回される自分を
優れたトリック、社会の病巣を鋭く
十云年ぶりの赤川作品には、懐かしさと同時に、新しい発見もありました。それはもしかしてわたしが少しだけ大人になって、心の中にいろいろな共感の欠片が増えたからかも。だとしたら、今から10年後20年後に読む赤川作品は、より多くの視点、より多彩な登場人物の欠片で、物語を彩ってくれるでしょう。読む毎に、経験を重ねる毎に共感が増えていく。ライトでカジュアルに読めるように見えて、ワインのようにエイジングの楽しみがある、それが赤川作品。
ちなみに、わたしが現時点で一番好きなのは、もちろん幸代さんです。こんなクールで切れ味鋭いおばあちゃんにいつかなりたい。
この三世代探偵団、続きがございます。だってまだ気になるあれこれが残っていません?
有里の親友、
そして2021年5月に連載が終了したばかりの「三世代探偵団4 春風にめざめて」は、今作でクランク・アップした映画〈影の円舞曲〉のプレミア上映が舞台。
まだまだ、天本家の日々は
作品紹介
三世代探偵団 枯れた花のワルツ
著者 赤川 次郎
定価: 792円(本体720円+税)
発売日:2021年12月21日
女三世代が映画撮影現場で巻き込まれた怪事件とは。新シリーズ第2弾!
天才画家の祖母、生活力皆無な母と暮らす女子高生の有里。祖母が壁画を手がけた病院で、有里は大女優・沢柳布子に出会う。彼女の映画撮影に関わるうち、3人はまたもや事件に巻き込まれ――。ユーモアミステリ第二弾。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322101000254/
amazonページはこちら