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歴史は、ヒューマンドラマだ!飛鳥・奈良時代の権力者たちの歓喜と苦悩が蘇る『漫画版 日本の歴史2』

 小・中学生の頃に歴史に興味を持てなくなる、あるいは嫌いになった原因の多くは「年号や人物名が覚えられない」からではないだろうか?
 テストでよく見かけるのは「年号と出来事を結びつけるもの」だ。その出来事そのものが「いつおきたか?」を答えればテストでは◯がもらえるのだ。点数は稼げても「何かを知った、考えた」という充実感は得にくい。つまらない。かといって暗記ができなければ点数は稼げないから、苦手意識が生まれてしまう。
 歴史の面白さは「なぜこの出来事にいたったか?」「その時人々はどう動いたのか?」「この出来事の結果、世の中はどう変化していったのか?」という、人間の営みのドラマ性にある。
 しかし小・中学生にいきなり「その出来事の成り立ち」を理解させようとしても無理がある。だからまず「大雑把な時代区分」「大きな出来事」から教え、そのことを覚えているかどうかをテストするのには、やはり「年号と出来事」を結びつけて問うのが一番良い。「なぜこのやり方を選んだのか?」「当事者の本心はそのときどうだったか?」などという解釈は、◯か×かで判定できないからテストには不向きだ。そういう悲しい現実の中で、子供達はいたしかたなく「つまらない歴史をイヤイヤ暗記」して、その結果「歴史なんて過去のものだから、知らなくてもいいや」と思ったりもする。
 大人になっていく道のりで、ふとしたきっかけで、歴史上のとある出来事に興味をもつと「なぜ? どうして?」が膨らんでいって興味が興味をよび、ある時代やある人物について詳しくなっていく。詳しくなればなるほど「本当はどうだったのか?」と、もっともっと知りたくなり、やがては自分なりに「この出来事の本質はこうだったのではないか?」「この人物の願った道筋はこうだったのではないか?」「この人がもっと生きていたら、その後はこういうことに取り組んだかも」という独自の視点をもつようになる。そうなればもう歴史そのものの面白さに取り憑かれたも同然だ。過去が他人事ひとごとではなくなり、「今後の世界のあり方」まで、歴史から学べるのだと実感できるようになる。
 私は中学生の頃から歴史に興味をもったが、思い返してみればそのきっかけは「美術作品」と「物語」だった。エジプト美術やギリシャ、ローマ彫刻の人物像を見て、「どんな人だったのか?」と想像し、当時の生活や政治に興味をもった。『万葉集』に残された歌をよみ「この作者の人生に何がおきたのか?」と知りたくなった。そして映画や小説で描かれている実在の人物に憧れたりイライラしたりしながら「真相はどうだったのか?」と調べたくなった。つまり、教科書には書かれていない、人としての心のあり方や事件としてのドラマの部分にひかれて、「この人が生きた時代、当時の状況を知りたい」と願うようになっていった。しかし……自分の興味だけに走り過ぎると全体の流れを掴み損なう時がある。「よくわかっている時代」と、「何となく大まかな輪郭しか理解していない時代」に分かれてしまう。
 〇〇時代と〇〇時代は、ある日を境にきっぱりと価値観が分かれるのではなく、一日一日の積み重ねと人の心の動きにより、ゆるやかに変化していくのだ。その変化を知るには、自分がわかっているつもりの時代の前後の歴史の流れを掴むことが重要だが、ついつい「お気に入りの時代」以外は「何かのついでに勉強しよう」と後回しになってしまう。それほど詳しくないから興味がそそられないという理由もあるのかもしれない。
 歴史全体の流れを掴むためにとりあえず何となく輪郭しかわかっていない時代についてもう一度おさらいすれば良いのだが、さて、どうおさらいをすれば良いか――という時におすすめなのが、この『漫画版 日本の歴史』だ。
 歴史は年表と事例が書かれているだけのものを読んでも面白くない。まんがなら解り易いだろうと思っても「解り易い」と「読み易い」は違う。いくらスラスラ読めても何も心に残らなければ「解った」といえない。
 本書は子供向けの入門書としてまとめられているが、第2巻を例にとれば200ページの本文に、仏教伝来から平城京最盛期までの約220年間の出来事がドラマとして描かれている。
「こんなことがありました」だけでなく「私なりに悩んでこうしたのだ」という人物も何人か登場する。
 息子の入鹿いるか山背大兄王やましろのおおえのおうを自害に追い込んだと知って焦る蘇我そがの蝦夷えみし。弟の大海人皇子おおあまのおうじへの複雑な思いを抱える天智てんじ天皇。政情不安と天災に悩み、民を救うために大仏建立に力を注いだ聖武しょうむ天皇。それぞれの心情が的確に表現されている。
 学習まんがでありながら、ドラマとして伝えたいという熱意が伝わってくる。だから読み易い上に解り易いのだ。
「今更学習まんが……?」などと思わず、ぜひ大人の読者たちにも読んでもらいたい。十分知っていたつもりの歴史の知識が、きちんと整理されてタグ付けされる実感が得られるはずだ。親子一緒に意欲的におさらいして、これをきっかけにお互いに持論を展開できるようになればと期待したい。


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