文庫巻末に収録されている「解説」を特別公開!
本選びにお役立てください。
(解説:
「お
私たちに染みついている「
ならばお
とはいえオマジナイは、単なる技法の問題にとどまらない。それらの技法を駆使する「心」の問題とセットになっている。だから、本書は具体的なオマジナイの技法を説明しようとはしない。本書にはたまに「煩雑になるから、理屈は割愛」みたいな箇所がある。これは、加門さんが怠慢だから、という訳ではない。具体的な技術や理屈をわかりやすく解説したところで、オマジナイの本質は見えてこないからだ。そして、オマジナイの本質を理解していなければ、具体的な技術をマスターしても意味がない。
さて、「咒」が超常的な力に依存する行為である以上、超常的な力の源である「あちら」の存在を無視することはできない。しかし、こちらと「あちら」の関わりについて語ることは、きわめて難しい。
私たちは、時に「あちら」的なるモノと出くわすことがある。その体験に、私たちは震え上がる。間違っても、癒されたりはしない。なぜかといえば、私たちがあまりにも「あちら」について無知だからだ。わからないものは、恐怖の対象にしかならない。だからこそ私たちは、長い年月をかけて「あちら」を知る手立てを探り、「あちら」を味方にする手立て、遠ざける手立てを編み出し、言葉そのものや遊びや職業的な慣習といった、さまざまな場のなかに、それらの知識を蓄えてきた。
しかし時は流れ、私たちは「あちら」を必要としなくなった。私たちはこちらの
「咒」の世界は、下手に首を突っ込むと命に関わるらしい。「あちら」とのアクセスは加減が難しいし、なによりこちらの理が通じない。こちらの善悪の基準が「あちら」に通じるとは限らない。「咒」というマージナルな場について、その意味するところを適切にこちらの言葉に翻案し、意味づけを試みる加門さんの手つきは、
本書が単なるオマジナイの指南書ではないことは、すでに明白だろう。本書は、オマジナイを実行するためには、いかに「世界」に対する深い認識が必要なのか、その気づきを与えるための入門書なのだ。ならば、晴れ渡った良き日にこそ、本書を読んで「咒」について思いをめぐらしてみよう。そのとき私たちは、言葉と出来事が
▼加門七海『お咒い日和 その解説と実際』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321911000246/
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