画像
 以前の住まいの近所であひるを飼っている家を見かけ「あひるって飼えるんだ」と思ったことがある。本書の「わたし」の家であひるを飼い始めると、近所の小学生が遊びに来るようになる。「のりたま」と名付けられたあひるを巡る平和で穏やかな日々。しかしあひるの不調が物語に影を落としていく。
 入れ替わっていく「のりたま」、何かを祈り続ける家族、でも本当のことを誰も口にしない……一つの嘘を飲み込んでしまうと、二つ目も三つめも飲んでしまう「わたし」。
 本書の「あひる」とはいったい何なのだろう。白い羽に黄色いくちばし、もしかしたら「あひる」はたいていの人が思い描くあの「あひる」とは違うのかもしれない。ひたすらに愛を傾けられる存在は、新たなる愛の対象があらわれると存在意義を失う。愛されなくなった「あひる」の行方はわからないし、家族のその後を知るのも怖い。もしかしてあの近所の家も……? と、思い返している。


書誌情報はこちら>>今村夏子『あひる』

【解説:西崎憲(作家)】今村夏子は何について書いているのか『あひる』"

関連記事

【解説:西崎憲(作家)】今村夏子は何について書いているのか『あひる』

レビュアー:西崎 憲

今村夏子が何について書いているかはまだ誰も知らない。こう書くと、いぶかしく思われるかもし…

【新刊インタビュー 今村夏子『父と私の桜尾通り商店街』】6つの作品で書こうとしたこと"

関連記事

【新刊インタビュー 今村夏子『父と私の桜尾通り商店街』】6つの作品で書こうとしたこと

『こちらあみ子』で三島由紀夫賞、『星の子』で野間文芸新人賞を受賞するなど注目され、多くの…

書籍

『あひる』

今村 夏子

定価 562円(本体520円+税)

発売日:2019年01月24日

ネット書店で購入する

    書籍

    「ダ・ヴィンチ 2019年4月号」

    定価 680円(本体630円+税)

    発売日:2019年03月06日

    ネット書店で購入する

      書籍

      『父と私の桜尾通り商店街』

      今村 夏子

      定価 1512円(本体1400円+税)

      発売日:2019年02月22日

      ネット書店で購入する