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構想30年、北野武監督が世界に放つ時代劇!『首』完成報告会レポート

左から大森南朋、中村獅童、西島秀俊、北野武監督、加瀬亮、浅野忠信。キャストが「北野監督愛」を語った。


取材・文/河内文博(アンチェイン)

黒澤明の魂を継ぐ時代劇の誕生!

 制作費15億円、構想30年、6年ぶりの北野武監督の新作映画『首』が、いよいよこの秋公開される。監督・北野武自らが描き下ろした長編歴史小説『』をもとに、巨匠・黒澤明が生前「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」と期待していた念願の企画の映画化となる。
 本作は戦国時代を舞台に、織田信長が没した本能寺の変での裏切りと野望を、戦国武将や忍、芸人や百姓といった多彩な視点で描く、壮大なアクション戦国絵巻。会見前に流れた2分の映像でも、その迫力は推して知るべし。
 その完成報告会見に、北野武監督ほか、西島秀俊、加瀬亮、浅野忠信、中村獅童、大森南朋の豪華俳優陣が登壇。北野監督が質疑応答に応じ、キャストがエネルギッシュな現場と、北野監督作品参加への喜びを語った。


映画『Dolls』以来の北野監督作品出演となった西島秀俊。ビートたけしとの映画での共演は『女が眠る時』など、本作で3度目。

北野武監督への熱い想いを語る豪華出演陣

 会見が行われたこの日、金屏風の前に集ったのは、北野監督とキャスト一同。開口一番挨拶した北野監督は「構想30年は3週間の間違いだと思います」と冒頭から「たけし節」で笑いを取りながら、「いま、時代劇は大河ドラマなどでは人間の業とか、欲とか裏切りが描かれていません。そこで自分が撮ればこうなるという発想から作り上げました」と自ら主人公・羽柴秀吉を演じる本作への並々ならぬ想いを伝えた。続けて挨拶をしたのは、俳優陣。その多くはすでに北野組の経験者だ。
 本作で明智光秀を演じた西島秀俊は、出世作『Dolls』以来、20年ぶりの北野監督映画への出演。その想いの丈を「成長した姿を見せようということは考えずに、無欲に自分の力を出し尽くしました。本当に幸せな時間でした」と、やや緊張の面持ちで語った。


苛烈な織田信長を演じている加瀬亮。「イメージではない役をやらせたらうまくいく役者」と加瀬を表現するのは北野監督。

 加瀬亮は、『アウトレイジ』シリーズ2作への出演があり、本作で3度目の北野監督作。残虐の限りを尽くす織田信長へのキャスティングについて、「『アウトレイジ』でも、自分とはほど遠い役で大変でしたが、今回も大変でした。そして、案の定大変な目に遭いました」と笑いを交えて、苦労した現場について触れた。
 また、北野監督作初出演となったのは中村獅童。秀吉に憧れを抱く百姓・難波茂助役で参加した。「若い頃から、北野監督の作品にいつか出演するのが夢でした。そんな時にこの作品のお話をいただいて、新しい“役者・中村獅童”を引き出していただいたと本当に感謝しています」と出演の喜びに笑みがこぼれる。
 そして、『座頭市』以来の北野作品出演となったのは浅野忠信。秀吉の軍師・黒田官兵衛役だ。「北野組で再び時代劇にまた出られて本当に嬉しくて、どうやって役を演じようかと、何度も台本を読んで撮影に臨みました」と本作出演の興奮を語る。
 続いて、大森南朋も『アウトレイジ』シリーズ、『アキレスと亀』に出演した北野組の常連。「こうして北野組に戻ってくることで自分のモチベーションを保っています。私の役は常に北野監督のそばにいる役でしたので、非常に濃密な時間を過ごすことができました」と秀吉の弟・羽柴秀長役として、万感の想いで現場に立った様子。
 北野監督も「北野組に参加してくれたキャストの皆さんが優秀で、集まることができたら、この映画を作れるなと思いました」とキャスト陣の言葉に応じ、彼らあっての『首』だったと打ち明ける一幕もあった。


「今までで一番汚い役です(笑)」と語る、中村獅童。現場ではカツラや衣裳の精巧さに驚いたと話し、歌舞伎役者ならではのコメントも。

「滑稽なことと悲惨なことが隣り合わせ」の世界観

 会見では質疑応答が行われ、キャストが北野監督の現場の模様を問われると、西島は「初日が安土城天守閣のセットでの撮影だったのですが、とにかく美術が美しかったです。また、常に死が隣にある時代の武将を演じる中で、滑稽なことと悲惨なことが隣り合わせであることが描かれている作品です。悲惨だけど、思わず笑ってしまうような、本当に北野監督にしか描けない世界観を感じていました」と現場の印象を話す。続く加瀬も、「本当に出てくるのが全員酷い人間で、残酷なシーンもたくさんあるのですが、監督が撮ると品の良い映像になっていると感じましたし、他の監督では絶対に描けないと思いました」と語れば、中村も「作品としての品格は北野監督ならではだと感じます」と深く頷いていた。


『座頭市』ではビートたけし演じる市と対峙する剣豪の役を好演した浅野忠信は、本作で、秀吉の側近の黒田官兵衛役にキャスティング。

 次いで、浅野は「北野監督の現場は本当に進行が早いんです。そういった現場だと僕みたいな俳優は力が漲ってくるんです」と北野組との相性の良さに言及。「この時代にこの作品を日本で作れる人はいないと思いますし、本当に唯一無二の監督だと思います」と賛辞を送った。
 西島は追加撮影で本作の現場に呼ばれたエピソードを披露。そのとき現場では大きなセットが組まれていたものの、なんと1カットで撮影が終わってしまったとか。撮影では、1つのカットでも、大事な場面であれば、登場人物の寄りや引きなどを撮りたくなるのが通常の撮影手法。だが、そこは北野監督。「大事なシーンを寄りで撮るのは下手くそだと思っているんで」と、定番の毒舌でキャストや記者を苦笑させると、「大島渚監督や黒澤明監督に、『大事なシーンは引きで撮るべきだ』と言われたことが今でも残っていて、癖になったんだと思います」と日本映画の巨匠二人の言葉を紹介し、その想いを受け継いで撮影に臨んでいることを教えてくれた。


北野組の撮影は、基本的に本番が一度だけ。現場では小林薫らのベテラン勢の緊張を見て、自分もつられて緊張したと話す、大森南朋。

カンヌ国際映画祭「カンヌ・プレミア」への想いの丈を語る

 これまでに、97年の『HANA-BI』でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、03年に『座頭
市』で同映画祭の銀獅子賞などを受賞し、海外でも高い評価を得る北野監督。その待望の新作である本作は、早くもカンヌ国際映画祭の「カンヌ・プレミア」に選出されるなど、注目度の高い一作だ。「カンヌ・プレミア」とは、世界の歴史・民族・風土・生活習慣・信仰など現代社会を取り巻くテーマを描くワールドシネマにフォーカスした作品が選ばれる部門とのこと。北野監督は「日本の戦国時代を美化することなく、成り上がりや天下を獲るということの裏にある人間関係や恨みやつらみも含めて、一つの解釈として描けたらと思っていました」と本作ゆえのテーマ性について述べ、海外のファンにもメッセージ。


会見ではユーモア溢れる「たけし節」を炸裂させた北野監督。フォトセッションでも椅子の横に座ろうとするギャグなど、サービス精神旺盛!

 会見のラストは北野監督。本作はすでに、関係者に試写を行なっているとのことで、「スタッフや関係者に作品の出来を聞いているんですが、皆褒めてくれるんです。自分は芸人だから、それが嘘か本当かを見抜けると思っていて。その中でも大多数がこれは本当に褒めているなと感じていて、成功したと思っています。出来たらこの映画がヒットして、あと何本か撮れればいいなと思ってます」と次回作への抱負にも触れながら、芸人としての自身、映画監督としての自身を交えて、新作『首』への自信を覗かせて、会見を締めくくった。

映画公開情報



映画『首』
原作:北野 武「首」(KADOKAWA刊)
監督・脚本:北野 武
出演:ビートたけし
西島秀俊 加瀬 亮 中村獅童
木村祐一 遠藤憲一 勝村政信 寺島 進 桐谷健太
浅野忠信 大森南朋
六平直政 大竹まこと 津田寛治  荒川良々 寛一郎 副島 淳
小林 薫 岸部一徳
製作:KADOKAWA

2023年 秋全国公開
https://movies.kadokawa.co.jp/kubi/

©2023KADOKAWA ©T.N GON Co.,Ltd

原作情報



『首』
著者:北野 武
定価:1,760円 (本体1,600円+税)
発売中
©Takeshi Kitano 2019

信長を殺れ! 天下を奪え!
誰も読んだことのない「本能寺」がここに。

羽柴秀吉と千利休に雇われ、謀反人と逃げ延びた敵を探す旅をしていた曾呂利新左衛門は、信長に反旗を翻し、有岡城から逃走する荒木村重を偶然捕らえた。この首の価値はいかに。曾呂利は、信長が狙う荒木村重の身柄を千利休に託すのだった。一方、丹波篠山の農民・茂助は、播磨へ向かう秀吉の軍勢を目撃し、戦で功を立てようと、雑兵に紛れ込むのだった。だが、思わぬ敵の襲撃が茂助の運命を狂わせていく──。信長、秀吉、光秀、家康を巻き込み、首を巡る戦国の饗宴が始まる。書き下ろし歴史長編。

詳細はこちら:https://www.kadokawa.co.jp/product/321907000132/


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