menu
menu

試し読み

数多くの苦楽を共にした親友との出会い――THE ORAL CIGARETTES山中拓也が吐く話題作『他がままに生かされて』試し読み#5

THE ORAL CIGARETTES 山中拓也フォトエッセイ『他がままに生かされて』
大反響により台湾での翻訳版出版決定!

人気ロックバンド・THE ORAL CIGARETTESのボーカルで、ほぼ全楽曲の作詞・作曲を務めるフロントマン、山中拓也。彼が紡ぐ、人間の本質を表す言葉は、なぜ多くの若者を虜にするのか。そして、いかに生み出されるのか。そんな彼の半生や人生観。過去と未来のこと。今の時代に伝えたいことを綴ったエッセイ『他がままに生かされて』(2021年3月2日発売)が、大反響により台湾での翻訳出版が決定!
それを記念し、特別に第1章「汚れた感情の向こう側」全話を10日間連続で公開中です。



『他がまに生かされて』試し読み#5

 悪いヤツら、だいたい友だち

 中学に進学した僕が最初に感じたのは恐怖。学校を見渡すと、一癖も二癖もありそうな人たちしかいない中で、僕はただただ不安になった。どこにも逃げ場がないような状態ではあったが、幸運にも小学校のときに仲良くしていた2つ上の先輩が、中学校で一目置かれるほどのワルへと転身していた。入学してすぐに、そういう先輩にかわいがってもらえると、どういうことが起こるのか。大体予想はつくだろう。…僕も、いわゆるワルの世界へと染まっていった。
 僕には中学時代の大半を一緒に過ごす親友ができた。その親友と登校中に歩いていると、僕の後頭部に「ドウン」という鈍い音と激痛が走った。どこで恨みを買ったのかは思い当たらないが、器用に自転車を乗りこなし、殴りかかってくる一人の男。殴られた僕は、頭に血がのぼり殴り合いのケンカに発展してしまった。親友はケンカを止めることもなく、どちらが勝つかを高みの見物状態である。相手の体力が底をついたところで僕はその場を後にすることにした。しかし、その5分後。さっき倒したはずの男が後ろから「キエーーーーー!!!」という奇声とともにコンパスの針を僕に向けて突進してくる。まさに何度も仮面ライダーに挑む往生際が悪いショッカーだ。油断した僕は反応が遅れ、「あれ? コレ刺されるやつ?」と頭の中でぼんやりと考えていた。さっきの殴り合いとは違いその恐ろしい形相からは「殺してやる」という意志が読み取れる。襲いかかってくる様子がスローモーションになったかと思うと、僕の目の前に大きな背中が壁となって立ちふさがった。先ほどのケンカでは高みの見物をしていた親友が、間に入りかばってくれたのだ。殺されるかもしれないと思いながら目の前に飛び出すその勇気と優しさを、僕は心から尊敬し愛おしく思った。
 僕も強い人間になりたい。中学3年生の頃に、そんな気持ちからどちらが強いのか力比べをしたくなり、下校中に親友の頭に思いっきり飛び膝蹴りを食らわした。「勝った⁉」そう思ったのもつかの間、一瞬でマウントを取られボコボコにされる。とんでもなく強い。強すぎる。殴り終えた後で、彼は清々しい顔で僕に言葉をかけた。
「どっちが強いとか関係ない。俺ら仲間やねんから争う必要ないやろ。心配すんな」
 ニカッと笑い僕を諭してくれたとき、彼とは一生の付き合いになるという確信が湧き、僕はすごく嬉しい気持ちで満たされていた。彼とはそれからもたくさんの苦難をともにした。彼が困ってるときは助けに駆けつけ、僕が他校の人間とケンカしたときも駆けつけてくれる。彼を中心に仲間の団結力は高まり、並々ならぬ信頼を寄せあっていた。こんな付き合い方、表面上の関係なら絶対にできない。そう思えるほど人情味のある関係を構築できたことを僕は今でも誇らしく思っている。余談だが、現在彼は大阪で「酒将群」という居酒屋を経営していて、タイミングが合えばその店に寄ることがある。あのとき、一生の付き合いになると思った僕の勘は当たっていたのだ。

 当たり前の話だが、友だちとやんちゃばかりしていた僕が勉強など真面目にするわけがない。しかし、僕の2つ上の先輩に勉強もできてファッションもカッコよくて、どこを切り取っても完璧な人がいた。「あの先輩みたいに勉強できたらカッコいいなぁ」という憧れから、奈良の公立高校で一番偏差値の高い学校を目指すことにしたのだ。当時の学力は塾に通っていたこともあって、そこまで悪くなかったが、県内で6番目くらいの学校が妥当だ、と言われていたのは覚えている。
「先生。俺、奈良高校に行くことにしたわ」
「いや、今の成績やったら難しいと思うで。あんた昨日までどれだけフラフラしてき
たか分かってるの?」
「分かる、分かる。でも俺、明日から1時間早く学校に来て勉強するから」
次の日、学校に行くと先生も1時間早く来てくれていて、それから毎朝僕の隣に座り、分からないところをすぐに教えてくれるという万全の体制が整った。こうして、僕は希望していた奈良高校を目指すことにした。

(つづく)

作品紹介・あらすじ



他がままに生かされて
著者:山中拓也
定価:2,090円(本体1,900円+税)
発売日:2021年3月2日

ロックバンド・THE ORAL CIGARETTESで、作品の作詞作曲を手掛けるフロントマン、山中拓也。
彼が紡ぐ、人間の本質を表す言葉は、なぜ多くの若者を虜にするのか。そして、いかに生み出されるのか。
生死をさまよった病、愛する人の裏切り、声を失ったポリープ手術、友人の死etc.
そこには数多の挫折や失敗があり、周りにはいつも支えてくれた家族や仲間、恩人たちの存在があった。
山中拓也は、これまでもこれからも、他に生かされて我がままに生きていく。
そんな彼の半生や人生観。過去と未来のこと。今の時代に伝えたいことを綴ったエッセイ。
故郷・奈良の思い出の地巡り、ドイツや国内で撮影した作品写真、貴重なレコーディング風景など撮り下ろし写真も多数収録する。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322009000608/
amazonページはこちら


MAGAZINES

小説 野性時代

最新号
2022年1月号

12月25日 発売

怪と幽

最新号
Vol.009

12月21日 発売

ランキング

書籍週間ランキング

1

六人の嘘つきな大学生

著者 浅倉秋成

2

黒牢城

著者 米澤穂信

3

闇祓

著者 辻村深月

4

テスカトリポカ

著者 佐藤究

5

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門

著者 森岡毅

6

民王 シベリアの陰謀

著者 池井戸潤

2022年1月2日 - 1月9日 紀伊國屋書店調べ

もっとみる

アクセスランキング

新着コンテンツ

TOP