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試し読み

住野よる最新作は大人げない大人たちの青春“再始動”小説!!【『告白撃』試し読み(1/4)】

親友に告白されたい。そして失恋させたい。大人げない告白大作戦の開幕!

2015年の『君の膵臓をたべたい』以来多彩な青春小説を生み出し続け、今なお若い読者の熱い支持を得ている住野よるさん。5月22日に発売日を迎える最新作『告白撃』は、今やすっかり大人になった読者にも、常識を持ちつつ時にかなぐり捨てる登場人物たちが刺さる青春“再始動”小説です!
「告白され」て、「失恋させ」るとはどういうことなのか? 前代未聞の〈告白大作戦〉をまずは試し読みでお楽しみください!

『告白撃』試し読み(1/4)

あいつの頭を撃ち抜かなきゃいけない。
 その一言で、どうでもよかったはずの一夜が俺の記憶から引っ張り出されてきた。
 よく同じ場所、似たような面子で開催されていたため、正確な日付は定かじゃない。いつだとしても、テーブルの上にはスナック菓子や空き缶、一切れだけ残ったピザが散らばっていたはずだ。テーブル以外にも、響貴の家のベッドやソファは度々酔った仲間達に蹂躙されていた。嫌がってはなかったみたいだけど、本当のところちょっとはめんどくさかっただろうな。
 あの夜、俺は当時やっていた居酒屋のバイトを終え、日付を越えてから響貴の家に訪れた。あの頃の俺達はバイト後だとか、飲み会の二軒目扱いでよくあいつの家へ遊びにいった。
 鍵なんてかかっていない扉を自分の手で開けたら、いつもの匂いがする。響貴んちのっていうよりはなんだろうな、あの寝息と柔軟剤と食べ物の混じった複雑な匂い。社会人になってからとんと嗅いでない。ひょっとして、あれが千鶴の言う夢の匂いか。
 九畳ほどの部屋では、響貴がパソコンで何かバンドのライブ映像を控えめな音量で見ていて、ベッドでは千鶴がいつもの革ジャンを着たまま無防備に寝ていた。響貴と千鶴の間には男女の遠慮があんまりなかった。二人の仲を俺達は信頼してた。
「果凛お疲れ、飲み物なんでも勝手に取って」
「ありがとさん」
 キッチンの冷蔵庫を開けてビールを手に取り、床に座って乾杯する。俺が何か言う前に、響貴は残っていたピザをレンジで温め直してくれた。ついでにもぞもぞしていた千鶴の足に毛布をかけてもやる。
「さっきまで舞さんと大賀さんいたけど明日一限あって帰った。千鶴は昨日課題で二時間しか寝てないらしくて力尽きた」
 温かいピザを食べながら今日の飲み会の経過を聞いた。俺もバイトであったささやかな面白話を披露すると、毎日のように会っている男二人で語り合うこともなくなる。
 俺達には共通の趣味があった。俺がジャンクな晩飯を終えたら、音に気をつけてテレビをつけゲームのハードを起動した。ソフトは響貴がセールで買ってみたというゾンビ系のシューティングゲームを選んだ。バイオじゃなかったと思う名前は忘れた。
 しばらく二人で敵を撃ち殺しながら探索を続けるうち、もちろんあるに決まってる脅かしのシーンで、俺は制作者の思惑通りまんまと驚いた。多分その声で起きたんだな。
「お、仲良くゲームデートしてる」
 背後から聞こえた寝ぼけ声に振り返る。さっきまでベッドに倒れていた千鶴が起き上がってダークブラウンの髪を手櫛で撫でていた。俺はすぐ画面に目を戻した。
「起きて一発目に何言ってんだ」
「あの彼女が恋敵になったら手ごわそうだなあ」
 響貴の軽口を聞いている間にも、俺は目の前のゾンビを撃ち殺していく。
「私がゾンビになったら二人ともこんな簡単には進めないだろうね、強くて」
 後ろからの声に、倒れていくゾンビ共と仲間になった千鶴を想像して笑った。
「そん時はちゃんとエイムして千鶴の頭すぐぶっとばしてやる」
「おい。まず果凛の頭かじるぞ」
「俺の方は真面目に目を見て責任感じながら殺すようにする」
「よし次に響貴の目をえぐる。まず治す方法考えろ。自分がゾンビになった時に後悔するよ」
 千鶴のファンタジーな脅しに響貴は笑うことなく「実際」と、授業で議論を始める時のような口調を作った。
「俺がそうなったら、周りの人間にばれないよう行動して一人ずつ殺していくと思うんだよね。千鶴はゾンビだぞーって皆の前に飛び出して撃たれるだろうけど」
 ふざけた内容がフラットな口調にあっていなくておかしかった。
「なんで私には理性がなくて響貴だけあるんだよっ」
「理性っていうか、元の性格だな」
「よし響貴の様子が変わったら果凛と協力して一撃で頭撃ち抜いてやろう」
「二人なのに一撃? 果凛に任せないで千鶴も戦って」
「……うっせえ!」
 千鶴の子どもみたいな応戦に笑った直後、床に置いていた俺のスマホが震えた。みんなそれぞれと仲の良いハナオから、『まだやってる?』という連絡があった。どうやら部活での飲み会解散後、暇になったらしい。
 ハナオが合流してまた乾杯をした。あの頃の俺達にはそういう体力と、明日を犠牲にする勇気があった。そして俺だけじゃなくきっと皆が、今だけだという儚い感覚を共有していた。
「社会人になったらこんな間違った時間まで遊んでられなくなるな」
 カーテンの隙間から差し込む朝日に目を細めながら、確実にいつか来るのに想像できない未来のことを勝手に憂えていた。きっと何もかもが変わってしまうんだろうな、なんて。
 だから約十年後、まさかまだ同じような話をしているとは思いもしなかったし、これから間違える生き物になっていくだなんて考えもしなかった。

★つづき(2/4)はこちら

作品紹介



告白撃
著者 住野 よる
発売日:2024年05月22日

親友に告白されたい。そして失恋させたい。大人げない告白大作戦の開幕!
三十歳を目前に婚約した千鶴は、自分への恋心を隠し続ける親友の響貴に告白させるため、秘密の計画を立てていた。願いはひとつ。彼が想いを引きずらず、前に進めるようになること。
大人のやることとは到底思えないアイディアに呆れつつも、学生時代からの共通の友人・果凛が協力してくれることになったが、〈告白大作戦〉は予想外の展開を見せ――。
ものわかりのいい私たちを揺さぶる、こじれまくった恋と友情!!

詳細ページ:https://www.kadokawa.co.jp/product/322311000546/
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『告白撃』応援店限定ステッカーについてはこちら

住野よる『告白撃』特設サイト



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