10月11日(木)発売の「小説 野性時代」2018年11月号では、群ようこ「これで暮らす」の連載がスタート!
カドブンではこの新連載の試し読みを公開します。
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すこしの工夫で春夏秋冬を快適に。第一回のテーマは、夏の睡眠です。
四十歳を過ぎた頃から、周囲で眠れない、熟睡できないという話をよく聞くようになった。私も「どうですか」とよく聞かれたけれど、ベッドに入ったらすぐに寝られる体質らしく、幸いにも睡眠不足や寝付きが悪いと感じたことは一度もなかった。それと同時に、編集者のなかには睡眠導入剤を服用している人が多いのもわかった。ずっと頭を使い続けているから、脳のテンションが上がったままになって、眠れないのだろうかと考えたり、
「私は原稿は書いていても、脳をそんなに動かしていないから、寝付きがいいのかもしれない」
などと思ったりした。しかし睡眠に問題がないのはありがたかった。
ところがネコを保護して飼うようになってから、私の安眠習慣は破られた。ネコは自分の都合、気分で、夜中に何度も私を起こしに来る。それが二十年間続いているので、万年睡眠不足のような状態になった。ネコの行動に関しては仕方がないとあきらめ、昼寝をしたり、睡眠不足が続くと自然に眠りが深くなって短時間でも目覚められるようになり、体もいろいろと対応しているようだ。とはいえ睡眠はとても大事なので、なるべく快適に寝られればと、いろいろと考えてきた。
最初に改良が必要と考えたのは、初夏から夏の間のパジャマと寝具類である。私は長い間、ごく一般的な綿の平織りの長袖、長ズボンのパジャマを着て寝ていた。薄掛布団のカバーも、シーツも綿の平織りだった。しかしそれだと汗をかくといつまでもパジャマが湿っていて、それが冷えてへたをすると風邪をひきそうになったりしたので、夜中にネコに起こされたついでに着替えたりもしていた。この時季には綿の平織りが合わないのではと考え、ダブルガーゼのパジャマに替えてみた。ダブルガーゼは肌に柔らかくて、それなりに快適だったのだけれど、クーラーを切って寝る私には、綿の平織りと同じように、汗をかくといつまでもべたつくのが気になった。
その次に問題と感じたのは、薄掛布団のカバーである。足がつりそうになって目が覚め、びっくりしてよくよく見たら、汗をかいて滑りが悪くなったカバーが足にまとわりつき、脛が締めつけられていたことが何度もあった。どうしてこんな状態になるのかというと、布の肌離れが悪いからである。だから汗をかくとぺったりとくっついてくる。何かいい方法はないかと考えた結果、汗ばむ時季の寝具を麻に替えた。
(このつづきは「小説 野性時代」2018年11月号でお楽しみください)
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