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大河ドラマを100倍楽しむ 王朝辞典 vol.2

第二回 藤原道綱(ふじわらのみちつな)(道長の異母兄)【大河ドラマを100倍楽しむ 王朝辞典 】

大河ドラマを100倍楽しむ 王朝辞典

第二回 藤原道綱ふじわらのみちつな(道長の異母兄)【大河ドラマを100倍楽しむ 王朝辞典 】

 道綱は道長から見ると、父は同じだけれど母が違う兄となります。母は道綱母。父は兼家かねいえ。道綱は最終的に大納言になりました。でも、道綱はどちらかというと、あまり才覚がないように言われています。それは藤原実資ふじわらのさねすけのこんな言葉が影響しているのでしょうか。

「(道綱は)わずかに自分の名字だけは書けるけど、それ以外は一も二も知らない人物である。」
(僅かに名字を書き、一、二を知らざる者なり)

 これは実資の日記『小右記しゅうゆうき』の記事です。九九七年七月五日に書かれました。これだけ見ると本当に道綱がダメンズに見えます。
 ただし、同じ日に何があったのでしょうか。実は、この日、道綱は大納言になりました。ところが、実資は中納言のままだったのです。というわけで、もうおわかりですね。そう、実資の言葉は「やつあたり」というバイアスが、掛かっているのでした。自分よりもはやく出世した道綱に対してくやしくて仕方なかったんですね。
 それでは、ここで道綱が得意なものをご紹介しましょう。それは弓矢と舞でした。弓矢は、『蜻蛉日記かげろうにっき』中巻の記事に出てくるんですよ。はじめは、道綱チームが負けそうな評判がたってました。それが、どうなったかというと、

「すっかり道綱様がうち負かしておしまいになりました」(『蜻蛉日記』中巻)

という具合だったのですね。次から次に道綱は矢を命中させてしまったのです。それから、弓矢の行事では、舞を舞うことになってました。それまで舞の練習も道綱は一生懸命でした。それで、道綱の舞はいったい……。

引き分けになったので、まず先手組せんてぐみから陵王りょうおうを舞いました。その子も道綱と同じ年ごろの子どもで、私のおいです。舞の練習中に、こちらの家で見たり、あちらの家で見たりなどと、お互いに練習を仕合った仲だったのです。そこで、次に道綱が舞って、好評だったのでしょうか、帝から御衣ぎょいをいただきました。(『蜻蛉日記』中巻)

 陵王を舞った人物は、道綱母の甥で、中清なかきよといいました。それはともかく、道綱は、なんと天皇(円融)からご褒美として衣(「紅染単衣くれないぞめのひとえ」)を貰ったのですよ。それは『日本紀略』(九七〇年三月十五日)という歴史書にも書かれているのでした。
 何と言っても名誉なことなので、母も父もすごく喜びます。特に兼家は

「私の面目がたったこと、上達部かんだちめたちがみんな、涙を流しながら道綱をいじらしいと誉めてくれたこと」

と何度も何度も泣きながら語ってくれたのです。
 実は、兼家の一族というのは舞の一族だったのです。だから、兼家はこの道綱の栄光を一族の誇りとして心から喜んでくれたのでした。
 さすがにこの弓矢と舞の記事は、いつものような暗いイメージはなく、紅色の衣のように明るさに照り映えています。
 ……という具合に、道綱は、弓や舞の得意なアウトドアスポーツ少年だったのでした。

プロフィール



川村かわむら裕子ゆうこ
1956年東京都生まれ。新潟産業大学名誉教授。活水女子大学、新潟産業大学、武蔵野大学を経て現職。立教大学大学院文学研究科日本文学専攻博士課程後期課程修了。博士(文学)。著書に『はじめての王朝文化辞典』(早川圭子絵、角川ソフィア文庫)、『装いの王朝文化』(角川選書)、『平安女子の楽しい!生活』『平安男子の元気な!生活』『平安のステキな!女性作家たち』(以上岩波ジュニア新書)、編著書に『ビギナーズ・クラシックス日本の古典 更級日記』『ビギナーズ・クラシックス日本の古典 拾遺和歌集』(ともに角川ソフィア文庫)など多数。

作品紹介

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『はじめての王朝文化辞典』
著者:川村裕子 絵:早川圭子
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『源氏物語』や『枕草子』に登場する平安時代の貴族たちは、どのような生活をしていたのか?物語に描かれる御簾や直衣、烏帽子などの「物」は、言葉をしゃべるわけではないけれど、ときに人よりも饒舌に人間関係や状況を表現することがある。家、調度品、服装、儀式、季節の行事、食事や音楽、娯楽、スポーツ、病気、信仰や風習ほか。美しい挿絵と、読者に語り掛ける丁寧な解説によって、古典文学の世界が鮮やかによみがえる読む辞典。



『ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 拾遺和歌集』
編:川村裕子
https://www.kadokawa.co.jp/product/322303001978/
『源氏物語』と同時期に成立した勅撰和歌集。和歌の基礎や王朝文化も解説! 「拾遺和歌集」は、きらびやかな貴族の文化が最盛期を迎えた平安時代、11世紀初頭。花山院の勅令によって編まれたとされる三番目の勅撰和歌集。和歌の技法や歴史背景を解説するコラムも充実の、もっともやさしい入門書。



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