
【インタビュー】新オープン&リニューアルの書店に聞く! 今年読んでほしい本 Vol.5 magmabooks(東京都)
新オープン&リニューアルの書店に聞く! 今年読んでほしい本

本と読者を繫ぎ、新たな出会いをもたらす大切な「場」である書店。実は全国各地で、毎月のように新しい書店やリニューアルオープンの店舗が誕生しているのをご存知ですか?
本連載ではそんな新しい書店で働く書店員さんに、「今年読んでほしい本」をご紹介いただきます!
連載5回目は、東京・虎ノ門ヒルズ「グラスロック」の2~3階に2025年4月にオープンしたmagmabooksさん。
店舗のご紹介とともに、おすすめの本をご紹介いただきました。
今回のゲスト
magmabooks 店長・渡辺さん、嶋田さん
――新たにオープンしたお店の魅力を教えてください!
店舗2階の「知の森」コーナーは、ジャンルごとに書棚が分かれた従来の書店と違い、テーマごとに構成された書棚となっており「普段中々見かけないけれどなんだかとても気になる本」と出会える刺激に満ちています。「問い散歩」と名付けられたしおりを片手に、森の音のBGMが流れる店内を心ゆくまで散歩してください。文具売場も人気です!
3階はジャンルごとに配架された新刊書店としてのゾーンと有料ラウンジとに分かれています。ラウンジの集中ゾーン「FOCUS」には半個室型のブースと完全個室のブースがあり、無料の飲み物を片手に、集中して仕事をしたり読書をすることが可能です。対するラウンジの緊張緩和ゾーン「CALM」には水琴窟オブジェがあり頭を空っぽにすることが可能です。まさに今までにない書店体験ができるので、是非一度お気軽に体験してみてください。(店長・渡辺さん)
――テーマごとに構成された書棚や有料ラウンジなど、新しいチャレンジにあふれたお店ですね!
お店で人気の本についても教えてください。
私は「知の森」がある2階にいることが多いので2階での印象になりますが、本の動き方で印象的だったのはアダム・カヘンの『敵とのコラボレーション』(英治出版)です。7年近く前の本なのですが、1日に数冊売れることもあって。この本はタイトルの通り、わかりあえない、信頼できない人と協働していくためにストレッチ・コラボレーションというものを提案している本です。この本に限らず〈人付き合いが苦手です〉や〈孤独と哲学と宗教〉、〈格差と分断を乗り越える〉といったテーマの棚の本はよく売れていると思います。
もちろん、こういった“(わかりあえない)人たちとどう関わっていくか”を考える本や、その難しさと関わり方みたいなものを書いている本はどこの書店でもよく売れていると思うのですが、magmabooksでは一人称で描かれた葛藤の記録や物語というよりも、一歩引いてその課題にどう取り組むかを考えて実践していくような本がよく手に取られていて、ビジネス街でもある虎ノ門ならではだな、と感じています。(嶋田さん)
――ビジネスにも通ずる、課題解決の一助になりそうな本がより多く手に取られているのは、有名企業のオフィスが多い虎ノ門の特徴が出ている本の売れ筋ですね。
またmagmabooksでは、書店としての顔のほかに、ギャラリースペースである「magmaspace」も併設されていると伺いました。現在開催中の『雑 前田真宏 雑画集』発売記念アート展の見どころをお伺いできましたら幸いです。
7月4日(金)から8月3日(日)まで『雑 前田真宏 雑画集』販売記念アート展 POP UP SHOP を開催しています。アニメ界の偉人 前田真宏の画業40周年を記念して発売された画集とともに、複製原画やイラスト画展示のほか、オリジナルグッズの販売をしています。税込1,100円以上お買い上げの方にはmagmabooks限定の特典もあり、入場無料となっていますので是非ゆっくりご覧ください!(店長)
――素敵な展覧会をご紹介いただきありがとうございます!
そんなmagmabooksで働く嶋田さんの「今年読んでほしい小説」を教えてください!
町屋良平『生活』(新潮社)
「めちゃくちゃ面白いから一度読んでほしい!」と、お店の人にも勧めています。いままでの町屋作品を知っている人はもちろん、はじめての町屋良平にもかなりいい1冊です。なんといっても主人公がのどかというかなんというか、“この男子はわたしに緊張してないんじゃなく、世界に緊張してないんだ”と、初対面の女の子に思わせるような男の子で。物語としてはかなり矢継ぎ早にとんでもないことが起こり続けるのに、そのすべてを生活の中にしまい込んでしまう。
ここ最近の町屋作品を読むときのような体力がなくても読むことができるのに、あくまでも町屋良平の作品なのがとにかくすごい。主人公の“かれ”が、すべての物語を生活にしまい込んでしまう意味がじわじわと明らかにされていく流れと、その和解というか収束の仕方をみたとき、久しぶりに小説で涙が出ました。泣ける小説!みたいな本では全くないのに。この体験を、できるだけたくさんの人にしてほしいです。(嶋田さん)
――ありがとうございます! 最後に、カドブン読者へのメッセージをいただいてもよろしいでしょうか。
「知は熱いうちに打て」をコンセプトに、本と出会う・本を読む・本から得た着想をアウトプットすることが体験可能な新スタイルの書店が東京のど真ん中に誕生しました。東京メトロ日比谷線に乗ることがあれば是非一度「虎ノ門ヒルズ」駅で途中下車してmagmabooksだけでなく虎ノ門ヒルズという街全体をも楽しんでほしいです!(店長・渡辺さん)
店舗情報
住所:東京都港区虎ノ門一丁目22番1号 グラスロック 2・3階
営業時間・定休日は公式ホームページをご確認ください。
公式ホームページ:https://honto.jp/store/detail_1570268_14HB421.html
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カドブン編集部が選ぶ 今年読んでほしい本
『この夏の星を見る』(上・下)辻村深月(角川文庫)
この物語は、あなたの宝物になる。
亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われる――。
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連載「新オープン&リニューアルの書店に聞く! 今年読んでほしい本」の更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/kotoshiyondehoshiihon/