北上次郎の勝手に!KADOKAWA 第31回・穂村弘『短歌ください』を読む
北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」
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数々の面白本を世に紹介してきた文芸評論家の北上次郎さんが、KADOKAWAの作品を毎月「勝手に!」ご紹介くださいます。
ご自身が面白い本しか紹介しない北上さんが、どんな本を紹介するのか? 新しい読書のおともに、ぜひご活用ください。
穂村弘『短歌ください』を読む
「短歌ください」は、「ダ・ヴィンチ」誌上に連載中の、読者から短歌を募集する企画ページをまとめたもので、この文庫第一弾では30回までを収録している。2020年には文庫版の続刊も出ている。
選者の穂村弘が読者の歌に評を寄せているからそれで十分で、屋上屋を架すこともないが、こういうのを読むと一言つけくわえたくなるので許されたい。
四十肩
三段腹に
二重あご
一重まぶたで
ツンツルあたま
まず、目に飛び込んできたのがこの歌だ。人体に「数」を見い出すアイデアがとても面白い、と穂村弘は書いている。最後の「ツンツルあたま」が特にいい。
山手線全駅の匂いを調査したサギサワ君の卒業論文
山手線の駅に匂いがあるのか。いったいどんな匂いだ。そして、あったとしても駅による違いはあるのか。この歌をよむと思いがどんどん広がっていく。「サギサワ君」という固有名詞を出す手つきがややプロっぽい。
じゃんけんでいつも最初にパー出すの知っているからわたしもパーで
いいなあこれ。あえて「あいこ」にしようという心のうごきがいい。これは恋の歌だ。
ひよこって昔のあだなで呼ばれれば子供時代がきらきら光る
幸せな子供時代を送ったんだなあと思わせる一首。きらきら光る子供時代があったなんてホント、羨ましい。
おお、もっと読みたくなってきた。