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日本と中国とを結ぶ人たち──竹内亮『架僑 中国を第二の故郷にした日本人』レビュー【本が好き!×カドブン】
カドブン meets 本が好き!
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竹内亮『架僑 中国を第二の故郷にした日本人』レビュー【本が好き!×カドブン】
書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
今回のベストレビューは、ぽんきちさんの『架僑 中国を第二の故郷にした日本人』に決まりました。ありがとうございました。
日本と中国とを結ぶ人たち
レビュアー:ぽんきちさん
著者は中国在住の日本人ドキュメンタリー監督。
中国版ツイッターであるウェイボー(微博)のフォロワーは2022年1月時点で471万人。おそらく中国で最も知られている中国在住日本人の1人である。
代表作は『我住在这里的理由(私がここに住む理由)』と題される番組シリーズであり、日本に住む中国人と中国に住む日本人、合計200人近くを取り上げてきた。芸能人に密着することもあるが、大多数の主人公は市井の人々である。実はそうした人たちが異文化交流に大きな役割を果たしているという思いからだ。
タイトルの「架僑」は著者の造語という。架橋と華僑を掛けていると思われる。「僑」の字は、故郷を離れて外国に住む人を指す。
本書で取り上げられているのは、著者の『私がここに住む理由』に出演した人々の中でも特に「濃い」人たちである。
黄河の農村で有機農業に挑む老人。
ネットが主戦場の漫画ビジネスに挑む漫画家。
中国でおそらく最も有名な日本人俳優。
中国建国記念パレードで行進した日本人。
離婚したものの、血縁・地縁のない中国で奮闘するシングルマザー。
外国人向けの「歌舞伎町案内人」から日本政界に打って出た実業家。
中国と日本の両方にルーツを持つ、富裕層の女性起業家。
「中国版シリコンバレー」でしのぎを削るビジネスマンたち。
武漢で日本風カレーの店を営む老人。
そして最終章では著者本人の軌跡を描く。
1人1人、それぞれの理由で「異国」に根付いた彼らは、それぞれの道を切り開いていく。
日本のような終身雇用の形が少ない中国では、豊かな生活を得ようと思えば、「安定」よりも「挑戦」が必須である。リスクもあるが、一方で自由があり、手ごたえがある。
歯に衣着せず物を言う中国の人々は、反面、人情に厚く、困っている人には手を差し伸べる。人々が見せる「率直さ」は、見様によっては無遠慮にも思えるが、正直であるということでもある。ひとたび信頼関係が築ければ、非常に頼りになる相手だろう。
生き抜いていくのはなかなか骨が折れるだろうが、うまくはまれば水を得た魚のように生き生きと泳げる。そんな舞台がそこにはあるのかもしれない。
テレビや新聞ではなかなか知ることのできない等身大の人々の姿から、中国の「今」が浮かび上がる。
種が風に乗り、異郷に舞い降りた。その地で根を張り、葉を茂らせ、花を咲かせ、実を結ぶ。
傍から見れば「雑草」であろうと、そこに根付く命はしたたかで逞しい。
そんな人々のポートレートである。
*本書中でも紹介されている、著者が封鎖後の武漢を訪れたドキュメンタリー、『お久しぶりです、武漢』も見てみました。こちらもおもしろかったです。
▼ぽんきちさんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no3483/index.html
書誌情報
架僑 中国を第二の故郷にした日本人
著者 竹内 亮
発売日:2022年03月02日
巨龍を動かすのは、市井の人びとだ。中国は雑踏から見るほうが面白い――。
黄河の農村に誕生した71歳インフルエンサー。
中国式漫画ビジネスに挑む漫画家。
定年退職後に語学力ゼロでカレー屋を興した男。
中国在住の大人気ドキュメンタリー監督が全土を駆け回り、中国人の心を震わせた人びとを描くルポ!
中国は雑踏から見るほうが面白い――。
彼らが見た現実。彼らから見える実態。
■中国テレビ界のスターとなった男
■中国建国記念パレードで行進した日本人
■大連で奮闘するシングルマザー
■「妻」でなく「私」を目指した女性起業家
■「中国版シリコンバレー」に集う挑戦者たち
■中国映像界を駆け上がるドキュメンタリー監督
「我住在这里的理由(私がここに住む理由)」。中国で大人気を博すドキュメンタリー番組で累計再生回数は6億回を超える。
この番組では、2015年より日本に住む中国人と中国に住む日本人、約200人が登場してきた。
本書は特に濃い人を厳選し、カメラをペンに替えて描いたルポである。
巨龍を動かすのは、市井の人びとだ。
▼書籍の詳細はこちら
https://www.kadokawa.co.jp/product/321806000078/
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