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連載

カドブン meets 本が好き! vol.40

庭と人とが力を合わせて幸せを作り上げる──銀色夏生『庭は私の秘密基地』レビュー【本が好き!×カドブン】

カドブン meets 本が好き!

銀色夏生『庭は私の秘密基地』レビュー【本が好き!×カドブン】

書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
第39回のベストレビューは、ぱせりさんの『庭は私の秘密基地』に決まりました。ぱせりさん、ありがとうございました。


銀色夏生『庭は私の秘密基地』


庭と人とが力を合わせて幸せを作り上げる

レビュアー:ぱせりさん

著者・銀色夏生さんが生まれ育った宮崎に家と庭(およそ三百坪)を造ったのは二十年前。
その後、都内に暮し、たまに宮崎に帰る、という生活のなかで、庭は草ぼうぼうになっていった。
その庭に再び手をかけ始めたのは四年前からだという。
最初にこういう言葉に出会ったので、この本には、草ぼうぼうの庭が、著者の思い通りの庭に「蘇る」様子が綴られているのだろう、と予想した。
でも、ちょっと違っていた。


著者が庭を愛するように、庭自身もきっと庭を愛している。だけど、庭の望みと人の望みが必ずしも同じ方向を向いているわけではないのだ。
そういうときにどうするのか、相手をねじ伏せようと闘うべきなのだろうか。
この本では、庭と人とが、互いの意見(?)を聞きあって、力を合わせて、ひとつの形を作り上げている感じがする。


渡り廊下前に白いユリが咲いている。そのまわりで白い星のような花を散らしているのはヒメジョオンだ。
著者は言う。「この白い花の組み合わせが好きでした」


著者の庭は湿気があるせいか、シダや苔が多くある。
写真を見れば、いろいろな苔があるものだ、と感心する。
「雨が降ると静かに体を広げ、ひっそりと輝き始めます」


夏の風のない朝には、すごい数の蜘蛛の巣が朝露をまとって姿を現すという。
作りかけて失敗した第二ハーブ園は通路にしたらすっきりした。
小石を並べて作ったテラスからは、ときどき小石が外れて抜けるが、それもいいのだ。ヤモリもどこかからぽとりとおちる。


傷んだものは補修する。合わないものは撤収する。いつのまにか現れたものについては庭と人との望みをすり合わすような感じでどうするか決める。
著者の庭は、著者だけが作ったのではないし、庭だけが作ったのでもない。


そして、著者はいうのだ。
「今、庭は自分で生き始めてる、と感じます」
ああ、そうか。庭が生き生きとするように手を貸してやることが庭仕事なのだね。
結果、人も気持ちよく過ごせる。
「私と庭は共存して、ゆっくりと生きていきます」という言葉は、なんて気持ちがいいのだろう。
人も庭も気の合う相棒を得て幸せそうだ。

▼ぱせりさんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no2250/index.html

書誌情報



庭は私の秘密基地
著者 銀色 夏生
定価: 1,760円(本体1,600円+税)
発売日:2022年01月28日

庭の時間は、心をほどく。
子育てが一段落し、何にも左右されない「個人的幸福」の追求を続ける銀色さん。
あるとき美しいハーブ園に出会ったことをきっかけに、新たなテーマで理想の庭づくりを始めることにしました。
タイル貼りのテラス、小石の通路、大好きな桂の葉の匂い……細かいところまで自分ごのみに作った、自分だけの庭。
計画通りにいかないこともあるけれど、生き生きと茂る植物との暮らしは、素敵な発見の連続です。
日々工夫を重ねながら考えていたことや、四季折々の草花を見つめて感じたことを、写真とともに辿ります。

▼書籍の詳細はこちら
https://www.kadokawa.co.jp/product/322107000446/
amazonページはこちら


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