角川文庫キャラ文通信
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『ぬばたまの黒女 』阿泉来堂 インタビュー
――大ヒット『ナキメサマ』の鮮烈デビューから半年以内での2作目刊行、おめでとうございます! まずは2作目の『ぬばたまの黒女』について伺います。七原しえさんのイラストが映えていますね! 今回の作品の読みどころはどこですか?
阿泉:はい、前回に続いて七原さんのイラストはとても素晴らしく、この作品の最も重要な場面を描いて下さっています。
あの表紙はどのようなシーンを切り取ったものなのか。そこにどのような意味が込められているのか。
そんな風に考えながら読んでいただければ、きっと楽しんでもらえると思います。
オーソドックスな展開ではありますが、だからこそ安心して物語世界へ飛び込んでいただけるのではないかと。
――特に思い入れのあるシーンやキャラクターはありますか? その理由も教えてください。
阿泉:主人公の
是非とも注目していただきたいです。
――謎のホラー作家の怪異蒐集家・
阿泉:一見するとおかしな人間で、奇妙な言動に周りは戸惑ってしまうのですが、極限状態においても冷静さを失わず、誰もが目を背けたくなるものにこそ目を向ける強さがあります。
その強さは時に人を救う結果にもつながりますが、彼は基本的に誰かを救うために行動しているわけではないんです。
あくまで自らの好奇心や探究心、あるいは使命感のようなものに突き動かされて、怪異と積極的に関わろうとする。ある種の執着心の塊です。
しかし、そんな彼にも最低限のモラルや彼なりの信念があるので、人道に反した人間を容赦なく糾弾します。
そこが那々木の格好良いところではないかなと思っています。
――今回の作品のテーマは「罪」や「許し」ですね。そのテーマを選ばれた理由を教えてください。
阿泉:罪を犯してしまうのは怖いけれど、それを許してもらえなかったり、償う機会を失ったりしてしまうことはもっと怖いと思います。
この話の登場人物は、誰もが何かしらの罪を背負いながらも許される機会を失った人々であり、死によって分かたれた相手に許しを求める切なさ、儚さみたいなものを描けたら、と思いました。
――前作に続き、今回も最後まで一気読みの二転三転する展開になっていますが、こうしたホラーエンタメで阿泉さんが影響を受けた、好きな作品があれば教えてください。小説以外でもOKです。
阿泉:小説ですと綾辻行人さんの『Another』、『殺人鬼』、三津田信三さんの『どこの家にも怖いものはいる』、『のぞきめ』、貴志祐介さんの『天使の囀り』、『十三番目の人格ISOLA』、
黒史郎さんの『夜は一緒に散歩しよ』、『幽霊詐欺師ミチヲ』、神永学さんの「心霊探偵八雲」シリーズ、澤村伊智さんの『ぼぎわんが、来る』でしょうか。あと、五十嵐貴久さんの『リカ』なんかは、最強に恐ろしい生きた怪異だと思います。
海外小説だと、スティーヴン・キングとクライヴ・バーカー、H・P・ラヴクラフトをよく読みます。
漫画作品では藤田和日郎さんの『うしおととら』と田島昭宇さん・大塚英志さんの『多重人格探偵サイコ』。
洋画は『ヘルレイザー』『悪魔のいけにえ』『ミスト』『キャリー』、邦画は『学校の怪談』『ゼイラム』、海外ドラマは『スーパーナチュラル』一択です。
また、『SIREN』『流行り神』『かまいたちの夜』『零』などのゲーム作品にも強く影響を受けました。
――今後書いていきたい作品について教えてください。
阿泉:前作『ナキメサマ』が発売されてから、「那々木でシリーズを」というありがたい感想が多かったので、今後も書き続けたいと思っています。
怪異譚はもちろん、彼を知る人物や害をなす人物との関わり、そして過去や家族との関係など、世界を広げていきたいです。
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
阿泉:『ナキメサマ』を読んだ方も、そうでない方も等しくお楽しみいただける作品に仕上がったと思います。もし自分がこんな村に迷い込んだらどうしよう、なんて想像しながら読んでいただければ嬉しいです。
よろしくお願いします!
▼阿泉 来堂『ぬばたまの黒女』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322103000568/