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角川文庫キャラホラ通信

【キャラホラ通信4月号】『崎義一の優雅なる生活 エリカの咲く庭』刊行記念 ごとうしのぶインタビュー

角川文庫キャラホラ通信

累計500万部突破の「タクミくん」シリーズに連なる、大人になったギイとタクミの物語・第2弾として、今月、角川文庫より『崎義一の優雅なる生活 エリカの咲く庭』が刊行されました。作者のごとうしのぶさんに、本作への思いをうかがいます!

――「崎義一の優雅なる生活」シリーズは、学園恋愛小説の名作「タクミくん」シリーズに連なる、“二十九歳になったギイとタクミの物語”で、単行本で刊行された当時も大きな話題となりました。このシリーズが生まれたきっかけは何だったのでしょうか。

ごとう:角川ルビー文庫で展開していた「タクミくん」シリーズは、高校生時代の彼らの物語です。書きたかったものを全部出し切れたと感じたので、ひとまずけじめとさせていただきました。最終話の『Station』はタイトルもストーリーの大筋も、彼らが生まれたときからラストとして用意していたものです。高校生時代の物語としてはそれが用意されていたラストでしたが、高校を卒業し、進学し、社会人となった彼らの物語まで終わったわけではなく……。そんなおりに、単行本での執筆はいかがですか? と提案していただきました。単行本の刊行ペースは不定期なので、納得ゆくまで大人な彼らの物語と向き合えるという利点があります。高校生時代とはまた別の、大学生や社会人になっても彼らなりの輝きを失わない、制服を脱いでも尚、彼ららしい人生を描けたらとの願いを込めて、現在「崎義一」のシリーズを書かせていただいております。

――今回、シリーズ単行本の文庫化にあたり、角川文庫と角川ルビー文庫、2つのレーベルから刊行されていますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか?

ごとう:角川文庫版は、大人な彼らの雰囲気を醸し出すべく装丁を全体的に大人っぽく、そして、巻末に書き下ろしの短編が特典として収録されています。
ルビー文庫版は、長く「タクミくん」シリーズを愛してくださっている方のためにおおや和美先生のイラストにて、カバーや口絵や挿絵で世界観を盛り上げていただきました。おおや先生のイラストがルビーでの特典ということですね。
それから、これは作品の内容とは直接関係ないんですが『エリカの咲く庭』は、角川文庫版(4月25日発売)は私にとって記念すべき平成最後の刊行で、ルビー文庫版(5月1日発売)は記念すべき令和最初の刊行なのです。同タイトルでレーベル違いの本が、元号をまたいで連続刊行されるとか、狙ってもそうそうなるものではありません。私の人生でこのような巡り合わせは二度と起きないでしょう。気づいたときは鳥肌が立ちました!

――二十九歳になったギイとタクミを描くうえで、楽しかったり面白かったりした部分はどこですか? また逆に、悩んだり苦しかったりした部分はありますか?

ごとう:大きく変わったのは、文章が託生の一人称から三人称になったことです。メインは崎義一なので、託生の一人称で展開するのはおかしいですしね。長く一人称で構成されていた物語が突然三人称となり、この「崎義一」のシリーズを書き始めたばかりの頃は悩んだり、うまく表現できているか不安もありました。しかし、一人称のときは託生が知らない情報は文章中に書けないという縛りがあったのですが、今はそれがないので、結果、自由度が上がりました。二十九歳と聞くと、正直、「若いなあ!」と(もちろん高校生に比べたら、そうとう年上なんですが)感じてしまいます。高校生のキラキラとした時代も楽しいですけど、三十手前の、社会の壁にぶつかって玉砕したり、仕事をすることの楽しさや厳しさや辛さや充実感とか、責任を伴う道を歩むことの醍醐味を物語に込められるのは、感慨があります。ああ、一人前になっていくなあ、と。登場人物ながらわが子を見守るような心持ちです。

――シリーズ第1巻『BLUE ROSE』と、第2巻『エリカの咲く庭』、それぞれの読みどころや注目ポイントがありましたら教えてください。

ごとう:『BLUE ROSE』は、二十九歳にしてすべての事業を清算し莫大な資産を持ちつつも無職となったギイが託生の元へ押しかける話です。もちろんギイのことなので何事もなくというわけにはいきません。託生は託生で地味でも自分なりに築き上げた生活がありますし、恋人同士であっても環境も立場も価値観も考え方も違っていて、それを、相手のことが好きだからこそお互いに少しずつ擦り合わせ、しあわせのゴールを目指すのでした。というラブストーリーに、ちょっとしたミステリー要素が含まれています。
『エリカの咲く庭』は十五歳の佐智と幼なじみのギイの物語です。佐智の初恋の相手(完全にふられたと諦めていたかなり年上の麻薬取締官)との久々の再会と、託生くんに密かに片思いしていたアメリカ在住のギイが祠堂学院に留学するきっかけとなった話でもあります。胸きゅんラブストーリーにサスペンス要素が含まれています。

――そして現在、シリーズ第3巻『忘れえぬ此の花を、此の想いを』をご執筆中ですね。単行本での刊行を予定していますが、どのような内容になりそうでしょうか? あかせる範囲で教えてください。

ごとう:『BLUE ROSE』には、高校三年生のときに忽然と姿を消してしまったギイと、それから二年後にようやく託生が再会できたシーンの含まれる短編が収録されているのですが、なぜか、ふたりの再会の物語を読みたいですとファンからリクエストされることが多々ありまして。あれ? もう書いた気がする。てか、書いたし。ところが、読んでくださった上でのリクエストと判明しまして、これはボリュームの問題かな。と、気づきました。
ですので第3巻『忘れえぬ此の花を、此の想いを』は、二十九歳から大学二年生へときゅきゅーっと時間軸を戻しまして、ふたりが再会するパートと、現在の二十九歳のパートとで、構成されております。
角川文庫版の二冊に収録した書き下ろしを読んでいただきますと、より流れがスムーズかなと思いますが、もちろん、読まれていなくても問題はありません。大丈夫です。

――今後、大人になって登場させたいキャラクターは誰ですか。理由も教えてください。

ごとう:ううううううむ。なんと、鋭い質問。鋭いですね。サプライズとしてこのことは隠しておくべきか一瞬迷いましたが、質問の鋭さに脱帽したので、お答えします!
真行寺兼満(三洲新も出てくるといいな)です。
今後というか、『忘れえぬ此の花を、此の想いを』に登場の予定です。真行寺くんの現在にぜひご注目ください。彼も頑張っております。あ、恋愛もですが、そこではなく。彼の人生を、です。
登場の理由は、真行寺兼満が人生を頑張っているから、です。

――このシリーズを書くうえで、一番大切にしている部分はどこでしょうか?

ごとう:時間軸だったりエピソードだったり、長いシリーズなので齟齬を起こさないよう気をつけたり、心掛けているものはたくさんあるんですが、一番大切、となると、どきどき、とか、トキメキとか、ワクワクとか、そういう、読んでいる間の触り心地のようなもの、です。哲学とか作品にメッセージをとか、そういう類いの物語ではないので、トリッキーなことも特には仕掛けないですし、そっち方向ではなくて、誰かをいとおしく思う、想いを、そこに温度を持たせて、作中に込めるようにしています。前向きに。できれば、凛々しく。なので一番大切にしているのは、作品の触り心地、ということになりますか。よき触り心地に仕上がっているといいんですが。どうでしょう。

――最後に、読者に一言メッセージをお願いします。

ごとう:おかげさまで、文庫版『エリカの咲く庭』に続きまして、「崎義一」シリーズ新作単行本を出せることとなりました。これも、応援してくださる皆様のおかげです。ありがとうございます。恋人や夫婦には倦怠期なるものがありますが、奇跡のように私は彼らの物語を作ることに気持ちが滞ったことがありません。いつまでも色褪せずにいてくれます。その影響で、ギイと託生の間にも倦怠期が訪れないのかもしれません。
改めまして。
それまでの反動なのか突然に人生の凪の季節を迎えてしまい、すべてをリタイアして託生の元へやってきたギイが、託生との化学反応の中で再び始動するまでの、ほろ苦くもしあわせなひとときが、このシリーズの中には詰まっています。楽しんでいただけますと、とてもとても嬉しいです。


書誌情報はこちら≫ごとう しのぶ『崎義一の優雅なる生活 エリカの咲く庭』


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