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角川文庫キャラホラ通信

【キャラホラ通信11月号】『記憶屋0』刊行記念 織守きょうやインタビュー

角川文庫キャラホラ通信

山田涼介さん主演で、2020年1月に公開される映画『記憶屋 あなたを忘れない』。公開を前に、スピンオフ小説となる『記憶屋ゼロ』が角川ホラー文庫から発売されます。作者の織守きょうやさんに本作への想いをじっくりうかがいました!


――『記憶屋』の実写映画化おめでとうございます! いよいよ2020年1月17日に全国公開とのこと、とても楽しみですね。さらに「記憶屋」シリーズ新刊をまた読むことができるとは! とても嬉しいです。今作は、シリーズ3年ぶりの新刊となりますが、この作品を書かれたきっかけを教えてください。また、久々に記憶屋にまつわる物語を書かれてみていかがでしたか?

織守:記憶屋』がまずあって、『記憶屋Ⅱ』と『』はその十年後のお話なんですが、その三冊でひとまず記憶屋の話は書ききった、と思っていたんです。担当さんからは、続編とまではいかなくても、スピンオフでも……というお話はいただいていたんですが、私としては、「記憶屋は書き終えた」と思っていました。幸せなことに、記憶屋シリーズはたくさんの方に読んでいただいて、また記憶屋の話を読みたい、と言っていただけることも多かったので、全く考えなかったわけではありませんでしたが、他に書きたいものもありましたし、他社でもお仕事をさせていただいていましたし、「記憶屋は、また書きたい話が浮かんだら書くかもしれない」「何かきっかけがあったら考えよう」というスタンスだったんです。

 それがこのたび、映画化されることになって、記憶屋の話をもう一度書くなら今しかないと……映画が、まさにきっかけになったわけです。
 今回の『記憶屋0』には、『記憶屋』に出てきたキャラクターも登場するのですが、また彼らを書けたのは私も嬉しかったです。


――そうだったんですね! シリーズ前作から時間が空いたことで、今作を書かれる上で何かご苦労されたことや、織守さんの中で変化したこと、新しい発見などはありましたか?

織守:細かいことなんですが、ちょうど『記憶屋0』を書き始める前に法律ものを書いていたので、弁護士の高原の視点で一話目を書き始めたとき、文章が硬くなってしまって困りました。これは『記憶屋』の文章じゃないな、と気づいて、後で調整して柔らかくしたり……書いているうちに感覚が戻りましたが、久しぶりだったので、最初はちょっと、どういう感じだったか思い出すのに時間がかかりました。

 内容面では、『記憶屋』『記憶屋Ⅱ』『Ⅲ』を経て、改めてキャラクターと向きあう形になったので、これまでよりさらに深く、キャラクターについて考えました。そこまでは考えない予定だったはずのことを……たとえば、真希はいつから遼一を好きだったのかな、これまで告白したことはなかったのかな、あったとしたら、どうして『記憶屋』の時点ではそれがなかったことになっていたのかなとか、もしも『記憶屋』のラストで真希がああいう選択をしなかったら、遼一はどうしていたんだろうとか、そういうことを考えました。

 私は、『記憶屋』では、遼一は完全に真希を妹のように、恋愛対象外として見ていて、真希自身もそれがわかっている、という風に書いたんですけど、今回『記憶屋0』を書くにあたって、本当にずっとそうなのかな、「一度だけでいいから」と真希は言ったけど、本当に一度も、これまでもこれからも、遼一は真希を恋愛対象として見ないのかな? と考えて……もしかしたら、可能性はあったんじゃないかなと思いました。お互いに気づいていなかっただけで。それは私にとっても新しい発見でした。



――『0』を読んで再びシリーズをさかのぼると、読む側にも色々と発見がありそうですね。『記憶屋0』は『記憶屋』の前日譚を描くスピンオフということですが、この作品の読みどころや、気に入っているシーンなどあれば教えてください。

織守:『記憶屋0』は、時間軸でいうと、無印の『記憶屋』よりも前の話になります。『記憶屋』を読んでくださった方は、遼一や真希や高原が、この後どうなるのかや、彼らの背景をわかったうえで『0』を読まれることになります。『記憶屋』の設定やラストを踏まえたうえで、プロローグ(in the cabin 5:27 PM)とエピローグ(in the cabin 5:22 PM)を読んでいただくと、本人たちは気づいていない二人のすれ違いに読者は気づくことができると思います。プロローグとエピローグは、時間軸が逆になっていて……プロローグの前に起きたことがエピローグに描かれているので、そこは意識してそういう配置にしました。

 それから、今回は高原の視点で書いた話があるのですが、『記憶屋』では高原は他人の目から見た姿しか描かれていなかったので、彼がどんな人間でどんなことを考えて生きていたのか、も読みどころかなと思います。私も、彼の内面を書きながら理解していったところがあって、踏み込んで書くのが辛かったシーンもありますが、さらっと書いたところ、「踏み込んでください」と担当さんに言われて書き足しました。(笑)

 高原自身が、自分の弱いところ、ダメなところ、暗い部分を人に見せたくないと思っている人なので、彼のそういう部分、彼自身が人に見せまいとしている部分を書くのは、私としてもちょっとしんどくて、避けてしまっていたんです。でも、今は、書くべきだったと思っています。


――高原のエピソードには、あの外村も登場しますから、そこも必読ですね!  『記憶屋』の映画は一足先にご覧になったとのこと、原作者という立場から観てみていかがでしたか?

織守:映画、とてもよかったです。
 原作には複数のキャラクターのエピソードがあって、それをそのまま映画にすると冗長になったり話が散らかったりしそうなところを、うまくエピソードを拾って、エッセンスを残して、映画ならではの形に仕上げていただいていました。

 原作と違うところや、フォーカスの仕方が異なる部分もあるんですが、中心にあるものは同じで、クライマックスシーンでは、自分で書いたセリフに泣きそうになってしまいました。演出と、役者さんの力ですね。

 原作と映画は、少しずつ違うので、どちらから入っていただいても、どちらも楽しんでいただけると思います。原作を読んでから映画を観ると、役者さんたちの細かい演技にニヤリとしてしまうでしょうし、映画を観てからだと、「原作ではこのキャラクターはこういう設定なんだ!」と新鮮な驚きがあるはず。

 現時点で原作を未読で、先入観なく映画を観たい方へのおすすめは、映画を観て、原作を読み、それを踏まえてもう一度映画を観る……でしょうか。二度目だと、「あっ、この人はこのとき真相に気づいたんだな」とか「この人、こんな行動してるけど、この時点でもうああいうことを考えているんだよな」とか「このキャラクターはこのとき、こういう理由でこういう表情をしていたのか」とか、色々と気づきがあります。


――映画の公開がますます楽しみになりました! それでは今後書いていきたいものについて教えてください。また、これから「記憶屋」シリーズ新刊に再び会える可能性などはあるのでしょうか……!?

織守:日本ホラー小説大賞の出身者として、ホラーや怪談はまた書きたいです。『響野怪談』も好評発売中ですので、よろしくお願いします。
記憶屋シリーズは……今のところ予定はありませんが、スピンオフについてもそう言っていたら今回こうしてお届けできることになったので……そうですね、きっかけがあったら、もしかしたら。


――最後に、読者に一言メッセージをお願いします。

織守:『記憶屋0』は、できれば、『記憶屋』を読んだ後にお読みいただけると嬉しいです。『記憶屋』のネタバレを含みます。
『記憶屋Ⅱ』と『Ⅲ』は、『0』の後でも大丈夫。時間軸は、0→無印→Ⅱ、Ⅲの順です。

 シリーズを読んでくださって、また記憶屋の話を読みたいと言ってくださった方々、お待たせしました。おかげ様でスピンオフをお届けできることになりました。映画ともども、楽しんでいただけたら嬉しいです。一言じゃないですね……。


――(笑)。たっぷり語ってくださってありがとうございました!

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