【連載】横溝正史ミステリ&ホラー大賞創設によせて 第5回 織守きょうや
横溝正史ミステリ&ホラー大賞創設によせて
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長い歴史を持つ「横溝正史ミステリ大賞」と「日本ホラー小説大賞」が統合し、ミステリとホラーを対象とした「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」として募集を開始しました(締切は9月30日)。これを記念し、歴代受賞作家の皆さんからメッセージをいただきました。
第5回は、『記憶屋』で第22回日本ホラー小説大賞の読者賞を受賞した織守きょうやさんです。
>>第4回 初野晴
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「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」は、「広義のミステリ」又は「広義のホラー」を募集するものであると、公式サイトに書いてあります。ミステリかホラーか、書いた本人にもわからないような作品も受け止めることのできる間口の広さがあり、旧賞よりさらにバラエティに富んだエンタテインメント作品が集まるのではないかと期待していますが、新しい賞の名前だけが決まり、詳細がまだ発表されていなかったころ、私を含む前賞の出身作家たちは、「新賞はミステリとホラー両方の要素のあるものが有利になるのかな」と想像していました。
ミステリとホラーの両方が好きでどちらも書く、という作家は少なくありません。新賞創設の発表から間もないころ、前2賞の出身作家たちが集まった席で、某作家が、ホラーミステリなら得意分野だから自分も応募していいかな、と言い出し、それなら私も、いや私も、と数人がそれに同調したことがありました。全員が横溝正史ミステリ大賞と日本ホラー小説大賞の出身者だったので、「プロアマ不問とはいえ、さすがに前賞の出身作家は……(自重してください)」と編集者に言われて断念しましたが、あのとき手を挙げた作家たち(私を含め)は、ちょっと本気だったと思います。それだけ、この新しい賞は魅力的で、受賞すればたくさんの人に読んでもらえるきっかけになると作家たちも考えているということです。
私は日本ホラー小説大賞という賞が大好きで、この賞に応募できたこと、読者賞をいただけたことに誇りを持っていますが、大好きな賞と憧れの賞が1つになってできたこの「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」には、とっておきの「特別感」を覚えています。この賞から世に出てくるであろう新しい才能に、ドキドキしながら期待しています。
きっと、第1回の受賞者のことを、私たちは内心「いいなあ」とか「負けないぞ」と思いながら祝うでしょう。その日が今から楽しみです。
織守きょうや(おりがみ・きょうや)1980年イギリス・ロンドン生まれ。兵庫県在住。2013年、第14回講談社BOX新人賞Powersを受賞した『霊感検定』でデビュー。15年『記憶屋』で第22回日本ホラー小説大賞の読者賞を受賞し、泣けるホラーとして話題となった。現在も弁護士として働く傍ら小説を執筆している。最新刊は『世界の終わりと始まりの不完全な処遇』。
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