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角川文庫キャラ文通信

【キャラホラ通信12月号】『さよなら僕らのスツールハウス』刊行記念 岡崎琢磨インタビュー

角川文庫キャラ文通信

「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズなどで人気を博している作家・岡崎琢磨さんが描く、甘くて苦い青春ミステリ『さよなら僕らのスツールハウス』が文庫化されます。岡崎さんに本作への想いをうかがいました!



――岡崎さんといえば、『珈琲店タレーランの事件簿』を連想される方も多いと思いますが、『さよなら僕らのスツールハウス』は、また少し違ったテイストの物語ですね。「タレーラン」と「スツールハウス」で、味わいが違うとしたらどのような違いでしょうか?

岡崎:『さよなら僕らのスツールハウス』は、作家人生で初めて文芸誌から依頼を受けて執筆した作品でした。「タレーラン」とは違うことをやらなきゃ、と感じていたことをよく憶えています。「タレーラン」含め、僕の作品はメインのキャラクターが話を引っ張っていくものが多いのですが、「スツールハウス」は語り手が章ごとにバトンタッチしていく形式です。キャラクターに頼らない、丁寧な作品づくりを心がけた点が大きな違いだと思います。


――今作には5つのお話が入っていますが、一番お気に入りのお話はどれですか? また、どのような部分ですか?

岡崎:第3話「陰の花」を書いたときに、これはいいものが書けた、と手応えを感じました。普段、僕はプロットをしっかり組んでから書き始めるのですが、「陰の花」に関してはある程度アイデアがまとまった段階で、プロットを作らずいきなり書き始めたのです。途中で筆が止まることもなく、とてもスムーズに書き上げた記憶があります。僕の作品は、どちらかと言えば日常をそれなりに謳歌している登場人物が多いのですが、「陰の花」の主人公はそうではなく、書くにあたって僕自身にある陰気な部分にとことん照準を合わせました。それが功を奏したと、作者としては受け止めています。


――特にお気に入りのキャラクターはいますか。その理由を教えてください。

岡崎:城圭太郎。なかなかのクズなんだけど、でもどこか憎めない。こういうやついるよな、と思います。仲町梨歩は、小説の語り手としてはとても有能ですね。彼女の話なら、まだまだ書けるんじゃないかという気がしています。


――仲町梨歩は、出版社のパブリシティ担当者ですね。本にまつわるミステリ、でしょうか。それとも別の物語なんでしょうか?

パブリシティという観点もおもしろいのですが、彼女はいずれ、編集者になるような気もしています。なので、やはり本にまつわる物語になるのではないでしょうか。



――岡崎さんが「スツールハウス」に住まれるとしたら、どのような青春を送りたいですか?

岡崎:第2話「シャワールームの亡霊」に描かれたような生活が理想です。専業作家は世界一孤独な職業のひとつなので、ひとつ屋根の下で仲間と語らったり、お酒を飲んだり、たまには旅行したりすることにとても憧れがあります。「スツールハウス」に住んで何をするのか? うーん……佐伯一成のように、バンドをやっていたんじゃないでしょうか。バンドをやりたい、でも金がないからシェアハウスに住む、というのが自然な流れのような気がします。


――少し意外でした。小説は書かれないんですか?

岡崎:僕が創作活動を続けるのはどこかに満たされなさがあるからなので、あのような青春時代を過ごしていたら、小説は書いていなかったかもしれませんね。ひとしきり青春を満喫したことに満足して、以後は企業に勤め、結婚し家庭を守る、といった人生もありえたのかな、と思います。


――最後に、読者に一言メッセージをお願いします。

岡崎:『さよなら僕らのスツールハウス』は、作家として新たな一面を示すことのできた、とても優しく味わい深い作品になったと思っています。この作品が一番好き、というお声をよくいただきます。青春時代を振り返り、おおらかな気持ちになっている自分に気づく。本作が、そのきっかけになれば幸いです。

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