角川文庫キャラ文通信
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――真の完結、おめでとうございます! 本編の完結巻は前巻ですが、今回それからさらにあとの彼らが描かれました。どのような経緯でこの物語ができたのでしょうか。
榎田:角川文庫で再刊行するにあたり、シリーズを読み直し、加筆修正していくうちに、自然と続きを書きたい気持ちになりました。ビーンズ文庫で完結した時には、これ以上書くのは蛇足になってしまう気がしていたのですが……ある程度時間が経っていたことが、かえってよかったのかもしれませんね。担当編集さんに続きを一冊書きたいと申し出ましたら、とても喜んでいただけて、私も嬉しかったです。
――久々の「宮廷神官」の面々を書かれるうえで、楽しかった、または困った、というような場面はありましたか?
榎田:今回の物語は、主に新しいキャラクターたちで進んでいき、そこに以前のキャラも深く関わっていく……という感じなのですが、そうすると登場人物がすごく多くなるんです(笑)。私にとっては、どのキャラも活躍させたい思いがあるので、そこを整理整頓していくのが少し大変でした。
――特に思い入れのあるキャラクターは誰でしょう? またその理由も教えてください。
榎田:長く書いたシリーズのキャラクターは、みんな家族や親戚みたいに思えてくるので、選ぶのはなかなか難しいのですが……新作では、成長した天青が感慨深かったですね。それこそ、親戚のおばちゃんみたいな気持ちで「立派になって……」と(笑)。
あとはやはりあの人かなあ。ネタバレになってしまうので、あまり語れませんが、あの人が出てくると物語の空気が変わる感じがあります。誰のことを言っているのか、十二巻を読んだあとに考えてみてくださいね!
――長いシリーズが終了となりましたが、今後書いてみたいお話はありますか?
榎田:ファンタジー、バディもの、バレエを扱った作品など……いくつかあります。どれから手をつけるべきか、色々と考え中です。
――4月には単行本での新刊『武士とジェントルマン』も刊行されますね! ぜひ、読みどころを教えてください。
榎田:現代日本に、武士制度が復活しているという設定のお話です。
そこへ、イギリスからシュッとした紳士がやってきて、その武家に下宿するわけですね。そしていきなり五右衛門風呂を体験しちゃったりする、と(笑)。
金髪碧眼でやや理屈っぽい英国紳士については、私の萌えを詰め込んだキャラです。物語は彼の視点で語られるので、異文化体験のコメディっぽい雰囲気をベースにしつつ、やがて、まだ若い武士である隼人の背負っているものが明らかになっていきます。
今回、ありがたくも、尊敬してやまない萩尾望都先生にカバーイラストをお願いできました! 文庫本より大きな四六判というサイズで、萩尾先生のイラストを堪能していただけますよ!
――最後に、読者に一言メッセージをお願いします。
榎田:いつもご愛読をありがとうございます!
おかげさまで、「宮廷神官物語」を完全書きおろしという形で着地させることができました。成長したキャラクターたち、そして新しく登場したキャラクターたちとその物語を、皆様にお楽しみいただけるか……とても緊張しています。作品は作家のもののようであり、実のところ読者のものです。皆様に読んでいただくまで、物語は完成しません。あなたが表紙を開いてくださった時、白虎の国は本当に命を得るのだと思っています。
麗虎国へおかえりなさい!
どうか、楽しい旅になりますように!
書誌情報
- 宮廷神官物語 十二:https://www.kadokawa.co.jp/product/321910000659/
- 武士とジェントルマン:https://www.kadokawa.co.jp/product/322006000163/