KADOKAWA Group
menu
menu

連載

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』 vol.50

【第210回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。

【第210回】柚月裕子『誓いの証言』

 佐方が膝を正し、大橋に頭を下げた。
「お時間をいただきありがとうございました。これで失礼します」
 佐方が立ち上がると、小坂と清水も慌てた様子で腰をあげた。
「これから、どうするんですか」
 佐方の事件に関する考えは、想像でしかない。もしそれが事実だとしたら、証拠を掴まなければならないだろう。
 佐方は座っている大橋を見つめながら答えた。
「安藤文子さんのところへ行ってみます」
「文ちゃんのところへ――」
 佐方が頷く。
「住所はわかっています。電話で連絡が取れないならば、直接、ご自宅へ伺います」
「俺も行きます」
 大橋は反射的に、そう言っていた。
「俺も、文ちゃんのところへ行きます。車は俺が出します。一度、文ちゃんを家に送っていったことがあるから、家の場所ならなんとなく覚えています」
 どうするのか、と言うように、小坂と清水が佐方を見る。佐方は真意を問うような目で大橋を見つめたままだ。
 大橋は腹を決めて、佐方に頼む。
「お願いです。一緒に行かせてください。俺はアキちゃんを信じている。でも、もし――万が一にもあなたが言っているようなことをアキちゃんがしたのなら、その理由が知りたい。アキちゃんにいったいなにがあったのか知りたいんです。もしそうだとしたら、俺にも責任が――」
 そこから先は言えなかった。言葉にしたら、様々な感情が胸にこみ上げてきて、声が震えてしまいそうだった。

(つづく)

連載一覧ページはこちら

連載小説『誓いの証言』は毎日正午に配信予定です(日曜・祝日除く)。更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/chikainoshogen/

第1回~第160回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。

第1回はこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/n/n266e1b49af2a
第1回~第160回の連載一覧ページはこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/m/m1694828d5084

関連書籍

MAGAZINES

小説 野性時代

最新号
2025年6月号

5月25日 発売

ダ・ヴィンチ

最新号
2025年7月号

6月6日 発売

怪と幽

最新号
Vol.019

4月28日 発売

ランキング

アクセスランキング

新着コンテンツ

TOP