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【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』 vol.38

【第198回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。

【第198回】柚月裕子『誓いの証言』

 部屋の襖を開けると同時に、三人が大橋のほうを振り返った。ひとりはよく知っている男だ。蕃永石事業協同組合の顧問弁護士を務めている清水。あとのふたりははじめて見る顔だった。
 大橋が三人の向かいに腰を下ろすと、清水がふたりを紹介した。
「こちらは東京からお越しの佐方弁護士、そちらは助手の小坂さんです」
「はじめまして、佐方貞人といいます。こっちは事務所の手伝いをしてもらっている小坂千尋です。お忙しいなか、お時間をちょうだいしありがとうございます」
 佐方と名乗った男は、丁寧に挨拶をして名刺を大橋に差し出した。
 大橋は、なんとなく嫌な予感がした。理由はわからない。
 もらった名刺をズボンのポケットに乱暴に突っ込み、恵が持ってきた自分の分の茶を一息で飲み干した。湯飲みを茶たくに戻し、大橋に訊ねる。
「清水さんが言っていた会わせたい人っていうのが、このふたりなんですね。それで、要件はなんですか」
 大橋は佐方たちの来訪の目的を聞いていなかった。話を聞いたとき清水に訊ねたが、清水は答えなかった。自分の口からは言えないことだから、会って、直接本人から聞いてほしい、と言う。よくわからないまま、電話をもらった二日後――今日なら大丈夫だ、と答えた。

(つづく)

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連載小説『誓いの証言』は毎日正午に配信予定です(日曜・祝日除く)。更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/chikainoshogen/

第1回~第160回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。

第1回はこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/n/n266e1b49af2a
第1回~第160回の連載一覧ページはこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/m/m1694828d5084

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