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連載

コロナの時代の読書〜私たちは何を読むべきか vol.4

学校再開が憂鬱でしょうがない高校生に――汐見夏衛【コロナの時代の読書】

コロナの時代の読書〜私たちは何を読むべきか

文字と想像力があれば、人はどこにでも行ける。
世界の見え方が変わる一冊、ここにあります。

汐見夏衛さんが選んだ三冊

『ぼくは勉強ができない』

山田詠美/文春文庫
https://bookwalker.jp/defce68238-7f31-4251-92e2-6b91785339fb/



『空色勾玉』


荻原規子/徳間文庫
https://bookwalker.jp/de0be1db92-a5ab-40f2-978e-6e6c34f7ab8f/



『バルタザールの遍歴』


佐藤亜紀/角川文庫
https://bookwalker.jp/ded686edda-d96f-488a-b47c-84db1d9beb41/



 学生時分の私は、とにかく自分を持て余していた。今思い返してみると親子関係も友人関係も勉強も(小さなつまずきはあれど)大きな問題もなく、至極平穏な日々を送っていたはずなのに、自分を取り巻く全てに対してどうしようもなく不満を抱いていた。特別なものなんて何一つ持ち合わせていないくせに、その他大勢に埋もれたくない、退屈な人生なんかごめんだと息巻いていた。個性を潰し生徒を均質化しようとする学校が憂鬱で仕方がなかった。もし私が今学生だったとしたら、不謹慎ながらコロナによる休校を突然降ってきた恵みの雨として両手を上げて喜んでいたと思う。

 そんな私にとって『ぼくは勉強ができない』との出会いは、重苦しいもやを一気に吹き払う突風のようだった。少し生意気で斜に構えた、でもとびきり魅力的な「ぼく」が、私の抱えるいらいらや鬱屈を代弁してくれた。文字通り擦りきれるほど何度も読み返し、本当にカバーの袖がちぎれてしまったほどだ。彼のように老成した高校生なんて夢物語だと今は思うが、あの頃の私にはその夢が必要だったのだ。そして、なんだか必死こいてひねくれてるのも馬鹿らしいな、なんて自分を客観視できるようにもなった。

 学校再開が憂鬱で仕方ない高校生にぜひ読んでほしい一冊だ。

 そして小・中学生には、神話時代の日本を舞台にしたファンタジー『空色まがたま』をおすすめしたい。ストーリーの壮大さとキャラクターの魅力に当時十二歳の私は夢中になり、むさぼるように繰り返し読んだ。

 成人の方には『バルタザールの遍歴』を。この本を読んだ時、映像にも漫画にもできない、文章でしか表現しえない主題と描写に感激して、小説の可能性に胸を震わせた。その頃慣れない仕事に追われて読書から遠ざかっていたが、を全て忘れて久々に本の世界にのめり込んだ。あの心地よいこうこつ感は格別だった。まさに読書の醍醐味だと思う。

汐見夏衛(小説家)



みなさんもぜひ「コロナの時代に読んで欲しい本」を投稿してください。
ご応募はこちらから→https://kakuyomu.jp/special/entry/readingguide_2020


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