限りある世界で何を「捨てる」のか――恩田陸【コロナの時代の読書】
コロナの時代の読書〜私たちは何を読むべきか
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文字と想像力があれば、人はどこにでも行ける。
世界の見え方が変わる一冊、ここにあります。
恩田陸さんの選んだ一冊
『指輪物語』
J・R・R・トールキン・著 瀬田貞二+田中明子・訳/評論社文庫
この物語が特異なのは、勇者が何かを「得る」のではなく「捨てる」話だからだと思う。長い苦難の道中で、いかに肥大化する欲望を手放すのが難しいかという真実が繰り返し語られる。だけど、もはや我々は、なんとかしてこの限りある世界と折り合いをつけていかなければならない。何をあきらめ、何を「捨て」なきゃならないのか? 果たしてそれを幸福な選択にできるのか? 物語の最後で、役目を果たした勇者の表情を安息と見るか虚無と見るかは、この先の選択と考え方にかかってくるんだろうな、きっと。
恩田陸(小説家)
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