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レビュー

マギー(ジョビジョバ)さんが語る! 心霊探偵・濱地健三郎の魅力

東京・南新宿に事務所を構える心霊探偵・濱地が助手のユリエとさまざまな怪奇現象の謎を解き明かす、有栖川有栖さんの「濱地健三郎シリーズ」。作家、脚本家、書評家など、物語世界に関わり活躍される方々は、どのように読み解くのか。最新作『濱地健三郎の呪える事件簿』の魅力について語っていただきました。
(本記事は「怪と幽vol.012」に掲載された内容を転載したものです。)

マギー(ジョビジョバ)さんが語る! 心霊探偵・濱地健三郎の魅力

「とんでもないことになってきた」
 そんな書き出しにいきなり胸ぐらを摑まれる。一体どうした? なにが起きた? はやる気持ちで次のページを捲ると、それが2年前の4月、新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言のことだとわかる。「それ、俺も知ってるとんでもないやつだ!」
 本書に収録された6篇はどれも、俺も知ってる〝とんでもないこと〟になった最初の頃、所謂、第一波に相当する数ヶ月が背景になっている。2022年現在ではすっかり日常化してしまった様々な事象にまだ困惑していた、あの当時のリアル。〝リモート飲み〟〝ステイホーム〟〝三密〟……いずれは風化しそうな言葉とともに、後で振り返ったら忘れていそうな、当時の我々の微細な心の揺れが本書のそこかしこから匂い立つ。そんな俺も知ってるあの頃と地続きの世界で次々と起きる〝怪異〟。
 心霊探偵のもとに舞い込む事件は、文中の言葉を借りれば「ワンワードで言ってしまうならファンタジー」の類のものだが、〝俺も知ってる近過去〟設定によって、決してワンワードでは済ませられないリアリティがもたらされている。こんなことだってあるかもしれない。目に見えない〝何か〟だっているかもしれない。それは、2年前には「とんでもない」と思っていた目に見えないウィルスによる非日常が、もはや日常化している現在とも通じるものがある。そう、とんでもないことは、起きるのだ。
 申し遅れたが、私、有栖川先生の『火村英生の推理』を斎藤工くん主演でドラマ化した際に脚本を担当させていただいた。なので、どうしたって「さて、これを映像化するとしたら」という目線で読んでしまう。年齢不詳でオールバックとスーツの似合う主人公・濱地健三郎は私の中では「絶対、彼がぴったり!」の俳優さんの顔が浮かんでいるのだが、それは読者ひとりひとりの妄想キャスティングに任せるとして、本書の魅力のひとつは連作短編スタイルの歯切れのよさ、テンポ感だろう。だから映像化する際も、変に物語をカサ増ししたり登場人物を増やしたりせずに、30~40分の一話完結もの、『世にも奇妙な物語』のようなオムニバス形式が良いのではないだろうか。円谷プロのモノクロ時代の名作『怪奇大作戦』みたいな渋いイメージでどうだろう。夜中に配信で一気見したくなるようなドラマになりそうじゃないか。
 私の準備は出来ている。実現したら……またとんでもないことになるぞ。


読み切り形式で複数の事件が収録されていて、ここから読んでも楽しめる!
『濱地健三郎の呪える事件簿』の情報はこちらから。

Amazonページはこちら

楽天ブックスはこちら
詳細ページ:https://www.kadokawa.co.jp/product/322104000334/

書籍紹介



濱地健三郎の呪える事件簿
著者 有栖川 有栖
発売日:2022年09月30日

江神二郎、火村英生に続く、異才の探偵。大人気心霊探偵シリーズ最新刊!
探偵・濱地健三郎には鋭い推理力だけでなく、幽霊を視る能力がある。彼の事務所には、奇妙な現象に悩む依頼人のみならず、警視庁捜査一課の刑事も秘かに足を運ぶほどだ。リモート飲み会で現れた、他の人には視えない「小さな手」の正体。廃屋で手招きする「頭と手首のない霊」に隠された真実。歴史家志望の美男子を襲った心霊は、古い邸宅のどこに巣食っていたのか。濱地と助手のコンビが、6つの驚くべき謎を解き明かしていく――。


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