呪いと因縁がすべてを繋ぐ本格じわ怖ホラー
『みんなこわい話が大すき』レビュー
第8回カクヨムWeb小説コンテスト〈ホラー部門〉の受賞作が2冊同時刊行!
大注目ジャンルで生まれた全く新しいホラー作品を、『近畿地方のある場所について』著者、背筋氏の書評とともにご紹介します。
辛口なストーリーに仕込まれた隠し味で、みんなこわい話が大すきに
書評:背筋(作家)
『みんなこわい話が大すき』を読み終えたとき、頭に浮かんだのは、「最高に美味しい辛口カレー」だった。隠し味はきっと、ヨーグルトかはちみつ。
本来カレーの持つ「辛い」という感覚は、不快に分類される。だが、私のようにそれを好み、ともすれば病みつきになる人間は多い。ただし、辛いだけのカレーは間口を狭めてしまう。辛くはありながらも、スパイスの奥深さや、隠し味が生み出すコクなどに人は魅了されるのだろう。ホラーもきっと同じだと思う。
タイトルの印象とは裏腹に、この作品の辛さは強い。物語は、小学校でイジメに遭っている少女の独白からはじまる。彼女はいつからか自室の押し入れにいる「秘密の友達」に話しかけることで、傷ついた自分を慰めている。だが、ある日「秘密の友達」にまつわる事件が起こってしまう。このように、読者は次々と変わる語り手の視点を通して、物語の核を見出していく。
物語の核、それは呪いだ。もちろん呪い自体も十分に怖い。だが、それ以上に恐ろしいのは呪いを取り巻く人物だ。あるときは当時者として、あるときは傍観者としてその呪いに関わってしまう人間の心のありようが非常に恐ろしい。呪いの背景には、それを操る人間の抱く恨み、妬み、悲しみが常に垣間見える。それは、呪いそのものよりも重苦しく、救いがない。一方で対照的なのが、呪いに触れてしまった人間の変わりようだ。彼らはある感情に支配され変容してしまう。それは、呪いをかける人間たちの鬱屈した感情とはある意味で対になっている。そのさまが、物語全体に不気味で不穏な味を加える。
このような辛口ともいえる物語をまろやかにし、コクを足している要素がある。それが、主人公たちだ。
「よみご」のシロさん、そしてその助手である
元来、カレー一辺倒のはずの私が、今は、今後著者が作るであろう別の料理すら楽しみにしている。そう思わせてくれる著者は間違いなく、凄腕料理家だ。
作品紹介
みんなこわい話が大すき
著 者:尾八原ジュージ
発売日:2023年12月22日
ほんとうにこわいものは、何?
ひかりの家の押入れにいる、形も声もなんにもない影みたいなやつ、ナイナイ。
唯一の友達であるナイナイをいじめっ子のありさちゃんに会わせた日から、ひかりの生活は一変した。
ありさちゃんはひかりの親友のように振る舞い、クラスメイトは次々と接近してきて、いつもはつらく当たる母親さえも、甘々な態度をとるように。絶対に何かがおかしい。疑心暗鬼になったひかりはありさちゃんと距離を置こうとするが、状況は悪化するばかり。
数年後、〈よみご〉と呼ばれる霊能者・志朗貞明のもとに、幼い子供と心中した姉の死の真相を探ってほしいという依頼が舞い込んでいた。
無関係に思える二つの異変は、強大な呪いと複雑に絡み合い……。
第8回カクヨムWeb小説コンテスト〈ホラー部門〉大賞受賞作。
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