【カドブンレビュー】
ド・ゴール大統領を狙う暗殺者とフランス警察の攻防をスリリングに描いた処女作『ジャッカルの日』を始め、現実感溢れる傑作サスペンスを次々に生み出してきた巨匠、フレデリック・フォーサイス。
そんな彼の自伝が『アウトサイダー』だ。
フォーサイスは綿密な取材を信条とする小説家というだけではない。彼の人生そのものが冒険の連続なのだ!
まずはパイロットになるという幼い頃からの夢を叶えるべく空軍に入隊。10代にして戦闘機を操縦することに!
続いて世界を見て回りたいという夢を追い、ロイター通信に入社。20代前半でド・ゴール大統領番のひとりに加えられる。この時の経験が後々、『ジャッカルの日』の執筆につながっていく。
その後、フリーのジャーナリストとしてアフリカ・ナイジェリアの内戦、ビアフラ戦争を現地取材。何度も死線を潜り抜ける。
しかし、意外にも文章はあっさりとした印象だ。恐らく客観的な事実と確かな記憶だけを書き、小説のようにハラハラドキドキの展開に持っていくことを自らに禁じているのではないか。
だからこそ、時々現れる描写的な文章のインパクトは大きい。映像がブワっと立ち上がって来る。それは、彼の心に強く刻まれ、何度も思い返した光景を文字にしたからだろう。
中でも印象的だったのは、ビアフラ戦争中に出会った、ひとりの死にゆく少女の姿。
木の枝のように痩せた体。空気だけでふくらんだおなか。食べ物をくださいという仕草、差し出された桃色の小さな手のひら……このあとフォーサイスは、彼女の取った行動の中に、人間としての“威厳”を見ることになる。
恐ろしいほどのバイタリティで世界中を飛び回った小説家が目に焼き付けて来た数々のリアルをぜひ追体験して欲しい。
>>フレデリック・フォーサイス『アウトサイダー』
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